教 育
●case1〜暴走族を抜け出たB子
 (著書「がんばってね、先生」より)


■何歳まで暴走族するの?
■人のために役立つ事は素晴らしいこと
■青春時代はいくらでも伸びるんだよ
「うちの娘は中学二年生ですが、オートバイを無免許で乗り回し、近ごろでは暴走族に加わって家出をくりかえしているんです。
どんなに親が説教しても、先生に頼んでも効き目がないのです。
それで主人が嘉陽さんに頼んでみなさいと言うもんですから、すがる思いで電話をしました。
いま、娘が家に着替えを取りに戻っているんです、何とかなりませんか」


と、夜の八時すぎに事務所に相談が飛び込んできた。電話の様子から急を要していることが分かったので、すぐに伺う約束をした。

教えられた場所にいくと、すぐそれと分かった。住宅の構えはしっかりしていて、一目で経済的には恵まれていることがよく分かる。玄関のベルをおすと、待ちわびていた様子で、電話の声の主らしいご婦人が迎えた。

「早速ですが,嘉陽さん。実は、私たち夫婦の間には子どもが出来ないんです。それで、主人の好意もあって私は、よその子どもを育てる里親をしています。
何名も小さいころから引き取り、かわいがって育ててきました。立派に成人してすでに嫁いだ子もいます。これまではみんないい子に育ってきたのに、このB子だけは全く手に負えないのです。何とかなりませんかねえ。」


と頭を深々と下げて頼んでいる。

「それでB子さんはいつ頃から家出をしたり、
オートバイを乗り回すようになったんですか」


「中学二年生になってからです。
それまでは元気もよく、みんなからも好かれていたんですよ。
勉強も人並み以上でした。来年は高校受験もあるというのに・・・」


「それでB子さんは」

「お風呂に入っていましたが、終わったようですから呼んできます」

母親は急いで呼びに行った。

この母親は、地域でも世話好きでよく困っている人達のためにも、手助けをしていることで評判が高い。
特に子どもの教育には熱心でPTAの役員なども積極的に引き受けて頑張っている。家庭における”しつけ”もきちんとしていて、そのために子ども達は礼儀正しく、素直に育ってきた。

B子も親の目からは素直にすくすく成長してきたように見えていた。ところが、前触れもなく夜遊びするようになり、それを注意すると反抗的になる。
それで一段と厳しい態度で当たると、外泊をしたりする。そのようなことを繰り返しているうちに家出をしてしまった。
あとは、無免許で友達のオートバイを借りて乗りまわすようになり、暴走族にも加わるようになったのである。
親にしてみれば、どんなに厳しく”しつけ”ても、それがかえって子どもが親から離れていく結果になっていることを考えたら、どうするという智恵もなくなり、後はもう腫れ物にでも触るように注意することもしなくなった。
それで私に相談をしたという事であった。


間もなく身長が160センチもあろうかと思われるショートカットの女の子がでてきた。
母親はB子についての経過の話を打ち切って、お茶でも沸かしますといってすぐに出て行った。

「嘉陽のおじさん、今晩は」

と、B子は正座をして挨拶した。

「今晩は。なんでおじさんのことを知っているのか。」

「いろいろあるよ。ポスターで見たでしょう。
テレビのニュースで見たでしょう。相談事務所の前でも見たよ」


意外に表情も明るく、快活な感じである。悪びれる様子もなく、よく話してくる。

「今日はね、実はお母さんに頼まれてきたんだが・・・。」

「わかっているよ。家出しないで、ちゃんと学校にいくようにしてくれ、
というんでしょう。いつも母ちゃんには心配かけているんだよね。」


意外に神妙な顔つきである。

「お母さんの話によると、B子さんはこれまで、とっても素直で明るく、
いい子で学校も休まずに頑張っていたというのに、どうして学校に行かなくなったの。」


「おじさんさ、いまの学校、ぜんぜん面白くないんだよ。
髪がちょっと伸びたら、すぐに注意されるし、制服にもいちいちうるさいことを言うし、先生は言うことを聞かなかったらすぐぶん殴るし、『えこひいき」はするし、生徒もごまする奴がいるし、「でぃきやーふーなー(優等生のふり)』する奴もいるし、どう考えても今の学校は面白くない。
行く気がしないんだ。
友達と遊んでいる方が楽しいもんね。」


「そうか、それで学校が面白くないから、友だちとオートバイに乗って遊んでいたのか。
ウン、おじさんにはその気持ちがよくわかるな。
実はおじさんもオートバイが大好きなんだ。
いまの共産党の仕事をする前までは中部工業高校の自動車科の先生をしていてね。
よくオートバイを乗り回したり、いじったりしていたんだよ。
楽しかったなあ。
だから、今日はB子さんに学校に行くようにお説教しにきたんじゃないよ。」


「フーン、じゃ、なんの用事できたの。」

■何歳まで暴走族するの?

「実は、おじさんはB子さんがどうしても学校に行きたくないのならそれでもいいと思うんだ。
いま大切なことは、これからのB子さんの将来のことについて、どうするのか、はっきりさせることなんだ。だから、それを一緒になって考えてみたいと思ってきたんだよ。」

「あたし、将来のことなんか、考えたことないよ。」

「じゃ、おじさんが聞くけどさ、オートバイを乗り回すのは楽しいけど、いつまで、あと何年の間、続ける予定になっているのか、考えているのかな。」

 一瞬、彼女の顔が当惑した表情になった。
不意打ちをくらったという風である。

「まさかいつまでも続けるつもりではないんだろう。
年寄りになるまでとかさ。その計画を教えてくれないかと思ってね。」


「いつまで乗るのか考えたことなかったけどさ、いつまでもという訳にはいかんよね。」

 しばらく考えているようである。
すると、首をたてに振って、決心でもしたかのように話してきた。

「おじさん、考えたけどさ、大人になったら結婚もするし、オートバイ乗り回すのはみんなが高校を卒業するまでにするよ。」

「そうか、分かった、それはいい考えだ。
それじゃ、みんなが高校に行っている間は、一日中オートバイを乗って走り回っているのか。」

「そんなこと、しないよ。だから昼間はアルバイトでもしたいな。

「アルバイトか、それも悪くないね。
で、アルバイト代は幾らぐらいほしい?」


「そうねー、いつまでも親に迷惑かけちゃいられないし、ガソリン代も結構かかるし、最低、12万ぐらいは欲しいなあ。
その仕事、おじさん、紹介してくれないかなあ。」

「おじさんは、無料相談でいろいろな仕事も紹介しているから、B子ちゃんのも探してあげられると思うよ。
しかし、中学校も卒業していないから、朝から晩まで一生けんめい働いて、せいぜいつきに5万円くらいの仕事しかないだろうな。」


「ほんとに、おじさん。だいぶ安いんだね。じゃ、ちょっと考えないとね。」

「そうなんだよ、いまの世の中は中学校も卒業していないと、仕事が上手でも普通はどこでもまともに相手にしてくれないんだよ。
『学歴社会』というぐらいだからな。
B子さんもいつまでも親のもとにいるわけではないし、大人になって家を出て行くとき、今のままでは、勉強もしていないから、まともな仕事につけるかどうかも分からないし、見通しが立てられるか心配だね。」


「そうかもしれないね。困ったね、どうしよう、おじさん。

「おじさんにいい考えがあるんだ。
いまおじさんは県議会議員だけど、困っている人を助けるために無料相談所をひらいているんだ。それは知っているよね。
そこにはお金がなくて、誰も助けてくれない人達がどんどん相談にくるんだよ。
普通はおじさんと事務所の人達が一緒になって解決しているけどさ、その中にはどうしても裁判をしなければならない人もいるんだ。
すると、弁護士が必要になるが、普通の弁護士はお金がたくさんかかるから頼めないしね。
だから、いまはコザ法律事務所の弁護士に頑張ってもらっているが、しかし、一人では間に合わないんだなあ。
だからもっと正義の味方の弁護士が欲しいんだ。
幸いB子ちゃんは勇気もあるし、将来のやることも決まっていないというし、頑張って無料相談所の弁護士になってくれないかなあ、人助けの為にさ。」


「ちょっと疑問があるけどさ、おじさんは何でただで人助けなんかするの。
ちょっとでもお金を取ればいいのにさ。いまはすべて金の世の中だというのによ。」



■人のために役立つ事は素晴らしいこと
「そうだよね、特に政治家なんか、
裏からいろいろ汚いお金を貰って警察に捕まったりしている人もいるからね。だから、ただで人助けをするのはおかしいと考える人はかなりいるよ。
しかし、おじさんはね、困っている人を助けたり、人のために役立つことが、お金では買えないとっても大切なことで、それが人生では最も素晴らしいことだと思っているんだ。
普通の人もみんな一生けんめい働いて、いろいろな仕事を通して世の中のために役立っているから素晴らしいと思うんだけどね。
そういうなかで、お金がなかったり、どこにも相談できなかったりする人達のために、誰かが専門的に人助けをしないといけないんだ。
それで共産党の議員や事務所の人達がそれをやっているんだ。
だからB子さんも正義の味方、弱い立場の人々の見方として頑張ってもらいたいわけだ。」


「ふーん、そうか、それはすごいとおもうけど、B子にできるかなあ。
だって、いまは学校も行っていないし、それに頭も悪いしさ。」


「そうか、よし、それでは、頭がいいか悪いか手相占いをやってみよう。
B子ちゃんは手相占いを信じるか。」


「当たるかどうかわからないけど、信じるよ。」

「そうか、よかった。おじさんが手相をみるのはね、理由があるんだ。
ネズミが沈没する船からは出港する前に逃げ出したり、象が死ぬときは滝つぼに行くし、地震の前にナマズが騒ぐというのは有名な話だよね、これはすべての動物には運命予知能力というのがあるからなんだよ。
分かりやすく言うと、動物は自分の運命について体で丸ごと受け止めて、それにしたがって行動しているんだよ。
しかし、人間は複雑な状況の中で生活しているので、いろいろのことを予知しているが、気がつかないだけだよ。
それが現れてくるのが手相だと言われているんだ。
だから、それを知って努力すれば、手相はかわるんだ。おじさんの手をちょっと見てごらん。
これは知能線と言ってね、左手は生まれながらその人の努力の結果をあらわしているものなんだよ。
ほら、おじさんの手はね、生まれながらのものである左手の線は短いが、右手はだいぶ伸びていて長いよ。
これはおじさんが生まれてきたときの能力より努力してきたという証拠なんだよ。」


B子はすっかり打ち解けてきて、
見を乗り出して大きなムシメガネを通して私の手を覗き込んでいる。
よほど、手相に興味があるらしい。

「それでは、B子さんの手相を見てみようか。
えーと、ほう、B子さんのものはおじさんと反対だね。
これはうまれながらたいへん頭がよいのに、現在はあまり努力していないというしるしになっているね。だから頑張れば幾らでも伸びる手相をしているよ。」


「おじさん、そうするとB子はもともとは頭がいいんだ。
嬉しいなあ。
しかし、おじさん、いままで、なかなか勉強しても点数は上がらなかったよ。
どうしてかなあ」


「頭がいいわりに試験の成績が悪いというのは、勉強の仕方に問題があったかもしれないから、その方法は後で教えてあげるからね。
今日はもっと大切なことをお話しよう。
まず、B子さんの年代のことを、青春時代といわれているのは知っているかなあ。」


「うん、知っているよ。」

「この青春という字の青というのは若いという意味で、春は文字通り、季節の春という意味だけど、『春』の季節の特徴は何か知っているかい。」

「いろいろな花が咲き、植物が若芽を出してくるということでしょう。」

■青春時代はいくらでも伸びるんだよ


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