●新宿の女になった私●
(9)2001.11.12
東京女子医大の中央病棟には各病棟ごとに明るい談話室があり、希望すれば病室でなくそこで食事ができます。
トースターや電子レンジもあり、何と言っても新宿の高層ビル群の風景は素敵。
まさにTOKYOです。冷蔵庫に飲み物やアイスを取りに来るたびに見ほれてました。
夕方が特にきれい。
東京の風景はどこまでも都市が広がっているんですよね。
初めて田舎から出てきたとき、首都高速からの風景が何やらコンクリー トの遺跡が永遠に続くようで寂しいと思ったことがあります。
でも夜景を見てその気分はぶっ飛んだけれど。
しかし風景とは都市でもやはり遠くに山や海、河が見えて欲しいと私は思うのです。
だから東京よりは横浜や千葉の方が好きだし、同じ都心でも山手線の東側の方がいい。
そんな気持ちで新宿の街をちょっとは評価し、見下ろしながらの入院生活にもだんだん慣れてきました。
でも痛みは相変わらず。座薬が切れるといかにモルヒネの錠剤を飲んでいても、かなりの激痛がきます。
同室の人が先生の勧めでで外泊にチャレンジしているので、
「痛 い痛い、このやろー」と声を出して騒いでみたりします。
座薬が効くまで30分、七転 八倒の大騒ぎを看護婦さんに聞こえないようにやります。
痛みに耐えながらよそさんが見たら結構変かもと笑う余裕をかましつつ眠ってしまうわけです。
痛いときは不安感はむしろありません。
ただひたすら「痛いぞ、バカやろう!」とのたうつだけです。
こんな思いをしてもどうしてか、座薬って痛くなってからでしか使いたくないっていうのも不思議でした。
やはり恥ずかしい薬だからかしら。
男性諸氏のことを思うともっと気の毒。 病人やっているのもつらいよね。
痛みと戦いつつの検査の日々が過ぎ、結果は手術は現段階では不可。
MIBG(アイソトープの錠剤かなんかを飲んで、鉛で囲まれた窓もない部屋でテレビだけが友達で数日から2週間くらい過ごす治療、アイソトープの保管の厳しい条件があり現在は北海道大学しかない)も北海道大学まで行って果 たして効果が望めるかどうか懐疑的。
抗ガン剤を打ってみて様子をみましょうということになりました。
いよいよ抗ガン剤のおでまし。
正直手術先送りでちょっと安堵。やはり怖いですもの、手術って。
抗ガン剤も副作用の怖さを噂には聞きます。
でも手術にくらべれば点滴なんてフンッて感じです。
特に私の場合、褐色細胞種の進行は他の癌よりゆっくりなので、抗ガン剤の効き目がとってもよければ癌進行を追い越して打ったたいてくれるとおめでたい考えが浮かんだわけです。
で、3週間に1回、2日間で打つことになりました。
抗ガン剤を打つ最初の日。
朝方、座薬があまり効かないくらい激しい痛み、モルヒネ剤を噛んで服用。
あまり効かないままシャワーを浴びて気分転換をしました。
いよいよ点滴、注射に気を取られている内に痛みが和らいできてほっと安心。
心配された吐き気もむくみも出なくて順調です。
ちょっと顔が熱い程度で二日目を迎えました。二日目は血管痛が起き、氷嚢で冷やしながらの点滴です。
さすがに食欲ががたっと落ちました。
でもこれは病院食のメニューのせいかも。
だってツナサラダ、ツナの煮付けとツナ缶ばかりてんこ盛りなんだから。
差し入れのメロンでご機嫌復活したけれど。
抗ガン剤を打ってから、今までなかなか調節が難しかった便秘薬がいい具合に効いてくるようになりました。
何故かしら。
出る物が滞らなければ、食欲も少しずつ戻ってくる感じ。
でももう少し病院食、美味しくならないかナー。
出た食欲もへこんじゃう。