![]() フィンランディアの聴き比べをしてみよう。
![]() 160名を越える団員を抱えて、オケ運営システムは成熟し、全盛を謳歌した時代だったろう。この時代は、実演を聴いていないので、録音でしかものが言えないのだが・・。 この時代の生の証言(えぴそーど)がほとんど寄せられていないのだが、10年も経ったことだ、ぜひ、投稿を期待したい。 冒頭部は、そんな時代を反映してだろう、観光会館の豊かな響きもあり、余裕しゃくしゃくの演奏だ。音も無理なく安定して出ている、音程も合っているし、これといって欠点もないのだが、今ひとつ決め手に欠けるか・・。贅沢かも知れない。1975年のがむしゃらな演奏とは、余裕も違うが、切実さも違うのだ。 後半も、コントロールされた「大人」の?演奏。弦楽器の音圧が十分なので、オーケストラとしてバランスが取れている。アッチェレランドの後で、6.5拍を伸ばす部分でも、背後の弦楽器の動きがちゃんと聴こえる!のはこの演奏だけだ。その後、連続シンコペでも、金管コラールffの背後で弦楽器がちゃんと鳴っているので、音楽の構造も透けて見える。 安定感・安心感はあるが、スリルは少ない。エンディングコードに「ため」がないのは、ちょっとものたりない。ともかく安定感では、随一の演奏だろう。 ![]() ![]() この時、既に金大フィルはお城から退出し、角間へと移転を完了していた。文字通り、新時代の演奏だ。団員数がどういうわけか減っていった時期で、観光会館のステージ上の人数も少なかったように覚えている。自分にとっては、この演奏は、マーラーの5番以来、6年ぶりに聴いた金大フィルの実演だった。 CD解説によれば、この演奏では1st、2ndヴァイオリンがそれぞれ、3.5プルト、3プルトしかいなかった。この5年前の1991年のフィンランディアでは、6プルトは軽く越えていたはずだから、かなり小振りの編成だった。この辺の苦労は、コンマスの唐木氏のエピソードにある。 編成の小ささのため、迫力不足はしょうがないだろう。しかし、逆に、細かい弦の動きなどが意外にはっきりと聴き取れる。 冒頭、金管は無理なく響きがまとめられている。個々の楽器では、発音自体が不安定な部分もあるが、全体でカバーしている。鳴りきったという快感はないが、これでよいだろう。 後半、弦の編成が小さい分を、現場的な工夫でうまくカバーしている。シンコペのアッチェレランドの部分でも、金管をうまく抑えて、弦のシグナルが聴こえてくる。最終部のコラールはテンポが相当速い(今回の5つの演奏中、1分5秒で最速!)が、エンディング向けて、音楽の呼吸が自然なので、鳴りが不足気味でも、不満足感はない。お客さんの自然な拍手が証明している。 ![]() その3へ戻る |