◯『浮世絵』第十五号 (酒井庄吉編 浮世絵社 大正五年(1916)八月刊)
(国立国会図書館デジタルコレクション)
◇「偽の菱川氏」宮武外骨(18/26)
〝菱川師福
今年五月発行の『女の世界』に出て居る「福井五人女」の記事中に「越前福井で最初に新らしい女の名
称を戴いた女に菱川知子といふのがある、彼女は福井市新屋敷に住んで居る浮世絵師菱川師福の長女で
……」とある、此師福は先年東京の絵画共進界会に出品した事もあるが、浮世絵師といふも実は贋物画
を専門として居る画工で、柳里恭の画を摸する事が最も巧妙であると聞く、関新吾が福井県知事時代に、
福井の住人だからとて菱川師福といふ名を付けてやつたのであるが、前は福井在松岡村の提灯屋であつ
たので、誰も菱川師福と呼ぶ者はなく、今に「提灯屋」と渾名されて居る〟