The Three Musketeers  三銃士

  1966年 BBC製作ドラマ The Three Musketeers


  エピソードガイド

Part One : Enemies / 第一話「敵」

 派手なクラシック音楽とともに幕を開けるオープニングには、いずれ慣れるとして、まずはガスコーニュのダルタニアン家。牛や鶏がウロウロする中、窓際に登場するは、ジェレミー・ブレット演じるダルタニアン。けっこう貫禄あり。
 剣と金、トレヴィユ宛ての手紙を授け、息子を送り出すダルタニアン父。レスターよりもかなり貴族的なお父さん。別れを惜しむお母さんは、おばあちゃんに見えなくもない。
 旅立つ息子に与える馬が届き、一同勇んで外に出るが、そこには「ポニーか?!」と言わんばかりの小さな馬が!「まさか、これじゃないよね?!」と思わず言ってしまう息子。「何か?」と、父。「これじゃ歩いた方がマシだよ。」「歩く?紳士が歩いてどうする。」「…」情けない顔であきらめる演技が素晴しい。
 そして生まれ育ったお別れとなるのだが…ダルタニアン、その金髪の娘は何者だい?下人?親戚?

 いよいよ銃士になるべく、パリへ旅立つダルタニアン。マントなし。帽子につばなし。つば無しの帽子はさすがに不自然過ぎるが、そこは「田舎者」演出なのだろう。
 場面はマンの町…のはずだが、ダルタニアンの実家とさほど変わらない田舎に見える。ロシュフォール登場。金髪というのは、意表をつく。そこにポニーにまたがって、長身のダルタニアン登場。これはロシュフォールでなくても笑う。パリまで無事に辿り着くのか?とにかく、笑われて激怒するダルタニアン。顔に飛んでくるハエを払う仕草にも怒りがみなぎっている。
 ロシュフォールは一旦ダルタニアンの一喝に腰を落とすが、虚勢を張るように室内へ。ダルタニアンはロシュフォールの部下やら、所属のよくわからない連中やらを相手に一人で奮闘。剣さばきは少々振り回し過ぎという感じがするが、必要に応じて桶をぶん投げるのは中々良い。しかし、多勢に無勢。すぐに地面に伸びてしまう。
 そこへ、馬車でミレディ登場。ちょっと若さに欠け、険の強い顔。ここでは馬車を降り、宿屋の中でロシュフォールと会見。しゃべり方にも妖艶さ,愛らしさが足りないが、凄味はある。二人はリシュリューの指示や、これからの行動について打ち合わせるのだが、そこへ巨大包帯を頭に巻いたダルタニアン乱入。「丸腰だぞ」とロシュフォールに言われて、「俺の剣はどこだー?!」と、出て言ってしまうのは笑わそうとしているのだろうか?(私は笑った)
 ミレディ(ロシュフォールは「マイ・レディ」と発音している)は馬車に乗って出発。ダルタニアンがミレディの顔をちゃんと見たかどうか、少々疑問。ここでミレディに強い印象を受ける事が、物語全体において重要なはずだが。
 続いてロシュフォールも騎馬で出立しようとするが、屋根の上のダルタニアンに引き留められる。剣が屋根にあるはずもないのだが、おバカな行動としては中々良い。屋根から落ちてきたダルタニアン、「待て、卑怯者め!」と意気込むが、逃げられてしまう。そして自分がお金も、手紙も失ったことを宿屋の主人に教えられ、意気消沈するダルタニアンだった。

 場面はパリ。トレヴィユの屋敷にやってくると、銃士たちが剣の鍛錬に励んでいる。その中にアラミスとポルトスの姿もある。ダルタニアンに「トレヴィユ殿に面会するには?」と尋ねられるのが、アラミスだった。アトスは杯を傾けながら、憂鬱な様子で、若者がやって来るのを眺めている。
 トレヴィユ登場。ダルタニアン、不自然なカメラワークでマンの町で会った「傷のある男」について説明。トレヴィユが「連れ」について確認すると、「綺麗な女性でした」と答える。やはり、見ていたという設定にはなっている。
 少々不自然な流れではあるが、いきなり呼び出されたアラミスとポルトス、枢機卿の護衛士との乱闘を咎められ、ダルタニアンはそれをぼうぜんと眺めている。乱闘の実情につい説明するポルトスは、なかなか貫禄がある。遅れて負傷したアトス登場。勇気ある銃士たちの活躍に納得した隊長は、アトスを気遣いつつ、彼らを放免する。アトスは卒倒しなかった。

 あらためて、トレヴィユはダルタニアンに対し、これからの身のふり方を説明する。「お若いの…」と語り掛けるが、やはり貫禄あるダルタニアンの顔つきに慣れるには時間が掛かりそうだ。
 隊長が紹介状を書いている間、窓から外を見ていたダルタニアン、あの「傷のある」男を発見。窓から飛び出したりはせず、階段を駆け降りて追おうとする。途中、負傷しているアトスとぶつかり、言い争いの末決闘の約束をする。その様子をほかの銃士たちが面白そうに見ている。ポルトスのマントに突っ込んだり、女物のハンカチを拾うなど、三銃士と決闘の約束をするところまで、原作に忠実に進む。
 場面は正午の決闘場所へ。修道院の中庭というよりは、どこかの空地に見える。「銃士と決闘して死ぬなら本望だ」と言うダルタニアンの独白の後、馬に乗った三人の男が、やってくる。いよいよ、決闘…!という時に、いきなりエンディングに突入。30分もののテレビ・ドラマならではの急展開。余韻があるのか無いのか、よくわからない独特のノリがある。

                                                             25th November 2007

 Part Two : The Tree Duels / 第二話「三つの決闘」

 決闘の場所に集結した三銃士。まずポルトスが、「こいが相手か?アトス。俺もこいつと決闘の約束がある。」すると、アラミスも同じくと言う。アトス「お前もか、アラミス?」ここで少しアラミスは決闘に至る経緯を言いたくなさそうなそぶり。アトスは半ば察しているような表情だ。
 ダルタニアンは最初の決闘で死んだら、後二つの決闘が出来ないこと、そしてパリに出てきたばかりなので、介添え人も居ない事を詫びる。この辺りをレスターはとぼけた雰囲気にしたが、ここでは飽くまでもシリアス。
 いよいよ決闘開始。原作ではダルタニアンとアトスの剣が最初に触れ合ったと同時に、枢機卿の護衛士たちが現れるのだが、ここではかなり打ち合ってからの登場となる。しかし、このダルタニアンとアトスの打ち合いは迫力がなく、単に剣を鳴らしているだけ。
 さっそく護衛士と銃士たちでの決闘となるが、ダルタニアンがそこに参入。急に感動的に盛り上がる三銃士。アトスはダルタニアンを「ぼうや Boy」と呼んでいるが…ジェレミー・ブレットは坊やには見えませんよ。
 護衛士との決闘開始。さすがにこの乱闘シーンは、レスターを見てしまうと物足りない。ダルタニアンに加勢されたアトスの表現は原作のとおり登場する。しかし、その様子から言うとやはり加勢してもらって良かったと、思わずには居られない。最後の一人を、ポルトス、アラミスがひっ捕まえ、ダルタニアンが帽子を放り投げると、ポルトスが一言。「いいぞ、田舎小僧!」こうして、三銃士とダルタニアンは、方を組んで乱闘現場から立ち去って行った。

 国王ルイ十三世登場。乱闘のてん末を聴いたらしい。
 「トレヴィユ、ダルタニアンというのは何者だ?」
 「来たばかりの者で、私の友人の息子。ガスコンです。」
 「また、ガスコンが一人か。ははは。」
 なかなか和気藹藹。 やはり枢機卿の護衛士たちをやっつけたのが、嬉しいらしい。国王は上機嫌に銃士たちを呼び出す。
 「やぁ来たな、私の勇気ある銃士たち。」そしてダルタニアンに目をやり、みすぼらしい成りに対し、金貨を授ける。トレヴィユ、三銃士たちが国王に深々と礼をするが、ダルタニアンだけ、後方に気を取られていた。そこに、王妃が登場したのだ。この辺りは、原作にはない演出。
 この王妃、なかなかしっかりした顔立ちで、頭も良さそう。豪華な衣装も素晴しく、カラーだったらなお一層引き立っただろう。せっかくご機嫌伺いに来た王妃だったが、国王はこれから狩りに行こうと意気込んでいた所。すこし機嫌を悪くしたようだ。それでも居並ぶ銃士たちが、枢機卿の護衛士たちをやっつけたことを誇らしげに語る。すると王妃は「なんて頼もしい!」とでも言いたそうな表情。この王妃、ドラマの女性陣たちの中で一番美しいと思われる。

 場面は、リシュリュー枢機卿の執務室。ここでリシュリュー初登場。これが肖像画に良く似たリシュリューである。地図を見ながらラ・ロシェル攻略の作戦を練っているが…この地図は少し古風過ぎるだろう。
 同席しているロシュフォールに、イギリスの宰相バッキンガム公爵の動向を確認すると、まだパリには現れておらず、ウィンター夫人(ミレディ)からの報告も来ていないとの回答。リシュリューは、公爵が王妃に会いに必ず来ると思っているし、そうは行くかと闘志を燃やしている。
 公爵には必ずパリに味方がいるはずで、それが王妃の侍女ボナシュー夫人(コンスタンス)であることも分かっているリシュリューとロシュフォール。リシュリューはボナシュー夫人から目を離すなと、指示。このドラマでのリシュリューは、かなり細かいところまで自ら指示を出すようだ。
 このドラマで面白いのは、リシュリューは確かに悪役として登場するのだが、仕事熱心で考え深く、怜悧な政治家としての雰囲気がよく出ているところだ。

 ダルタニアンは国王からもらった金で、衣装を新調。良くに合うと褒めるアトスに、「でも銃士の制服じゃないよ」と言い返す。するとアトスは、「辛抱だよ、辛抱。」
 ここはアトスの家だったらしい。突然手を叩き、妙な仕草を見せるアトス。すると、奥で従者(もちろんグリモー)が、酒の用意を始める。ダルタニアンが不思議に思って、従者は耳が悪いのかと尋ねると、「言葉を使わなくても、合図で何でも出来るように仕込んであるのさ。」と答えるアトス。
 「間違えたら?」
 「べつに。」
 グリモーは地味な感じの、中年…に見える。暗そう。

 「ダルタニアン、アラミスやポルトスのところもそうだが、ここも第二の家だと思ってくれよ。」アトスがそう言うと、アラミスがやってくる。明るい髪色で、キョロキョロしている若い男の子を連れている。
 「こいつの名前はプランシェ。ダルタニアンの従者にもってこいだ。」原作でのポルトスの役割が、なぜかアラミスになっている。
 ダルタニアン、またもや妙に大げさに感情のこもった声で、「プランシェ、ぼくの従者になってくれるかい?」…しかしアトスは雰囲気など御構いなしに、ダルタニアンの荷物をどんどんプランシェに持たせて、仕事にとりかからせた。
 それにしても、若くて可愛いプランシェというのは、意外だった。レスターのロイ・キネアを見てしまうと、なおさら。
 改めて座り、酒を酌み交わすアトス,アラミス,ダルタニアン。ここで例の「女物のハンカチの持ち主」 ― つまり、アラミスの恋人の話題になる。しかし、アラミスは「銃士なのは一時的、いずれ教会に身を投じるのだ」と、はぐらかすが表情はけっこう真剣。
 そこに、ポルトス登場。「グリモー!飯だ!」場は陽気に展開するかと思ったが、アトスはベッドに横になってワインをラッパ飲み。そして、首から提げた十字架を意味あり気に手に持つアラミスだった。

 場面は、王妃の寝室。バッキンガム公爵の身を案じる王妃。枢機卿がかぎつけたら、ただでは済まないと嘆いている。どうすれば良いのかと悩む王妃。ボナシュー夫人ことコンスタンス登場。彼女はすこし鼻が低いが…可愛いと言えなくも無い。
 シェヴルーズ夫人を通じで、バッキンガム公爵に警告しようと提案するコンスタンス。王妃がその使者をどうするのかと尋ねると、コンスタンスは「夫のボナシューに頼みましょう」と答えるのだった。

 そのボナシュー氏登場。新しい下宿人のダルタニアンを、それなりの役職の人と勘違いしている。なぜか「従者の寝床はあっちで良いでしょう。」という所は、レスターと共通している。
 このボナシュー、恰幅も来ている服も良く、裕福な商人風。
 原作とは違って、ちゃんと家賃を払うダルタニアン。そしてボナシューと一杯やりに部屋を出て行く。「妻は王妃さまに仕え、週に一日だけ戻ってくる」と説明するボナシュー。そして、この夫婦の微妙な関係が説明される。「奥さんを愛していないのですか?」と、素朴に尋ねるダルタニアン。「王妃様の縁者である、ラ・ポルトさんの口利きで結婚したわけですからねぇ…」と、微妙な返事のボナシュー。
 やがてボナシューは自分の店の仕事があると言って、ダルタニアンを置いて出かけて行った。

 翌朝、プランシェの他愛のない言葉から、夕ベの自分とボナシューの会話が聞かれていた事を知って、激怒するダルタニアン。プランシェは焦って、ダルタニアンの部屋の床には、下の部屋がまる見えの穴があると言う。ともあれ、「盗み聞きは許さないからな!」と、ダルタニアンはおかんむりだ。それにしても、このプランシェは可愛い…。
 夜、コンスタンスが家に戻ってくる。それを床の穴からみつけたプランシェ、「マスター、女の人ですよ!」
 一緒になって興味津津に覗き込むダルタニアン。「なんて、美しい…!」
 「ね、マスター。僕が良い従者って分かったでしょう?」
 そこへ、コンスタンスを連行しようとする護衛士たちが登場。同行を拒否するコンスタンス。それを階上から見ていたダルタニアン、プランシェをアトスの所に走らせる。
 一方、階下では護衛士たちが無理やりコンスタンスを連れて行こうと試みていた。ところが、コンスタンスの抵抗がすごい。凄まじい絶叫と大暴れ。見ているこっちが引く。助けなくても大丈夫なんじゃないかなぁ…
 助けなきゃお話にならないので、剣を抜いて階下にやってくるダルタニアン。瞬く間に護衛士たちを追い出し、コンスタンスを助け起こす。「あなたは?」「ダルタニアン。」…盛り上がったところで、エンディング。
                                                        14th January 2008
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