☆ 文政十年(1827)
◯『宝船商人尽』十返舎一九作 森屋治兵衛板 文政十年刊
(※「せりふ」省略)◇と狂歌のルビは現代仮名遣いに直した
宝船商人尽(国書データベース画像)
◇呉服店(ごふくだな)
〝呉服やは夜(よ)の間(ま)に見せを明烏 はやかを/\と人の寄来る〟
◇両替屋(りょうがえや)
〝正直を望性(もとで)とすれば両替の 栄ゆる運は天秤のをと〟
◇材木屋(ざいもくや)
〝金のなる木を売りものゝ貫小割(ぬきこわり) これや宝の山挽にして〟
◇金物屋(かなものや)
〝商売に直(すぐ)なるこゝろみがきなば 金気(きんけ)は見せに絶へぬはんじやう〟
◇米屋(こめや)
〝新米の俵のいろの青々と 杉形(すぎなり)につむ見せのにぎはひ〟
◇小間物屋(こまものや)
〝くる/\と金廻りよき身代は これぞ博多のこまものゝ舗(みせ)〟
◇酒屋
〝正直を一本木なる酒みせの 栄へは日々に升ばかりなり〟
◇香具屋(こうぐや)
〝名はたかき紅看板のあかねさす 日の出と見ゆる舗(みせ)のはんじやう〟
◇紙屋(かみや)
〝祥(さいは)ゐをゑびす紙やのにぎはひは 掛直(かけね)なくして安うり三郎〟
◇干物屋(かんぶつや)
〝売ものゝたくさんなれば身上も 春のひものゝのあたゝかに見ゆ〟
◇木薬屋(きぐすりや)
〝精(せい)出せば利目(きゝめ)見ゆるくすり見せ 金も命ものばすあきなひ〟
◇塗物屋(ぬりものや)
〝生業(すぎわい)の利とくをせしめ 漆にていつも堅地(かたじ)に見ゆる身代〟
◇古着屋(ふるぎや)
〝正直のかうべを神の守(まもり)にて 千(ち)はやふるぎの店のはんじやう〟
◇古道具屋(こどうぐや)
〝長生(ながいき)の賀らくた道具ならべつゝ 千とせふるものひさぐめでたさ〟
◇質屋(しちや)
〝めでたさは産後のしちやならねども 金がかねうむ家ぞたのもし〟
◇畳表屋(たゝみおもてや)
〝商(あきな)ひも広しま備後備中や 琉球もでもひゞくはんじやう〟
◇仏具屋(ぶつぐや)
〝御仏(みほとけ)のひかりは金の威光にて ゆたかに見ゆる舗(みせ)の荘厳(しょうごん)〟
◇油屋(あぶらや)
〝生業(すぎわい)の道くらうらぬゆへにこそ 得意もへらぬ油あきなひ〟
◇煙草屋(たばこや)
〝あきなひの舘(たて)のよきゆへ身上も やにこくはなき多葉粉(たばこ)見せかな〟
◇煙管屋(きせるや)
〝正直の地金(じがね)よければ諸国へも よくとをりたる名代(なだい)喜世留屋(きせるや)〟
◇菓子屋(かしや)
〝かしみせは徳羊肝(ママ)(とくようかん)の評判に その身(み)落雁(らくがん)金は有平(あるへい)〟
◇炭薪屋(すみまきや)
〝養老のたきゞうればや長生(ながいき)の 身もしんだいも堅(かた)炭屋なれ〟
◇蠟燭屋(ろうそくや)
〝仕合(しあわせ)は時に会津のろうそくや これ正直の生掛(きがけ)よりして〟
◇肴屋(さかなや)
〝身上に尾鰭(おひれ)のつきていさましや 日々にあらたな肴商ひ〟
◇八百屋(やおや)
〝売物はみな青幣(あおにぎて)なればとて 八百やの神の守るはんじやう〟
◇瀬戸物屋(せとものや)
〝しやうばいのせともの造る土一升 金一升にかゆるたのしさ〟
◇餅屋(もちや)
〝見せつきも美味(うまい)しかけは饅頭(まんじゅう)の あんにたがはぬ金もちやなれ〟
◇漬物屋(つけものや)
〝つけものゝ塩梅もよき身上と 人によばるゝ香のものやは〟
◇雪駄傘屋(せったからかさや)
〝あきなひは照降(てりふり)なしの金まふけ 両天秤のせつたからかさ〟
◇蕎麦屋(そばや)
〝名物のそばやなりとて銭金も むしやうにのびる深大寺なれ〟
◇甘酒屋(あまざけや)
〝あきなひは三国一と名に高き富士の山ほどたまる金銀〟
◇鱣屋(うなぎや)
〝はんじやうは金のまふかる筋うなぎ 見せのかゝりも大串にして〟
◇料理茶屋(りょうりちゃや)
〝商ひの広蓋(ひろぶた)までも小判形(こばんなり) はや身上を仕出しりやうりや〟
◇花屋(はなや)
〝見る目にもくすりと菊の花屋とて さかりひさしき見せの賑(にぎわ)ひ〟
◇手拭見世(てぬぐいみせ)
〝金持と鳴見(なるみ)しぼりの手ぬぐひを 売先(うりさき)なほき舗(みせ)も長尺(ながじゃく)〟
◇居酒屋(いざかや)
〝あきなひの酒は愁(うれい)の玉箒(たまはばき) はきよするほどたまる金銀〟
◇糸針屋(いとはりや)
〝組糸のほそき世渡りなれどまた 針を棒ほどふとき身代〟
◇本屋(ほんや)
〝見せつきの外題よければ板行(はんこう)に出したるごとき本屋はんじやう〟