歴代のプログラムの中から、傑作のパート紹介を御紹介します。

Tp編

第41回定期演奏会より(1980年:シベ2他)

○月○日: 今日楽譜をもらった。なんと言う簡単な曲だろう。あほらいい。人をばかにしとるんか。
○月△日: パート練習に出る。他の金管のへたくそさにはついていけない。私の正しい音程が彼らには分からないのだ。
○月×日: 合奏に出る。他のパートも同じ。いやになる。
△月○日: 指揮者が私に文句を言った。いやいや、私が正しいのだ。
△月△日: 周りの人間の私を見る目つきが変わってきた。文句があるなら言えよな。
△月×日: 石丸先生が来た。何度も何度もつかまった。あれっー、おかしいなあ。
×月○日: 後輩から何とかして下さいと言われた。生意気な。何とかするのはおまえのほうだろう。
1月24日: 不本意では在るが、金沢の市長に出てくれるなと泣いて頼まれたので、今、客席にいる。世の中は難しいものである。


第42回定期演奏会より(1981年:悲愴)

  怪談「トランペットのたたり」
 その日俺は誰も居ない練習場で絶好調だった。遊びのつもりでヴァイオリンの教則本を引っ張り出してきて吹いてみると、すらすらふけるではないか。そして、バッハのパルティータを吹いてしまった時、俺は蒼ざめてしまった。重音まで吹いてしまったのである。その時、背後に人の気配を感じて振り返るとバイオリニストがいた。彼の反応を知りたくてもう一度バッハを吹くと、なぜかいつものようにしか吹けない。それを見たバイオリニストは、その涼しげな目を投げかけて「おまえ、なにしとらんや。わしのもん勝手につこなまいや。」と言って教則本を取り上げてしまった。
 その夜、おれはすべてを理解した。誰も居ないところでは俺はまぎれもなく天才なのである。そのことを証明するために録音してみたのだが、何も入らない。こ、これは、たたりである。俺がいままで楽器を粗末にあつかったことによって、たたられてしまったのである。許してくれ。おれが悪かった・・・・・・。と言うわけで、俺がトランペットの天才だということを知ってるものは誰も居ないのである。
 あなた、この話、信じてくれますか。

第46回定期演奏会より(チャイコフスキー5番)

 世の中の人々は、生協のメシは安いとかいいますが、それは真っ赤なウソです。なぜウソかというと、それは僕が貧乏人だからです。なぜ貧乏人かというと、いつも金がないからです。なぜ金がないのでしょう。音楽と言うものはとかく金がかかるからです。なぜ金がかかるのでしょう。それは空を飛べないからでもなければ、カレースプーンでウルトラマンに変身できないからでもなく、ただ単に分担金、コンパ代、レッスン代、ほかに白菜、しいたけ、人参、季節のお野菜いかがです、というような、DNAの二重らせん構造的ともいえる胸に五角形のSマークの付いた金銭支出が、我々11人に雨あられとふりかかって
・・・・・・・・明日から傘でもさして歩こうかしら・・・・・・・。

Tb編

第46回定期演奏会より(チャイコフスキー5番)

 人間というものは、いかなる可能性を秘めたものでせうか、その能力の限界とは、いったい何処にあるのでせうか・・・?わたくしは、4月に入団してからの7ヶ月というもの、そのことについて、考えなかったことはありませんでした。考えずにいられないような出来事が、次々に、わたくしの目の前に起こっていったのでございます。人が人として持ちうる恥と、わたくしたち現代社会に生きるものが、どうしても持ってしまう見栄を、果たしてどこまで捨てきれるか、そしてまた、1人1人の人間が生まれながらに持っている尊厳と、個々の人間の誇りと意地を、果たして何処まで守り続けられるか・・・・・?これは、いわば究極の戦いでありました。この戦いの中を、わたくしは、からくも、きりぬけてまいりました。今後も延々と続く修羅場の中を、わたくしは生きてゆかねばならないのでございます・・・・・・・・。(某一回生)
Tuba編

第12回サマーコンサートより(ナブッコ、ビリー・ザ・キッド、エロイカ)

チューバパート紹介の図 (セ)マイマイ  軟体動物  腹足類 …雑食性
一年を通して学館地下一、二階、理学部二階付近に生息し夜間は浅野川あたりにいる。殻は左巻き、右巻き両方あり真鍮を主成分としたもので、シルバーメッキ、ラッカー仕上げなどがあるようだ。
通気口らしきものがついており、途中にバルブを持つ。詳しい生態は未知な部分が多い。ある人の報告によると、理学部あたりで殻なしのものを見つけたらしい。もし見かけた方は是非御連絡頂きたい。

−新人募集のお知らせ−
只今、当パートでは、新人を募集しています。経験者、お酒の強い人、パワフルな人、おもしー人、大歓迎です。明日のTubaを担うのは君だ!…・君だよ!……きいてんのかい!ねえ……



第47回定期演奏会より(幻想、レオノーレ3番)

チューバパート紹介  皆さん、ご存知のチューバです。写真を見てください。こんなにたくさん人がいるんです。Tubaというのは、たくさん人数がいてもオケの中で複数使われることはめったにあることはないので、全員ステージに乗ることができなかったりするんですね。失業したものの中には、臨時で、D.Bなんかに転職したりするんです。まあアンサンブルの時はたくさんいたほうが楽しいですけど・・・・・。
 ・・・・・・っ、疲れた。分身の術は疲れる。いかん、1人だというのがばれてしまった。やっぱり1人はさみしー・・・。誰か入らないかな・・・・・・・・・。






第53回定期演奏会より(シベ2、白鳥の湖)

  我々チューバパートの人間は、正義、誠実、そして愛を持つ者たちとして、サークル内で評判です。噂では、金沢大学内でも有名だとか。そんな我々は、今、地球の温暖化の原因となっている二酸化炭素の増加を防ぐために二酸化炭素を吸って、酸素を吐く練習をしています。しかし、その方法だと体が緑色になってしまうと言う事実が発見され断念しました。何か良い方法があったらご一報ください。
  −この物語はすべてフィクションであり・・・・・・−

第17回サマーコンサートより(新世界より、道化師)

”やせ蛙 負けるなチューバ  ここにあり”
        んーナンセンス

”暗闇で ゾウが鳴いている
              おや?チューバ?”
        んーフーリッシュ

”古池に チューバ投げたら 沈んだよ”
        んーアブノーマル

”譜面には 白球ばかり おーしんど”
        んーロマンチック


第21回サマーコンサートより(ドヴォ8、フィンランディア)

  「じいさま、あの光る竹をごらんなされ」「うおーっ、あれが夢にまで見た光る竹か、ずいぶん太い竹じゃのう」「あの中に、かぐや姫がいるのですよ」「えっ、もうかぐや姫とわかっとったけ?まあいいわい。とにかくこの斧でパカッと割って見せるわ」「むりなさらないで下さいよ。もう年なんだから」「じゃっかしい!てめえに言われる筋合いじゃねえや!よーし割るぞ!ええいっ!」 パカッ(チューバが顔を赤く染めながら)「いやーん、はずかチイッ!」「婆さん・・・・うちへ帰ろ」 「・・・・・・・・」
(劇「俺が竹取りだ!」より)

指揮者自己紹介編


第41回定期演奏会より(斎藤忠直氏)

斉藤氏 美しき音は流れたり
そのオーケストラに我は住みぬ
春は春 夏は夏の
花つける部屋に座りて
こまやけき後輩のなさけと
         愛を知りぬ
いまもその音流れ
美しき友情とともに
若き青春をたたへたり

    5年間  本当にありがとうございました
     学生副指揮者   斎藤忠直



第40回定期演奏会より(斎藤忠直氏)

麻雀ニモ負ケズ、パチンコニモ負ケズ、
留年ニモ、下痢ニモ負ケヌ太ッ腹ヲ持チ、
大振リハセズ、決シテ女性団員バカリヲ見ズ、
イツモ静カニリズムトバランスヲ合ワス
1日ギョーザト天津飯ト少シノコーラヲ飲ミ、
アラユル曲ニ自分ノエゴヲ入レズ、
ヨク音ヲ聴キ感ジ、ソシテ忘レズ、
金大フィルノキタナイ部室ニヰテ、
東ニ学業アレバスベテ優ヲ取リ、
西ニコンパアレバ行ッテ静カニ酒ヲ飲ミ
南ニ好キナ女性アレバ・・・・・・・目モクレズ
北ニインベーダーニ狂ッタ男アレバ
ツマラナイカラヤロトイヒ
スランプノ春ハベートーヴェンヲ聴キ
失恋ノ秋ハバッハヲ聴キ
ミンナニマエストロト呼バレ
ホメラレモセズ、クニモサレズ、
サウイフ人ニ私ハナレルハズモナク
嗚呼! 花ノ学生指揮者ハ夢デアッタ。
後は、佐藤先生への神だのみ。よろしくお願いします。
以上   押忍!

              学生副指揮者   斎藤忠直



第44回定期演奏会より
    学生指揮者/花本 康ニ、松浦 正純、森田 正秀

 プログラム編集委員会はこのページを埋めるにあたり、ない知恵を絞った末、「学生指揮者に突撃質問」という苦心の割に平凡な企画を立案した。11月24日学内某所にて会談は和やかに進められたのである。尚、この会談は終始、金沢、福井、羽咋、高岡の方言まるだしという地域性豊かなものとなったが、活字にする段階で基本的に標準語に翻訳したことを御了承されたい。(T:インタビュアー、H:花本氏、A:松浦氏、0:森田氏)

T:ではまず自分を動物にたとえたら何ですか。(各自好きなことを言っては文句をつけられ、果ては、彼女の好きな動物まで言って、場を混乱に陥れ、なかなかまとまらない。
T:結局、松補さんはぶたうさぎで、花本さんは巨大生物の島のねずみで、森田君はあの娘の好きな犬ですね。(誰も納得しない。)

T:次に、担当してみたい楽器と、それを使って演奏してみたい曲は何ですか。
H:好きな楽器はVla.だけどVnで「シェへラザード」をやってみたい。あとはTpで「ローマの松」を2階から吹くのもいいね。
A:Hnをやってみたいけど、Tbでやりたい曲が多い。「シンフォニエッタ」「復活」というところかな。
0:Tubaで「惑星」を吹きたい。(この後、楽器と曲の話が続く。突然‥‥‥。)
T:「シェへラザード」ってどんな曲ですか?(騒然となる。この人はVn弾きである。)
A:R.コルサコフ(注1)ぐらいは知ってるんだろう。
T:知らない‥・…。知ってる人なんているんですか。(混乱、聞き取り不能。)

T:え−。次は、金大フィルで指揮してみたい曲は。
H:「運命」です。個人的に好きな曲でもあるし、この曲は交響曲の原点みたいなものだから。
A:やっぱり「ブラ3」ですね。いい音でやってもらいたい。これが一番大切で難しいことなんだけど……。
0:昔は「エグモント」をやってみたかったけれど、今は「ブラ1」がいいですね。
T:みなさん、金管の方の割に渋い曲が好みなんですね。
A:金大フィルに限定するからそうなる。
H:問題はそこやね。プロオケとなると話は変わる。やりたさと実力の兼ねあいをどこにもっていくかだね。

T:では限定しないで、振ってみたいオケと曲目は?
A:フィラデルフィア。曲は「展覧会の絵」。
H:ムーティ(注2)の影響か・・‥‥。
A:うん、すどくショックやった。
H:ぼくは、ベルリンフィルかな……。あとは……。とにかくアンサンブルがきちっとしていて、よく音の鳴ってくれるオケが好きです。
0:ロンドン響。「惑星」とか「スター・ウォーズ」。
H:何よりもフレッチャー(注3)に命令できるのがいいんだろう‥・・‥。ちょっと次元が違うけど、ボストンポップスも振れたら楽しいね。

T:最後に宝くじで一等が当たったらどうしますか。
H:まさか一日中TVゲームするわけにもいかんし……。
A:ぼくは土地を買う。
H:じじくさい意見やね。それですいかでも作るんか。(この後すいか作りの名人松浦氏の講演会となる。)
0:ぼくは世界旅行をしたい。(この後、海外旅行の話が延々と続く。実におもしろい。書いてやらない。)
H:旅行というのは月並みだ。スペース・シャトルの搭乗券を買う。
A:おいね!それいい。絶対いい。(この後、宇宙旅行の話から、牛に乗った新婚旅行の話、インスタントラーメンの話へと発展し、わけが分からなくなる。)

T:今日はどうもありがとうごさいました。

注1「シェへラザード」の作曲者。 
注2「リッカルド・ムーティ」指揮者。
注3「J・フレッチャー」ロンドン響の世界的チューバ奏者。      





第50回定期演奏会より (牛嶋恒太郎氏)(文V)  マーラー・1〜2楽章、協奏交響曲

牛嶋恒太郎 「おれがいつも詩を書いてゐると/永遠がやってきて/ひたひに何か知らなすつて行く/…」これは、室生犀星の「はる」という詩の冒頭です。
 歴史、社会、先人の偉業などと戦っている私の横を、時の流れがすりぬけていきます。「命に限りある人間の為すことなど、永遠を前にすれば無に等しい。」と言わんばかりです。「なにくそ。」と足を前に踏み出せば、永遠の前に敗れた人々の屍が、ごろごろと転がっています。「結局、人間の力、僕のカなどは、ちっぽけなものにすぎないのか。」と、ため息と共に座り込んでしまいそうです。
「でも。」僕は、まだ人間の、僕自身のカに期待しないではいられません。犀星だって「けれどもおれは詩をやめない/おれはやはり街から街を歩いたり/深い泥濘にはまったりしてゐる」という言葉で、この詩を結んでいるではありませんか。




第50回定期演奏会より (佐藤司氏)(法lV)  マーラー・3〜5楽章

佐藤司 よく晴れた日の浅野川近辺は、とても美しいんです。穏やかに流れる川の水面が陽光に輝きます。上流のほうではなだらかな卯辰山が木々につつまれこんもりとしています。浅野川大橋のたもとに、かつての主計町という料亭街があるのはご存知でしょうか。その古風なたたずまいを見ると、五木先生の小説の次郎という小料理屋はどこかな・・・など頭に浮かんできます。しかし最近、家でゴロゴロしているせいか、浅野川を渡る時はいつも慌ただしく、ほんやりと眺めることがないんです。そういえば、マーラーの練習を始めてからなおさら、そういう景色に心を留めることがなくなったのではないかしら。自然に心を重ねてみる余裕がなくなったのかもしれません。マーラーを演奏する時こそ、そういう心を大切にするべきなのでしょうね。
 川ではもう、友禅流しが行われていました。雪の浅野川を見られるのも間近なようです。
                                        11月。
コンサートマスター



第50回定期演奏会より (三浦順之助氏)(医IV)  コンサートマスター

三浦順之助 夜明けの第一光が、使い古したカーテンの隙間からうかがえる。熱のない、透明で幻惑的な光が世界を演出し始めている。その時、ハーブの静かなアルペジオが聴こえる。薄暗い部屋の中の、見慣れた物々も、そのアルベジオに気付き、部分的に覚醒し始める。
 やがて、少し豊かになった白い光が、直線的に隙間から洩れ出してくる。都会の喧噪の始まる前の、処女的な光。除々に目醒めだした部屋の中の静的な置物と共に、気怠い朝を迎える。うす汚れた都会の恥部を隠しながらも、光は成長し始める。
 そんな中でアダージオが始まることができればいいと思う。亦、尾花氏、店村氏、という満足この上ないソリスト及び堤氏と共に50回定期を迎えることができたことに深く感謝いたします。