2.映画   The Sting   ザ・スティング

 私は特に映画好きというわけではありませんが、「名画」と呼ばれる古い映画は時々見ます。それらの映画の中で、最も好きなのがこのザ・スティングです(定冠詞を省くとポリスのベーシストになってしまうので注意)。好きというだけではなく、「最も素晴らしい」という評価をも惜しまず、これを上回る映画が今後出現するとは思えない…という程の作品です。

 舞台は1936年シカゴ。チンピラだけど腕は良いイカサマ師のフッカー(ロバート・レッドフォード)は、仲間をマフィアに殺される。彼は仇を討つべく天才ゴンドーフ(ポール・ニューマン)に協力を求め、そして一世一代の大勝負が始まる・・・

 この映画の場合、巧妙に仕掛けられた罠が重要なポイント。「罠に掛けられているのは誰なのか?」をネタバレするのは、とても重い罪になります。とにかく素晴らしい構成と脚本を堪能してください。私はいつか、こんな素晴らしいお話が書けると良いなと思ってやみません。
 さて、俳優に目を向けましょう。主演の二人が「好きなタイプ」でないとしても、この映画を見るとその格好よさにほれ込むこと請け合いです。
 もちろん二人の掛け合いは絶妙。私が特に好きなのは、フッカーがゴンドーフに協力を求めるシーン。やんちゃ坊主くせに、泣きそうな顔で言葉少なに訴えるレッドフォードの表情には、ドキっとさせられます。
 それを余裕の表情で受け止めるニューマンの格好良さ!その後「本気モード」に入るや、果てしなくダンディになってゆく彼になら騙されても良いとさえ思ってしまいます。イカサマ師仲間の面々や、「いかにも」という感じの刑事にマフィアなど、その他の配役にも一部の隙もありません。
 特筆すべきはゴンドーフの愛人役のアイリーン・ブレナン。存在感十分で「いい女っていうのはこういうものだ!」と唸らされます。

 この作品はオスカーを7部門で受賞。私は特に美術監督・装置賞、衣装デザイン賞、編曲賞を強調したいですね。
 世界恐慌後のアメリカの雰囲気が良く出ている「本物志向」。当時のシカゴの町も見事だし、そこをとんでもない勢いで駆け抜けるレッドフォードのフォームも凄い。衣装は二人のイカサマ師が「変身」してゆく様を見事に演出しています。特にフッカーが最初に買う「派手なスーツ」と、ゴンドーフの「ブラック・タイの上着は脱ぐけど帽子は被る」スタイルは絶品。
 音楽はスコット・ジョプリンのラグタイムが全編に渡って使われています。ラグタイムというのは、1920年代に生まれたジャズの前身の一つ。即興性はなく、自動演奏ピアノで爆発的に全米に広まりました。軽快なリズムと晴れやかなメロディは、この映画の雰囲気にぴったりです。特に「ジ・エンターテイナー」はこの作品によってジョプリンの作品で最も有名な曲になりました。私はエンディング・テーマも大好きです。特に冒頭にカウントが入るのが良いです。
 細かい所ですが、前述したシーンの音楽。フッカーがゴンドーフに協力を求め、「よしやろう!」となった時にメリーゴーランドが動き出し、流れるのが「マイ・フェア・レディ」の「運が良けりゃ〜♪」(イライザの父親が歌う曲)に聞こえるのです。多分そうだと思うのですが、とにかく絶妙です。

 もちろん脚本と演出も抜群。演出が特に光るのは台詞の少ない列車でのポーカー・シーン。そして、大きなイカサマがテーマのこの映画において、細かい所で「フェア」である所も秀逸です。一度見た後で見直すと、「ああ、このシーンのアレはそう言う意味か!」と気づかされ、実に爽快。

 この映画の面白さは語りつくせませんが、まだ見ていない人のためにあまり多くを語ることも出来ません。そして、これだけは守ってください。この映画は絶対に最初から最後まで、きちんと見ましょう。チャプターの途中から見てはいけません。そして、未見の人に内容をばらしてもいけません。一度見たら、見た人同士で大盛り上がりしましょう。

 最後に、この映画の監督ジョージ・ロイ・ヒルについて。やはりレッドフォーフド,ニューマンとのゴールデン・トリオで名作「明日に向かって撃て」(原題「ブッチ・キャシティ&サンダース・ザ・キッド」)を撮った監督です。ローレンス・オリヴィエを起用した「リトル・ロマンス」も有名ですね。2001年の12月に81歳で亡くなりました。音楽にしろ映画にしろ、やや古い物が好きな傾向にある私としては、寂しいことです。



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