星ぼしの荒野から

ティプトリーは私にとって忘れられない作家の一人である。
ティプトリーという作家の存在に気がついたのは1986年頃、SFマガジンで「たったひとつの冴えたやり方」などの作品が訳されて掲載されていたからだ。名前を覚え、次号予告にあれば楽しみにしたものだった。
ある時手にしたSFマガジンに載っていたのが、ティプトリーの追悼記事。とてもショックでしたね。

この短編集はティプトリーのそれまでの荒々しい作風からセンチメンタルな作風に転換する時期のもので、私が感じた魅力には匹敵しないが、一読する価値はある。
蛇足だが、伊藤典夫が解説で、『われら<夢>を盗みし者』の世界観はスタートレックの世界観に通じるものがある、と述べているが、発表自体が1978年なので、関連があるとすればオリジナルシリーズとアニメ版ぐらいだろう。
そうなると関連がありそうなのは、ヒューマノイドは古代の大いなる種族によって銀河の各地にばらまかれた存在という設定だろうか?

収録作品一覧
邦題原題初出訳者
天国の門Angel Fixイフ 1974年7/8月号浅倉久志
ビーバーの涙Beaver Tearsギャラクシイ 1976年5月号浅倉久志
おお、わが姉妹よ、光満つるその顔よ!Your Faces, O My Sisters! Your Faces Filled of Light!Aurora : Beyond Equality(V・マッキンタイア、S・J・アンダースン編) 1976年浅倉久志
ラセンウジバエ解決法The Screwfly Sokutionアナログ 1976年6月号浅倉久志
時分割の天使Time-Sharing AngelF&SF 1977年10月号浅倉久志
われら<夢>を盗みし者We Who Stole the DreamStellar4(ジュディ=リン・デル・レイ編) 1978年伊藤典夫
スロー・ミュージックSlow MusicInterfaces(U・K・ルグィン、V・キッド編) 1980年伊藤典夫
汚れなき戯れA Source of Innocent MerrimentUniverse10(テリー・カー編) 1980年伊藤典夫
星ぼしの荒野からOut of the Everywhere書き下ろし 1981年伊藤典夫
たおやかな狂える手にWith Delicate Mad Hands書き下ろし 1981年伊藤典夫

書名:星ぼしの荒野から(OUT OF THE EVERYWHERE and Other Extraordinary Visions)
著者:ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(James Tiptree, Jr.)
訳者:伊藤典夫・浅倉久志
解説:伊藤典夫(「もう一羽のよだか」)
カバー:たまいまきこ
発行所:株式会社早川書房
印刷所:株式会社精興社
製本所:株式会社川島製本所
初版発行:1999年3月20日
ISBN4-15-011267-3 C0197
形態:文庫(ハヤカワ文庫SF1267 テ-3-5)
定価:840円+税
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