十返舎一九作
浮世絵事典・み
☆ 文政十二年
◯『家内安全集』(春斎英笑画・十返舎一九作・文政十二年刊)
家内安全集 (国書データベース画像)
△隠居祖父(いんきょぢゝ)
老ぬれば子に従ふのならひにて家につえつく齢ひめでたき
△隠居祖母(いんきょそぼ)
手の届く丈は稼ぎて今は世の世話をも棚へ上げし気楽さ
△主人(ていしゅ)
繁昌は親の光りぞ今となりて頭(つむり)の兀(はげ)し身にぞしらるゝ
△妻(つま)
何事も操(みさほ)正しくつとめなば宝の山の神といはれん
△嫡子(そうりょう)
孝行を商売としてかせぎなばすゑは黄金のかまど将軍
△次男(じなん)
出る杭となりてうたれる直なる身にはいたゞく大黒のつち
△三男(さんなん)
柔和なる心を持つが奥の手ぞ負けるをかちと身の修行せよ
△末子(ばっし)
尻軽に働けめしは食ひ次第人から膳を末のたのしみ
△姉(あね)
あはれみのあるこそ人の鏡とて其身の徳をてらす愛敬
△妹(いもと)
夜目遠目笠のうちこそゆかしけれうへ見ぬ心艶(やさ)しかりせば
△妾(しょう)
舞登るとても其身をつゝしまば鳶が鷹産むすえのはんじょう
△嫁(よめ)
難所をも凌がば末はよかるべし女の道の峠こすまで
△隠居番頭(いんきょばんとう)
主の脚(すね)かぢりし恩ぞ今にしる入歯をしてもくひかねぬ身は
△支配人(しはいにん)
石の上に三年どこか辛抱は只一念にいまの番頭
△帳場手代(ちょうばてだい)
奉公と主の恩義とさしひけば我身に残るすえの福(さいは)ひ
△掛方(かけかた)
金銀もほうこうにんは見たばかり辛抱をしてみせる身となれ
△売方(うりかた)
売れやうれその身に徳はつかねとも損にはならぬすえのりつ身
△腰元(こしもと)
青柳のなしもとなれば其家のかぜになびきて奉公せよ
△賄女(まかなひ)
身に曇(くもり)霞(かすみ)なければ親方の目鏡(めがね)ちがはす出世をやせん
△丁稚(でっち)
しからるゝたけは其身の薬にて今に効能有は請合(うけあい)
△乳母(うば)
持手からこぼるのたとへ金持の子を大切にすれば損なし
△子守(こもり)
人の子を守するゆへに己(おの)が身も米の直(ね)しらず育つ生長(おいさき)
△中働(なかばたらき)
わが若きうちはものにうかるゝならひなれ目をさましてよ茶の間奉公
△物縫(おはり)
いとふなよ身のため肩の針しごと人にもまるゝうちの辛抱
△下女(げじょ)
侍輩(ほうばい)の猫も杓子もへだてなく笑顔見するがおた福の神
△下男(げなん)
両足を摺子木(すりこぎ)としてはたらかば角(かど)のなきとて主人愛敬
△料理人(りょうりにん)
包丁も気をもきかしてつとめなば頓(やが)てそのみも仕出しりょうりぞ
△掛人(かゝりうど)
闇雲(やみくも)にはたらけいつか人の目に掛人(かゝりうど)の身の喰いつふらば
△按摩(あんま)
正直をつえとたのみて身過(みすぎ)せばよくに目のなき人に人に勝(まさ)らん
△髪結(かみゆひ)
一筋に家業つとめよ元結(もとゆひ)のしまりよければ末は安楽
△米舂(こめつき)
ゆくすへは出世おもはゞから臼の身を粉(こ)にはたくばかり勤めよ
△日雇(ひよう)
日やとひのわづかの銭もちもりなば太平楽な節季物前