☆ 安永元年（1772）
◯『増訂武江年表』１ｐ189（斎藤月岑著・嘉永元年脱稿・同三年刊）
（安永元年・明和九年・1772）
〝四月中旬、鯨の片身なるが神奈川海より上る。肉爛れて臭気甚だしく、見物に出たる人皆熱を煩ひしと
いふ〟
☆ 寛政元年（天明九年・1789）
◯『天明紀聞寛政紀聞』〔未刊随筆〕②297（著者未詳・天明九年記）
〝七月廿一日より市ヶ谷柳町高徳院開帳、大虎之つくり物、高サ十間余、広サ三十間許也、是も前代未聞〟
☆ 寛政七年（1795）
◯『宝暦現来集』〔続大成・別巻〕⑥161（山田桂翁著・天保二年(1832)自序）
〝寛政七年三月、品川沖へ鯨流寄けり、何方にて突たる鯨なるか沖に浮たり、見物のもの船にて参りしが、
臭気つよく鼻を閉て舟より見るなり、予も見物に参しが、一向魚の形はしれず、大なる敷紙の浮たるや
うに見へける、甚く臭気有りて寛々とは見られず、其時官医橘立花殿の狂歌に、
打寄する波は御浜のおにはぞと鯨の汐をふくは内うみ〟
☆ 寛政十年（1798）
◯『天明紀聞寛政紀聞』〔未刊随筆〕②280（著者未詳・寛政十年記事）
〝品川沖へ四月末鯨漂へ来り候ニ付、見聞人甚多く、舟にて沖迄参り候、右の舟賃初ノ程ハ二十四文之処、
追々高値ニ相成り、五月初頃ハ百文ニなりし由、此鯨、浜御殿之前まで引付ケ置キ、同月三日公方様一
橋殿田安殿御一同上覧之所、長サ八間程之小鯨也、元来ハ薩摩之猟師突キ留メ候由ニテ、モリ弐本立チ
居候、翌四日同所へ御台様被為成御覧なり、其後狩野家へ被仰付、絵図御取らせ相成候節、委細寸尺相
改メられ候へバ、頭より尾迄長サ十二間、眼長サ六寸巾三寸也とぞ〟
◯『巷街贅説』〔続大成・別巻〕⑨23（塵哉翁著・文政十二年(1829)自序）
〝寛政十戊午年五月朔口、品川浦へ鯨魚流れ来る、尤死して流れよりし也、浜御庭先へ引寄て上覧あり、
此夏団扇絵手ぬぐひ等に、鯨を画くもの甚流行せり、鯨魚種類多し、其中せみ鯨とかいへる也とぞ、
品川の沖にとまりしせみ鯨みなみん／＼と飛で来るなり しかつべ真顔
袖が浦の丈を鯨にとりかぢや船でみはゞの前うしろ哉 芝光々
品川洲崎浦鯨魚之図、長洲鯨の類也、
頭四問、背通り九間、眼長さ六寸、玉一寸六分、上腮短く下腮長し、歯なくして鰭尾なり（以下略）〟
◯『増訂武江年表』２ｐ15（斎藤月岑著・嘉永元年脱稿・同三年刊）
（寛政十年・1798）
〝五月朔日、品川沖より鯨上る。長さ九間一尺高さ一丈余あり〟
〈「随筆百花苑」巻十一所収『椎の実筆』P221に、代官大貫治右衛門の「見分記」及び上覧記事、落咄あり〉
◯『藤岡屋日記 第一巻』ｐ247（藤岡屋由蔵・文政三年(1820)記）
〝（三月九日、品川にて「ゴンド鯨」二頭仕留める。大の方は長さ三間五尺、小の方は弐間三尺の由）〟
◯『増訂武江年表』２ｐ（斎藤月岑著・明治十一年成稿）
（嘉永四年・1851）
〝（四月）十一日朝、荏原郡大井村御林町の海岸へ小鯨 る（長三間余、頭長さ三尺八寸余なり。死に
て後なり。浅草寺奥山へ出して見せ物とす。臭気たえ難きゆゑ見物少し。また深川にて得たるスナメリと
いふ九尺計りの魚を鯨と号し、両国畔にて見せ物とす）〟