Top浮世絵文献資料館浮世絵師総覧
 
☆ かんとうだいしんさい 関東大震災 被災版画浮世絵事典
 ☆大正十二年(1923)  ◯『罹災美術品目録』(国華倶楽部編 吉川忠志 昭和八年八月刊)   (大正十二年九月一日の関東大地震に滅亡したる美術品の記録)   <神田区>   ◇三谷長三郎 紀伊國屋 塗師町   (三谷氏は区内の旧家にして、襲蔵の美術品も少からざりし由なるが、殊に氏の祖父母即ち七代目長三郎といふが浮世絵    を好みて、国貞の後援者となり、又自ら錦絵を出版せしを以て、当時の板下しのまゝに保存せられたるもの少からず、    主として国貞・国芳・広重の作品にして総数約一万枚を算する程ありしが、偶帝室博物館に寄托中なりし十五帖が残り    しのみにて、他は挙げて祝融氏に奪はれたりと云ふ)   <日本橋区>   ◇若尾謹之助 左内町    浮世絵版画多数   ◇松木平吉 大平 吉川町    浮世絵版画多数   ◇植草甚助 小網町    豊国広重等浮世絵版画 六十冊約五千枚    (三世豊国広重の主要作品は殆ど網羅したるものなりしと云ふ)   ◇高津伊兵衛 ニンベン 瀬戸物町    浮世絵版画 約五千枚    (高津氏三代目の子の小柳町に分家して絵草紙屋を営みしものあり、世に高津版と称す、新版の出る毎にその板下しの     分を宗家へ納むるを例としたるものが、蓄蔵せられたるものなれば、尋常の蒐集家のものとは其の選を異にして、い     つれも新鮮なる名品なりしと云ふ、作家は主に春章・清長・歌麿・写楽・春英・春好・北斎・豊国等のものなりしと)   <京橋区>   ◇諏訪松之助 畳町    浮世絵版画多数   <本郷区>   ◇鳥居清忠 湯島天神町    鳥居初代清信 丹絵其他版画多数   <浅草区>   ◇万場米吉 浅草公園    玩具錦絵      約二千枚 十二帖    (就中豊春の「役者かつら付」「露江の羅漢」・春章の「石づくし」・北斎の「八百善」組立五枚続、「吉原三浦屋」三     枚続・「湯屋」裸体美人図五枚続・北馬の「虫づくし」合せ絵等 頗る精巧なるもの等稀珍なるものなりしと云ふ)   ◇小林亮一 駒形町    (故文七の嗣子にして、文七氏の遺愛品を挙げて祝融氏に奉納したる(注)は、惜みても尚余りあり、同家の浮世絵は世に     能く知られたるところなるが、其総量肉筆二千点、版画十万枚と称せられたる大数なれば、所詮其の詳しきを知る能は     ず、僅に同好諸氏の所見を総合して、茲に其の要目を記す、氏又夙に琳派の画を好みて、其の収蔵少からず、且つ自家     の編纂書稿本、出版物の類も多数ありしが、総て同一の運命に葬られたり)(注「祝融氏」とは火災の擬人化)    浮世絵版画    (其の総数数十万と称せられたる莫大のものなれば、其中には珍物も少からずありしならんが、今之を詳にせず、唯同好     者間に語り伝へて珍品とせられしは)    葛飾北斎「風流なくて七くせ」一枚    (大錦竪版、北斎には他に例なき雲母摺なり、図は衝立の側に二女の半身描けるものにして、大首様にかけるも珍なり)   <補遺>   ◇渡辺庄三郞 京橋区五郎兵衛町    浮世絵版画標本的精品 約六十枚    浮世絵関係書籍約三千冊 版木約三千種、其他複製版画多数共全焼    関東大震災 被災 作品リスト