ノルウェイの森講談社文庫 1991年

ジャズの名盤が登場。

ビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビー」(上)73・197ページ

レコードは全部で六枚くらいしかなく、サイクルの最初は「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」で、最後はビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」だった。窓の外では雨が降りつづけていた。

月の光がとても明るかったので僕は部屋の灯りを消し、ソファーに寝転んでビル・エヴァンスのピアノを聴いた。

Waltz For Debby

Bill Evans

Waltz For Debby

Bill Evans (p), Scott LaFaro (b), Paul Motian (ds)

超のつく名盤。おおげさな評論家は、1曲目 "My Foolish Heart" の最初の1音でイイと思わないヤツはジャズ聴くのやめたほうがいいとまで言う。ま、それはさておき、実際にいいアルバムで、静かな夜にしっとりと聴きたい1枚。ライブ録音ということで、客のしゃべり声とかもけっこう聞こえるけれど、それをイヤと思うか、はたまたそのリアルさがイイと思うか。Evans は客が真剣に聴いていないのでこの作品があまり好きではなかったとか。

1961.6.25録音

バド・パウエル、セロニアス・モンク(下)13ページ

「ときどき私がジャズ・ピアノの真似事して教えてあげたりしてね。こういうのがバド・パウエル、こういうのがセロニアス・モンクなんてね。」

Thelonious Himself

Thelonious Monk

Thelonious Himself

Thelonious Monk (p)

Monk のソロピアノ。レイコさんはこんな弾き方で教えたのだろう。ピアニストはソロだとその個性がよく分かると言うけれど・・・ジャズ経験の少ない人には Monk のソロはキツいでしょう。ウチの相棒も、不協和音が耳障りだと言う。私自身、ジャズを聴き始めた頃にこれ買ったんだけど、なに弾いてんだかさっぱりわからなくて、全然おもしろくなかった。というわけで、訳わかんないぐじゃぐじゃのピアノが Monk だということをそのとき知ったのであった。

1957.4.12-16録音

「デサフィナード」、「イパネマの娘」(下)32ページ

葡萄を食べ終わるとレイコさんは例によって煙草に火をつけ、ベッドの下からギターを出して弾いた。「デサフィナード」と「イパネマの娘」を弾き、それからバカラックの曲やレノン=マッカートニーの曲を弾いた。

Getz / Gilberto

Stan Getz / Joao Gilberto

Getz / Gilberto

Stan Getz (ts), Joao Gilberto (g, vo), Antonio Carlos Jobin (p), Tommy Williams (b), Milton Banana (perc), Astrud Gilberto (vo)

この2曲の演奏はこの Getz / Gilberto が究極でしょう。ボサノバはやっぱギターだ。Astrud のふわふわヴォーカルもいい。

1963.3.18-19録音

トニー・ベネット(下)37ページ

ハードロックをかけるとヒッピーやらフーテンが店の前に何人か集まって踊ったり、シンナーを吸ったり、ただ何をするともなく座りこんだりした。トニー・ベネットのレコードをかけると彼らはどこかに消えていった。

MTV Unplugged

Tony Bennett

MTV Unplugged

Tony Bennett (vo), Ralph Sharon (p), Doug Richeson (b), Clayton Cameron (ds), k.d. lang, Elvis Costello (vo)

大のお気に入り。これは1994年の録音なので、ワタナベくんがかけたレコードではありえないが、手持ちの Bennett はこれ1枚なので挙げてみた。1曲目の "Old Devil Moon" の出だしでシビれる。録音も臨場感があってとてもいい。ゲストの2人も豪華だけど、やはり Bennett の方がはるかにウワテ。途中でマイクのプラグも抜いてホントにホントの Unplugged にしちゃうところもさすが。

1994.4.12録音

セロニアス・モンク「ハニサックル・ローズ」(下)47ページ

僕は黙ってセロニアス・モンクの弾く「ハニサックル・ローズ」を聴いていた。

The Unique

Thelonious Monk

The Unique

Thelonious Monk (p), Oscar Pettiford (b), Art Blakey (ds)

新宿のDUGでのシーン。ぴゃらんぴゃらんと飛び跳ねるピアノが5分以上ものあいだ炸裂する曲。こういう曲を演奏するとなんか Ellington っぽく聞こえるような気がする。私自身は、Monk はトリオよりも管入りの方が好み。

1956.4.3録音

ジョン・コルトレーン(下)62ページ

「でもこの大学の連中は殆どインチキよ。みんな自分が何かをわかってないことを人に知られるのが怖くってしようがなくてビクビクして暮してるのよ。それでみんな同じような本を読んで、みんな同じような言葉ふりまわして、ジョン・コルトレーン聴いたりパゾリーニの映画見たりして感動してるのよ。そういうのが革命なの?」

Ascension Edition I

John Coltrane

Ascension Edition I

John Coltrane, Pharoah Sanders, Archie Shepp (ts), Freddie Hubbard, Dewey Johnson (tp), John Tchicai, Marion Brown (as), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison, Art Davis (b), Elvin Jones (ds)

改革の象徴の Coltrane というと、フリーばりばりの時代のイメージがある。というわけで、その頃のアルバムを挙げてみた。これは音のカオスで、いつの間にかテーマ(しかもぐじゃぐじゃ)が終わってソロとなり、またいつの間にかぐじゃぐじゃなテーマに戻り、また・・・と、まあ、混沌と改革がお好きな方はどうぞ。私はちょっと・・・この大学のフォークソングクラブでは私は革命を語れそうにありません。

1965.6.28録音

オーネット・コールマン、バド・パウエル(下)96ページ

僕は通勤電車みたいに混みあった紀伊国屋書店でフォークナーの「八月の光」を買い、なるべく音の大きそうなジャズ喫茶に入ってオーネット・コールマンだのバド・パウエルだののレコードを聴きながら熱くて濃くてまずいコーヒーを飲み、買ったばかりの本を読んだ。

The Ornette Coleman Trio at the Golden Circle

Ornette Coleman

The Ornette Coleman Trio at the Golden Circle

Ornette Coleman (as, vin, tp), David Izenzon (b), Charles Moffett (ds)

フリーだが、編成がトリオということもあって聴きやすい。ドラムとベース聴いてると、フリーなんて気がしない。

1965.12.3-4録音

マイルス・デイヴィス「カインド・オブ・ブルー」(下)129・132ページ

大きなカップでコーヒーを飲み、マイルス・デイヴィスの古いレコードを聴きながら、長い手紙を書いた。

机の前に座って『カインド・オブ・ブルー』をオートリピートで何度も聴きながら雨の中庭をぼんやりと眺めているくらいしかやることがないのです。

Kind Of Blue

Miles Davis

Kind Of Blue

Miles Davis (tp), Cannonball Adderly (as), Paul Chambers (b), James Cobb (ds), John Coltrane (ts), Bill Evans, Wynton Kelly (p)

ジャズ史上に残る名盤。とかいうウンチクは抜きにして、いいアルバムだと思う。静かな曲ばかりで夜が似合うので、我が家の深夜のオートリピートランキングの第2位(1位は先の "Waltz For Debby")。1曲目 "So What" のイントロからわくわくする。ピアノは "Waltz For Debby" と同じ Bill Evans。

1959.3.2 & 4.22録音

サラ・ヴォーン(下)140ページ

シェーカーが振られたり、グラスが触れあったり、製氷機の氷をすくうゴソゴソという音がしたりするうしろでサラ・ヴォーンが古いラブ・ソングを唄っていた。

after hours

Sarah Vaughan

After Hours

Sarah Vaughan (vo), Mundell Lowe (g), George Duvivier (b)

ふたたびDUGでのシーン。特にレコードのタイトルは書いていないが、小編成のものを紹介。ここでの Sarah はギターとベースだけを従え、こじんまりとした親密な空間を作り出している。"In A Sentimental Mood" がお気に入りです。

1961.7.18録音

ジョン・コルトレーン(下)162ページ

僕のまわりで世界は大きく変わろうとしていた。その時代にはジョン・コルトレーンやら誰やら彼やら、いろんな人が死んだ。人々は変革を叫び、変革はすぐそこの角までやってきているように見えた。

「デサフィナード」(下)238ページ

そして僕のギターをみつけて手にとり、少し調弦してからカルロス・ジョビンの「デサフィナード」を弾いた。

ボサノバといえば陽気なイメージがあるが、このシーンを読んでからは、この曲を聴くと心なしか哀しく思うようになってしまいました・・・

この小説中に出てくる他の音楽・ミュージシャンなど
  1. 上巻
  2. 下巻