Sherlock Holmes シャーロック・ホームズ

  
Comical Mytery Tour  コミカル・ミステリー・ツアー / いしいひさいち

 シャーロック・ホームズもののパロディは数あれど、中でも私が最も好きな作品が、このいしいひさいちの「コミカル・ミステリー・ツアー」です。
 この作品のタイトルは無論、ザ・ビートルズの Magical Mystery Tour のパロディです。

いしいひさいち

 いしいひさいちとは、1951年生まれの漫画家。プロ野球ものの「がんばれタブチくん」や、ホームコメディものの「となりの山田くん」(のちに「ののちゃん」に改名)、政治風刺の「問題外論」など、幅の広い四コマ漫画を大量に描いています(ものによっては四コマではない作品もある)。
 秀逸な似顔絵のデフォルメや、キャラクターの強烈さ、ほのぼのしていたか思うと、強烈に皮肉で、徹底的で、ぶっとび、そして可愛らしい作風など、非常に奥が深い作家だと思います。

 そしてまた、彼は大変なミステリーファン。しかも相当大量に読んでいるタイプのファンです。それが高じたのか、古今東西のミステリー作品を徹底的にパロディ化した漫画作品を発表し、それが今回の主役「コミカル・ミステリー・ツアー」という訳です。中には、オリジナルの作品(作家藤原ひとみ,広岡先生,広岡警部,田淵刑事,安田刑事ものなど)も織り交ぜられています。
 シリーズでもっとも多く取り上げられているのが、シャーロック・ホームズ。しかも原作60作品全てを網羅し、その上更なる笑いを求めて沢山の挿話が描かれています。ホームズファン、必見。でも、怒らないで下さいよ。


 いしいワールドの「シャーロック・ホームズ」

シャーロック・ホームズ
 いつも仕事に失敗している「ヘボ探偵」。手法はきわめていい加減。いつも金に困っている(家賃滞納)。もちろんヤク中。浮気調査には興味がないが、「ヤギとデキている」と言われては、黙っちゃいない。たまに推理が当たっても、ろくな事にはならない。ヴァイオリンが下手。

ドクター・ワトスン
 ホームズより敵の多いマッド・ドクター。主にボケるホームズのツッコミ役。モリアーティ教授亡き後のロンドン暗黒界に君臨したこともある。コカインよりもアヘンだ。いや、へ○インもいける。ホームズとメアリの間で、姑と嫁の間に立たされた夫のような苦労を味わう。

メアリ・モースタン
 威勢の良い依頼人で、ワトスンの妻。ホームズとの壮絶なバトルを繰り広げる。名言が多い。「役立たずのヘボキュウリ!」「街路樹でも食ってな、このカミキリムシ!」「あんなのはベッドでミイラ化しちゃえばいいのよ。」

ハドソン夫人
 払いの悪い下宿人から、家賃を取るために今日も戦う。身売りをしてでも払ってもらう。ワトスンを医者としてまったく信用していない。

マイクロフト・ホームズ
 おおかた事件が解決してから、弟のところにあわてて相談しに来る。


 既刊シリーズ案内

コミカル・ミステリー・ツアー  赤禿連盟 (創元推理文庫 1992年)
 ホームズの不敵な笑い声で幕を開ける。初期の絵も見ることが出来る。全編を通してホームズは金に困り、メアリと凄まじい戦いを展開している。
 ホームズ以外のミステリーでは、オリジナルの「がんばれタブチ先生」の他に、シムノン,クリスティ,クィーン,キング,乱歩,フォーサイスなど。

コミカル・ミステリー・ツアー 第2巻 バチアタリ家の犬 (創元推理文庫 1995年)
 ホームズの原作を全て制覇。特に冒頭で長編3連発。依頼人にも大ボケ多し。私が個人的に大好きなのは「最後の事件」。いっそのこと原作よりこっちの方が良い。
 ホームズ以外では、ミス・イージーこと藤原先生、山村美紗、高村薫、豪腕島田荘司、カレ、西村京太郎「そんなことまで時刻表に?」、デクスター三連発、松本清張など。

コミカル・ミステリー・ツアー3 サイコの挨拶 (創元推理文庫 1998年)
 ホームズは僅かに9作品。でも、かなり濃い。ホームズはしまいには逮捕されてしまった…。
 広岡警部,田淵,安田刑事シリーズはなかなかの読み応え。広岡先生も活躍。セイヤーズは4作品,鈴木光司5作品,「このミス」の類へのツッコミも鋭い。京極夏彦は6作品が餌食に。他にもとにかく大量のミステリー作品がパロディに。
                                                       8th April 2006

コミカル・ミステリー・ツアー4 長〜〜〜いお別れ (創元推理文庫 2006年)
New 10/11
 今回は、ホームズとワトスンの出番なし。寂しいなぁ…と、思ったら意外な作品で登場!どの作品かは、読んでのお楽しみ。たしかに、年代が同じなのだから有り得る取り合わせだ。
 それにしても、いしい氏は一体年間に何冊の推理小説を読んでいるのだろう?かなり最近の作品も網羅。ネタが全て分る読者が居たら凄い。全体的にトンデモない女が多い。ダジャレ落ちも多い(凶器か!)。個人的には、「我が名はレッド」と、「荊の城」がお気に入り。
                                                        11th Octover 2007

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