芳子の持って来た弁当と彼が持って来た握り飯を半分づつ分け合い、果物も全て、半分にして食べた。 彼は非常に幸であった。 二人で持って来た当時では貴重品であった魔法瓶から、氷水を同じコップで飲んだ。彼は芳子に先に飲ませ、後から自分も飲んだ。
渓谷を更に、彼ら二人は歩き出した。 彼ら以外、人の姿は見られなかった。渓谷沿いの道から、斜面を駆け上がった土手の中腹に泉があり、綺麗な水が流れ出している。 それは木陰にもなっている。芳子が見付けて、 「あそこで顔を洗って行かない」彼は頷いて、芳子に従った。
芳子は、ハンカチを出して、それを冷たい水に浸け、絞っては顔に当てている。
彼は、芳子の顔をじっと見詰めていた。 何処となく、エクゾチックな感じのする美人であった。前歯の周囲を縁取る様に金が被せてある。口紅が歯まで付いてしまったのか、白い歯は薄紅色に染まっている。
芳子は、彼が自分を見詰めているのに気付いて、彼を見返し、お互いに見詰め合う格好になった。 彼と芳子は、目を逸らそうとはしなかった。 芳子のスターキングを入れていた籠が道路まで転げていった。 (第17章終わり) 第18章へ
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