Cathedral Sound, John Dunstable (Arte Nova / 1995) 演奏者:Rene Clemencic Consort
ダンスタブルの宗教曲のみを集めた、ドイツの録音。殆どが合唱形式です。雰囲気的には静謐で荘厳。眠い…かも?ダンスタブルに特化した貴重なアルバムです。
おお美しきバラよ ―15世紀イギリス世俗歌曲集― Mi verry joy, Songs of 15th Century Englishmen
(ポリドール / 1993) 演奏者:ロンドン中世アンサンブル
いわゆる「世俗の」音楽を集めたアルバム。ダンスタブルの曲も3曲収められています。雰囲気的には宗教曲に近い感じです。日本版が出ている点が、非常にありがたい。
緑の森の木陰で ―森にまつわる世俗音楽集― Under the Greenwood Tree
(Naxos 1995) 演奏者:エスタンピ
12世紀から16世紀にわたる、森に関する世俗音楽を集めたアルバム。時代的なまとまりはありませんが、中々面白い内容です。残念ならが14,15世紀の部分がすっぽり抜けており、ハルデヴィ,ダンスタブルの時代の曲は収められていません。しかし、13世紀ごろの世俗音楽の雰囲気は、ハルデヴィ作品中に登場した音楽のイメージとなっています。
オールド・ホール写本と、ロイ・ヘンリー
「ヨーロッパ音楽の歴史」に、ダンスタブルの名前と共に登場したのが、「オールド・ホール写本 Old Hall Manuscript」です。これは14世紀後半から15世紀初頭に作られたイングランドの宗教曲をまとめたもので、当時の音楽を伝える貴重な資料です。
英国におけるこの手の資料は、ヘンリー八世の時代に大量に廃棄されたという経緯があます。「オールド・ホール写本」の場合は、人知れず密かに保管されていたため、19世紀になって初めて、その存在が知られるようになりました。
「オールド・ホール写本」には、ダンスタブルの作品は一つしか収録されていません。一番多いのは、ライオネル・パワー(Lionel Power)の作品で、彼はダンスタブルより20歳ほど年上の人物です。
音楽史の教科書で、ハルの作品が「オールド・ホール写本」に含まれていると知った当時の私は、ちょっぴり調べてみようかと資料をめくってみました。
ところが、出てきた資料はなんとドイツ語!昔、音楽学論文の言語はドイツ語で統一されていたのです…!(今では英語が主流。)
英語さえアヤシゲな私が、ドイツ語なぞ出来るはずもありません。しかも、目指す人物の名前は―
「はいんりっひ・であ・ふゅんふて Heinrich der Funfte」などと書いてあるではありませんか!
「そんな奴は知らん!」と、私は「オールド・ホール写本」研究を早々に諦めたのでした。