和歌山国宝建築の旅 2001年11月23日-26日

11月23日(金)

3連休の初日とあって早朝から新幹線は通勤列車並みの大混雑。
大阪駅もUSJ方面はもんのすごい混みようであったが、新今宮からの高野山方面南海電車は空いていた。
極楽橋 - 高野山とケーブルを乗り継ぎ、高野山駅からはバスで一気に奥の院まで。ここでまずは腹ごしらえということで、バス停そばのレストラン楊柳に。観光客相手のおざなりなものが出るかと思いきや、まともな料理でちょっとびっくり。

奥の院

奥の院参道
奥の院への参道入り口
バス停から公園墓地を通って奥の院へ歩く。
たいへんな数の墓碑がある。特に企業のものなどはなかなか凝った形をしており、おもしろい。墓石の詳細はこちら
さてゆっくりと墓石群を堪能したあと一の橋案内所に寄ってみると、墓の案内地図が¥100で売っていた。め組の辰五郎の墓もあるらしいことはこれを見て知った。うーん、先に買っていれば。しかし2番石の配置が間違っているようだ。

金剛三昧院

金剛三昧院多宝塔
金剛三昧院多宝塔(国宝)
金剛三昧院多宝塔細部
金剛三昧院多宝塔(国宝)細部
刈萱堂に寄ってから金剛三昧院の多宝塔を見に行く。この塔は多宝塔としてはもっとも古いもののひとつ(1224年)。桧皮葺の屋根と亀腹が優美だ。寺内は拝観自由。他にも校倉造りの経蔵が目を引く。

桜池院

宿坊の精進料理
宿坊の精進料理
今宵の宿は桜池院。高野山内の宿泊施設はすべて宿坊ということだ。宿坊といっても民宿のようなものだが、食事は当然精進料理。ごま豆腐が美味かった。精進とは言うものの「般若湯」といって酒は注文できる。ちなみに今回は酒は頼まなかった。また、給仕は若い坊さんなのも宿坊ならでは。
この宿坊は風呂が売り物らしく、ジャグジー風呂が気持ちいい。風呂とトイレは共同。部屋にはストーブがあったが、廊下やトイレはいかにも寺院らしい底冷えがした。

11月24日(土)

高野山大門

高野山大門
高野山大門(重文)
朝一番で大門を見に行く。門の前は木が茂りそれほど見晴らしはよくないが、木々の間から遠くが見える。かすんでしまってよくわからないが、淡路島まで見えるらしい。

不動堂

金剛峯寺不動堂
金剛峯寺不動堂(国宝)
金剛峯寺不動堂
金剛峯寺不動堂(国宝)
霊宝館の開館時間に合わせて出発したが、周辺の建物の屋根が霜で白く輝き美しいので、先に不動堂を見に行くことにした。
予想通り桧皮葺きの屋根は一面真っ白。1198年に建てられ、平安時代の住宅様式を応用した建物という。建物は木陰にひっそりとたたずみ、あまり目立たない。すぐとなりの大会堂(1848年)のほうが大きく立派なので、みなそちらで記念写真を撮っていた。

霊宝館

霊宝館には宝簡集は本物があったが、あとの書跡・絵画類は模本ばかりであった。ただ、仏像は重文級がうじゃうじゃ。

金剛峯寺

金剛峯寺へ。昔は高野山全山を金剛峯寺と言ったが、明治になって青厳寺(秀吉の建立)を改称したということだ。

再び大伽藍

高野山根本大塔
高野山根本大塔
大伽藍に戻る。根本大塔は大きい。多宝塔の中でも初重が5間ある大きなものを特に大塔といい、空海が考案した形式という。現在の大塔は1937年再建のもの。

徳川家霊台

徳川家霊台
徳川家霊台(重文)
金輪塔の修理風景
金輪塔の修理風景
次に徳川家霊台に向かう。大伽藍からの近道は山の中の小道だ。霊台は3台将軍家光が建てた家康・秀忠の廟で、ミニ日光と言った趣。写真は家康廟。
徳川霊台からほど近い金輪塔(これも多宝塔形式)は水煙を抜く作業をしていた。クレーンで釣られたワゴンの中に人が入って手作業で抜き取っていた。

昼食

花菱の花御堂弁当
花菱の花御堂弁当
千手院橋バス停そばの「高野山料理」花菱で昼食。花御堂のセット(\2,500)を食べた。味もよく、内装もおしゃれ。しかし、何が「高野山料理」なんだろう?ごま豆腐はあったけど。ちなみに、ごま豆腐は昨夜の宿で食べたもののほうがとろりとした舌触りで個人的には好みであった。

昼食後、高野山を後にした。橋本でJR和歌山線に乗り換え、岩出駅へ。

根来寺

根来寺多宝塔
根来寺多宝塔(大塔)(国宝)
根来寺多宝塔
根来寺多宝塔(大塔)(国宝)細部
岩出駅からタクシーで根来寺へ。1,000円ちょっと。根来寺は「かくばん祭り」とやらで大騒ぎ。静かな寺を期待していたのにショック。数日前にTVでも紹介されたとかで、周辺の道も大渋滞。ちなみに「かくばん」とは「覚鑁」で、根来寺を創建した人物の名である。祭りのため拝観料は無料であったが、拝観券がもらえなかった。拝観券を眺めるのも遠方の地を訪れる際は楽しみのひとつなのだが。お目当ての多宝塔の前も演舞やらテントやら出店やらですごい人出で、おちおち写真もとれない。まあ、知らずに来た方が悪いのだけれど。
さて、気を取り直してあらためて多宝塔を見てみる。高野山根本大塔と同じ、方5間の大塔形式。この形の唯一の遺構である。亀腹が大きく、支柱で軒を支えているのが特徴。初重の内陣は亀腹のとおりに丸く仕切られている。仕切りは障子なのだが、敷居はきっちりと弧を描いている。いろいろな技術があるものだ。

和歌山

再びタクシーで岩出駅に戻り、JRを乗り継いで和歌山市駅で下車、宿に向かった。
駅から宿まで歩いて思ったのだが、和歌山はコンビニと街灯が少ない。とてもびっくりした。
夕食は銀平本店で。付出しは餅フライと押し寿司2種。この付け出しにはやはり日本酒でしょう、ということで、地酒『黒牛』を飲む。すっきりした飲み口で、ぐいぐいといってしまう。ふだんはワインしか飲まない相棒Kもここはこの酒をいただく。
料理はおまかせコース3500円を注文。その日あるもので作ってくれる。しかし今日はネタが少ないと言っていた。お造りははまち、いかなど4種。次に炭焼きで、炭の入った火鉢で自分で焼く。かます一夜干、あまだい、鮭。揚げ物は天ぷら。少し足りなさそうなので、ざる豆腐とはまちのかま焼きを頼んだが、かまはおしまいだった。最後に炊き込み御飯。汁は具が葛きりのようなものだった。
量的に少しもの足りなかったのでコンビニでデザートを大量に買い込んで食べた。

11月25日(日)

出発

宿を6:20に出発。和歌山駅の売店(改札から出なければいけない)でサンドイッチなどを買い、電車に乗って食べる。これが今日の朝食だ。和歌山を少し南下するとすぐに周囲はみかん畑でいっぱいに。みかん色に彩られた山が紅葉とはまた一味違った風景をかもし出している。

道成寺

道成寺仁王門
道成寺仁王門(重文)
道成寺本堂
道成寺本堂(重文)
道成寺駅に7:59に着。安珍清姫で有名な道成寺は拝観時間が8時から。まだ庭を掃き清めている最中で、他に拝観者もなくたいへん静かだ。建物は仁王門・本堂がともに重文に指定されている。
宝物館には本尊千手観音(1994年指定)をはじめ、他にも重文の仏像がずらり。千手観音は優しい顔で、手がなぜか44本ある(通常は42本)。建物の廊下には歌舞伎などの名優の舞台写真があり、絵解き説法をする講堂には歌舞伎座で何十年も使われていたはりぼての鐘が奉納されてあった。朝早くツアーもいないので絵解きは聞かずにすんだ。静かでよかったー。

浄妙寺

浄妙寺多宝塔
浄妙寺多宝塔(重文)
道成寺を約1時間ほど見学してから箕島へ。タクシーで浄妙寺に向かう。ここにも鎌倉時代の美しい多宝塔がある。ほか薬師堂・薬師三尊などが重文。拝観は予約制なので堂内は見学できなかったが、境内は自由。薬師三尊は薬師堂の覗き窓からぼんやりと見える。

長保寺

長保寺大門
長保寺大門(国宝)と門前の紅葉
長保寺大門細部
長保寺大門(国宝)細部
帰りは歩いて箕島駅へ。少し早足で25分で着いた。JRに2駅だけ乗って下津で下車、長保寺へ。長保寺とこの後訪れる善福院は今日のメイン。のんびり歩いて楽しむことにした。駅前から道標があるので安心して歩けた。だいたい30分で着いた。
大門前は紅葉が散り始めたところであった。立派な門で、軒が大きい。

長保寺境内

長保寺本堂
長保寺本堂(国宝)
長保寺多宝塔
長保寺多宝塔(国宝)
参道をずっと進み拝観受付を過ぎ、石段を登ると正面に本堂・右手に多宝塔が現れる。

長保寺多宝塔

長保寺多宝塔
長保寺多宝塔(国宝)
裏山の少し高いところから多宝塔を顧みると、屋根が大きく張り出しているさまがよくわかる。亀腹が小さく、そのためか繊細なイメージを受けた。
長保寺は紀伊徳川家の菩提寺であり、裏山には歴代の墓がある。全部見てまわるとたいへんだ。なお、大門・塔・本堂が揃って国宝指定を受けているのは法隆寺と長保寺だけだ。

下津から加茂郷へ

再び歩いて下津駅に戻る。次の善福院は拝観は予約制とのことなので、駅から電話をいれると「いつでも見に来てかめへんよ」とのこと。下津からJRに一駅だけ乗って、加茂郷で下車。またまた歩いて善福院を目指す。
しかし道に迷った。国道からは道標が出ているのだが、途中に方向の分かりづらい道標がある。歩いて行く場合は地図を用意したほうがよいだろう。

善福院

善福院釈迦堂
善福院釈迦堂(国宝)
さて善福院に到着。堂守のおじいさんは釈迦堂の扉を開けて待っていてくれた。特に拝観料もいらないという。「自由に見てもらってかめへんよ

善福院本堂内部

善福院釈迦堂内部
善福院釈迦堂(国宝)内部
善福院釈迦堂内部
善福院釈迦堂(国宝)内部
じっくりと堂内にたたずんでいると、特に撮影禁止の札なども見当たらないことに気づいた。そこで写真を撮ってもいいかとおそるおそる尋ねると、「かめへん、かめへん、写真でもなんでもとって」
というわけで、お言葉に甘えて組物などを撮影させていただいた。
ずんぐりとした印象を受ける外観とは裏腹に内部空間は上に高く見える。これも木の組み方によるものだと解説にはあった。

善福院本堂裏にまわる

善福院釈迦堂全景
善福院釈迦堂(国宝)全景
暇乞いをする際にどこから来たのかと聞かれたので、神奈川だと答えると「鎌倉の円覚寺と似とるやろ」という。んー・・・似てない。このお堂の屋根は寄棟・瓦だが円覚寺舎利殿は入母屋のこけら葺きだ。
実は内部がよく似ていたことが後日わかりました。神奈川県立博物館にある円覚寺舎利殿内部の模型を見てはっと気づきました。窓の波模様まで同じだった。(だって円覚寺舎利殿って公開してないから・・・(言い訳))

紀州東照宮へ

侍坂と紀州東照宮楼門
侍坂と紀州東照宮楼門(重文)
駅に着いて時間を見るとまだ14:30なので、重要文化財のある紀州東照宮によることにした。紀三井寺駅で電車を下りると15:00。ここから有名な紀三井寺とは反対の西に向かって歩き、およそ30分で到着。
いきなり薄暗い木立の参道となり、奥まったところに侍坂と呼ばれる石段がある。これは鶴岡八幡宮の故事に倣って、紀伊藩主頼宣が藩士に命じて積ませたというもの。煩悩の数にちなんで108段ある。段差がきついが、これは戦になった際に攻め込まれにくくするためという。

紀州東照宮本殿を拝観

紀州東照宮楼門細部
紀州東照宮楼門(重文)細部
本殿拝観を申し込むと、巫女さんの説明を受けながら外周をひととおり見られる。欄間や柱は左甚五郎作の彫刻で埋め尽くされており、また拝殿と本殿が一体となった権現造は日光東照宮と同じ。まさにミニ日光だ。めずらしいものとしては、鷹が雉を捕らえている彫刻(神社に殺生の彫刻!)。家康が鷹狩が好きだったことからこのようなテーマになったということだ。なお、本殿建物は撮影禁止です。
帰り際、楼門をくぐるときにふと見上げると、邪鬼が軒を支えている姿がユーモラスだった。
隣の天満宮本殿を見てから、バスで宿に帰った。

目をつけていたフレンチが日曜休業とのことで、ホテル9階のレストランで夕食。
早速赤ワインをボトルで注文したら、なんと氷で冷やしてでてきた!ボージョレのようなものなら夏場に軽く冷やすことはあるけど、氷なんて暴挙は・・・これじゃあ、料理の方も推して知るべし・・・と思ったら、注文した季節のコース料理は松茸のソースを多用したフルコースで、なかなかおいしかった。ただ、それだけにワインは残念だった。デザートはケーキとフルーツをワゴンからチョイスできたが、ここは軽めにしておいて、知名度もすっかり全国区となった和歌山ラーメンを食べにいくことにした。
観光パンフレットで宿から近い店を探した。ぶらくり丁にある伊佐味という店だ。場所が分かりにくく、少し迷った。
かつりんのようなラーメン素人は、うまいラーメン屋というと、職人気質のオヤジが経営していて、ちょっとでも注文に迷うと即座に怒鳴られるのではないかというようなイメージを持っているのだが、ここは気のいい老夫婦であった。ご主人に「パンフレット見て来てくれたのー」などと親しく話しかけられ、少しうれしかった。常連ばかり大事にする店は嫌いだ(ラーメンに限った話ではないが)。
ラーメンは、色のわりにあっさりとした味で(それがまたびっくりしたところ)、たいへんおいしかった。いつもはスープを残すことが多い相棒Kも気づくと飲み干していた。

11月26日(月)

帰る途中どこか紅葉のきれいなところに寄ろうという話になり、談山神社に行くことにした。6:20チェックアウト、昨日と同じ電車に乗る。途中通学ラッシュに遭いながら、9:00過ぎに桜井に到着した。

談山神社へ

談山神社摩尼輪塔
談山神社摩尼輪塔(重文)、この坂を登りきると大勢の観光客が
談山神社行きのバスは、紅葉の季節ということで20分毎に臨時便が運行されていた。終点のひとつ手前、多武峰とうのみねバス停で下車し、ここから旧道を歩く。旧道はまっすぐ談山神社を目指すので、神社まで10分もかからない。バス代が60円も安いし、なんといっても空いているのがいい。 途中の摩尼輪塔を過ぎるとすぐに駐車場からの合流点で、ここから大勢の観光客が出現。

談山神社境内

談山神社十三重塔
談山神社十三重塔(重文)
談山神社境内
談山神社境内
肝心の紅葉だが、どうも色がよくない。色付く前に枯れてしまったようだ。また、今日は曇っているので光があまりよくないせいもあるのだろう。それでも時折晴れ間がさすと、神社の丹塗りと紅葉とがよく引き立てあって、はっとするようなときもあった。

雨がぽつぽつ降ってきたので帰ることにした。近鉄で名古屋に出て、名古屋からは新幹線のぞみに乗って帰った。
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