太陽の簒奪者

2006年11月9日。水星の太陽面通過、つまり水星による日食。
プロの天文家にとっては、あまり意味のないイベントであったが、アマチュア天文家にとっては違う。インターネットで観測精度が評価されるのだ。
高校生の白石亜紀は後輩とともに、この水星の太陽面通過を観測していた。
水星が太陽に入った直後、本来なら見えるはずのない物、水星に塔のような物が見えたのだ。見間違いか、と思ったが後輩も認識する。
彼らだけでなく、世界各地で同じものが観測されたことが判明する。

さらなる観測によって、塔は微小な物体を打ち上げていることが判明し、やがて太陽をとりまくリングができつつあるのが判った。
リングが作られるにつれ、地球の気象への変化が小さなものではないことがわかる。このままでは氷河期に突入してしまう。
このリングはいったい何なのか、生物か、はたまた人工物か人工物だとすれば。いったい誰が、何のために作るのか……。そして、人類が文明レベルを維持するためにはリングを破壊しなければならないのだ……。亜紀はリングの調査・破壊を行なう宇宙船へ志願し乗り込む。

ハード版「ふわふわの泉」です。それは違うぞ>俺。
「宇宙のランデブー」で「幼年期の終わり」です。それはもっと違うぞ>俺。
これは、半分冗談として、非常によくできたファーストコンタクトSFです。
世の中にはファーストコンタクト物は数多いけれど、本書のようなエイリアンは数少ないと思います。キリスト教文化圏だと、こういう小説は人間の知性を否定しかねない、ということで書きにくいのかもなぁ、と思いました。

書名:太陽の簒奪者
著者:野尻抱介(あとがき)
カバーイラスト:撫荒武吉
カバーディレクション&デザイン:岩郷重力
発行所:早川書房
印刷所:株式会社享有堂印刷所
製本所:大口製本印刷株式会社
初版発行:2002年4月30日
ISBN4-15-208411-1 C0093
形態:四六版変形並製(124602 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
定価:1500円+税