彼はベンチに腰を下しこれらの光景を眺めていた。ふと、何時か前からこの世界の住人であるかのように思えてきた。ただ一人でいることが寂しく感ぜられた。 彼も散歩の仲間入りをすることにした。川の水は赤黒く決してきれいでない。川には城めぐりの大小の船が往復していた。
しばらく歩いてゆくと船着場があり、このライン川では中型になると思われる船がとまっている。 彼は急に乗ってみようという気持になった。小さな船着場の乗船キップ売場に行き彼は聞いてみた。 「船が一周して帰ってくるのにどの位時間がかかるか」と英語で聞いてみた。一時半かかると売場の男が云った。出発はいつかと聞いてみると、五分後だという。 彼は一周分のキップを買い、早速この遊覧船に乗り込んだ。
船尾には西独の国旗がはためき、ラインのおだやかな流れにスクリューの起す白い泡が尾を引いていた。 彼が乗った船着場と反対側の対岸近くを練習でもしているのか、カヌーが行くのが見えた。彼の傍らの子供がカヌーが一人乗りだ。二人乗りだと云っているのであろうか、「アイン、アイン、 ツバイ、ツバイ 」と声を大きくさけんでいる。
第二次世界大戦中、ドイツ軍が破壊したことのある橋をくぐり抜けると目前の水面に浮ぶ城が目に入った。(第13章終わり) 第14章へ
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