想い出

平成1年度卒 中村 晋吾
 

  私共が在団中より企画準備に掛かり、各行事の余剰金を積み立てる等して準備していた第50回定期演奏会が行われます事、お慶び申し上げます。金大フィルの大きな節目の演奏会という事で、出来る事なら団員として参加したかったところですが、法学部独特の恩赦(?)により現在は社会人として遠くからこの演奏会を見守ることとなりました。今では「朝起きて夜に眠る生活」にも随分慣れました。

 私の在団中は、学生最後の定期演奏会の二週間前に「昭和」から「平成」へ改まったことに総べてが象徴されています。教育実習との兼ね合いでサマーコンサートを一ケ月早めたり、又弦楽器の初心者の一回生は定期演奏会にのせない方針を3年間貫き、内外で論議を呼ぶなど、内部での方針の転換を行った。更に外的要因として、金沢市にプロのオーケストラが発足した為に、金大フィルが例年行う夏の演奏旅行や音楽教室といった行事がなくなるのではないかという危惧の念が生じる等「今後の金大フィルと団員のあり方」を摸索しなくてはならない、所謂「過渡期」でありました。

 しかしながら、日々の団員の生活は私が入団した当初とさほど変わっていない様に感じています。一回生の頃、部室へ行くと、皆が異口同音に聴きなれない金沢弁で「何かおもしい話ないけ?」と尋ねる様子に閉口していた自分も、下宿と大練習室との往復を重ねるうちに、いつの間にかその言葉が大学時代に覚えた唯一の金沢弁となっていました。
 夜遅くまで弦楽四重奏やアンサンブルに興た後、夜の金沢の街へと繰り出したり、下宿でレコードを聴いたりしながら明け方まで皆と音楽談義や、この誌面には書けない様な「大人の話題(?)」で語り続けた事は、私の団に対する最大の思い出であり、また同時にそこで得た数多くの人間関係が今の私の大切な財産となっています。



 入団当初から、練習や各行事に出て来ない上に態度だけは上回生に負けないと言われていた私自身、まさか4年間このサークルを続けるとは思っていませんでしたし、むしろ顰蹙を買う事の方がはるかに多かった様に記憶しています。例えば、2回生でサマーコンサート実行委員長の肩書きをもらっても、予算の総会の前夜、関東地方を襲った「積雪5cmの大雪」で日立の実家から動けず「実行委員長不在」で総会を流会させたこと。3回生でピアノ協奏曲の下棒をさせて頂いた時には、ピアニストを「カラオケ」代わりに何度も同じ所を練習してしまったこと。4回生の芸交祭での一回生オーケストラでは、指揮者が一番うるさいと不評を買ったこと。帰省して戻ってくる度に部室や練習場を「納豆」の臭いで充満させたこと、etc …。
 しかしながら、自分が音楽を今尚続けているのは、周囲の良き先輩方や友人達、後輩の助けに支えられ、又素晴らしい指導者に恵まれたという環境で、皆の音楽への情熱に引っ張られてきた結果だと思っています。(一寸褒め過ぎかしらん)

 今後の金大フィルは、大学の移転に伴い、練習場所や団員数の確保といった新たな問題を抱え、より難しい局面を迎える事でしょう。団員にとっても、大変な事とは存じますが、「音楽をやりたい」という初心を忘れずこの困難を乗り越え、益々の発展をお祈りする次第です。演奏会の度ごとに、遠路はるはる集まって来る懐かしい顔ぶれと共に、後輩の演奏を聴き、「人生で最も自由な時代」の気持ちを再現させるのが、これから年々楽しみになっていくことでしょう。
 また、演奏会でお会い致しましょう。

 




ある奏者の戯言

昭和61年度入学 築山 裕一
 
     

 記念誌の原稿を頼まれ、お調子者の俺は、何か書く羽目になってしまった。はて、何を書いたものかと思ったが、正月ボケの頑には何の考えも勿論なかった。仕方がないので日々たらたら書き連ねている落書帳から気に入った(?)のを適当に並べることにした。なので、これらは完全な独断と偏見である。悪しからず。

●初合奏 ○月×日 曇り

 兎に角長い。普通の曲(?)の2、3曲分あるみたいだ。もう終わりだろうと譜面をめくるとまたお玉の大名行列だ。まいった。たまの休みで、マーラーって結構のどかだったりするんだなぁとぼんやり木管の連中を見ると、もの凄い形相をしている。やっば大変なんだなぁと人事のように思ってすぐに出番だ。またガシャガシャ弾らねばならない。


●二人のライブ(ライヴァル)○月×日、雨

 今日はテンシュテットのマラ5の新譜を買ってきたのでバーンスタインのと聴き比べた。接戦の末ニコチン中毒バーンスタイン敗れ、アル中テンシュテットに軍敗が上がる。わしはウィーン・フィルのヴィヴラートが嫌いじゃ、だいたい今までウィーン・フィルでいいと思ったのはワルターのモーツァルトとモントゥーのプラームスぐらいだ。でもやっばりウィーン・フィルは上手いなぁ…‥ ぐっすん

▼・・‥‥‥‥○月×日 雨

 原稿を頼まれたものの何を書いていいのかわからない。編集委員のT嬢が向うからテクテクやって来る度にビクビクしてしまう。同じように原稿を頼まれているTにそのことを、そっと打ち明けると、実は俺もそうなんだと無責任に笑っていた。やっば人の考えることはだいたい同じだ。あっ、今度は集金係のM嬢だ。逃げろ

◆世紀末 ○月×日 雨

 超一流と一流の違いは遊び心があるかないか、であると思う。二流は一流を目指し、三流は遊び心オンリーだ。だから三流がおもしろかったりする。超一流は一流であり二流であり三流でなければならない。マーラーは偉い!

★世紀末(その2)○月×日 雨
 物事の本質を突くことは大切だが、遊び心を失っではいけない。かと言って遊び心が本質に先行してはいけない。しかし本質が停滞し発展を見ない時、下種な遊び心が先き立つ。世紀末とは・・・‥


◇月日は百代の過客にして 雨

 ついこの前まで、一年坊主だったと思ったら、もう四回生だ。皆から長老扱いされてしまう。あれこれ思い出し、只々茫然自失。金大フィルの四年間(あるいは五年間、あるいは六年間、あるいは…‥)は、まるで人生の縮図のようだ。

 
◆江原さんのこと  ○月×日 雨
 江原さんは面白い。(終わり)


しかしよく降るなぁ・・・。