☆ 弘化四年(1847)
◯『神代余波』〔燕石〕③129(斎藤彦麿著・弘化四年(1847)序)
〝浮世絵師といふは、菱川師宣といふもさら也、其後、鳥居清長、勝川春章、また其門弟ども、今の世の
風俗、遊女、劇場の俳優人、相撲人など、その者を見るが如くよくかきたる。近き頃は、豊国が門弟な
る国貞いとよくかけり、又その門弟、並びに門弟ならぬ画だくみの、此頃かけるを見れば、男女とも肩
をすくめ、肘を膚につけたるさまにて、寒げにちゞみあがりたる姿にかけるは、いかなる故ならん、時
世のさまとはいひながら、いやしげに見ゆる也、さるすさびに、たま/\、衣冠の官人、甲冑の武士な
どをも、猶さるさまにかけり、いと寒げに身すぼらし〟
〈「寒げにちゞみあがりたる姿」とは所謂「猪首猫背」の姿をいう〉