瑠璃山電脳室
お地蔵さんは見てござる
8月の法話
地蔵菩薩
8月です。夏です。お盆です。 

 お地蔵さんは見てござる
八月二十四日は地蔵盆として、さまざまな行事が行われます。お地蔵さまの頭
巾や前掛けを新しくしたり、お花やお団子をお供えして、とくに子どもたちが
お参りすることが多いようです。童謡に〃村のはずれのお地蔵さんはいつもニ
コニコ見てござる〃という唄がありますが、お地蔵さまは村はずれのみならず、
橋のたもと、山の登り口、お寺の入口、どこにでもおいでになりますね。
こんなにたくさんのお地蔵さまがおいでになる意味はどこにあるのでしよう。
仏教に〃代授苦〃(だいじゅく)という言葉があります。他人の苦しみを自分
が代わりに授かるという意味です。実はお地蔵さまは、代授苦の仏さま、いつ
でもどこでもだれの苦しみでも代わって引き受けてくださる仏さま、ともに苦
しんで少しでも苦しみを少なくし、やわらげてくださる仏さまなのですね。
ですから、すぐそばにいてくださるのです。
よく見えるところにおいでになるのです。
子どもたちが、楽しく遊んでいる平和な姿が目前にあれば、〃いつもニコニコ
見てござる〃になるわけです。
反対に病気や心の悩みを持つ人のためには「身代わり地蔵」「とげぬき地蔵」
「水子地蔵」という名の示す通り、苦しみを引き受けてくださるのです。東北
の山間部で雪のなかに埋もれて、じいっと立っておられるお地蔵さまを見かけ
たことがありました。まさに何かの、だれかの苦しみを背負って立っていてく
ださるように思えました。多くの人たちにとつて、他の仏さまよりとても身近
に思えるのがお地蔵さまではないでしようか。

今年も8月のお盆がまいりました 私たち日本の祖先が残してくださったゆかしい行事を、どうぞ心をこめておつとめください。 さて私たちは、つながりの深い菩提寺へお参りしたり、わが家のお墓へお参りして、ご先祖や身近に 亡くなった方のご供養をさせていただくわけですが、ときおり〃無縁〃といわれる、もうどなたも ご供養する方のおられないお墓のあることに気づきます。 薬林寺では、六地蔵さまの後ろに三界万霊供養塔があります。 眠るように小さな石の石像とお墓が身を寄せ合っています。 皆さんぜひご供養なさってあげてください。 お花、お水、お線香を差し上げてください。 そこに眠られる方々は、むろんどんな方々か知るよしもありませんが、仏さまになられたことには 違いありません。 どうぞあなたのご先祖さまと同じように、心をこめて無縁となられた仏さまのご供養をなさって いただきたいと存じます。どれほどか、お喜びになることでしよう。 無縁とは申しますが、たまたま短い間のの親族がはっきりしないという程度であって、ほんとうは 私たちと結ばれている有縁の方々なのですね。 私たちが、一人一人自分の歴史をさかのぼってまいりますと、そこはもうだれも彼も親族になって しまいます。 ですから〃無縁〃などというものはなく、ご先祖ならばどなたであれ、私にとって有縁の方なのです。 さて、生きている私たちも「あの人とは縁切りだ」とか「縁がなかったからあきらめようよ」 などといいますが、それは一時の現象であって、仏さまの眼かち見れば、みんなだれも彼も深い縁で つながっているのです。 ご縁を大切にするお盆にしてください。

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