佳境、辛酸に入る-第5章-

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大日本帝国の名誉にかけても、 そのような事実を国定教科書に表わす筈はないのだ。
また、当時は戦争中、自己犠牲により、他人を助けようという 精神を子供たちに植えつけるために利用したと思われる。
従って、尚更、公にすることはないのだと、彼は勝手に解釈したりした。
戦後の教科書には、何故か、出て来ないのである。

人は、国家は、事実を変える(奪う)ことが できても、真実は決して奪うことはできない。だから、彼は天と神に自分が 生を受けたことに感謝している。
自然とは素晴らしいものだ、人々は人間同士の係わり合いから、 取決めとかルールを作りその人間同士から与えられた名誉で 自己顕示欲を満足させている。 しかし、大きな自然である宇宙から見れば、彼には それが滑稽にさえ思えたのである。
彼はこのような人間世界のどろどろとした葛藤の世界から 与えられた喜びでなく、天が神が、自から、直にその手で 与えてくれたものだと彼は考えたのである。

彼はこの真実を口に出さないであろう。
一度、口に出そうものなら、人々は彼を誇大妄想する人間と考えるに違いない。 彼には哀しいことであった。
彼の母も同じであろう。
子供にも、この真実を語ることができないのである。
だから、彼が彼の母に老婆から聞いた話をしたとき、彼の母親は 肯定も、否定もしなかった。
彼も彼の母と同じで、子供にも、妻にもこの真実を云うことができないでいる。(第5章おわり) 第6章へ

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