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2000.02.03

私の好きな曲1
 

  初めて細野晴臣さんの曲を聞いたのは中学生の時、「三時の子守唄」だった。ラジオで、その曲が流れてきた時、こんなにいい声の人が世の中にはいるのかあと思ったのを、よく覚えている。歌詞のやさしさにも感銘を受けて、こんな人となら結婚してもいいと思ったのも、よく覚えている。まだ細野さんの顔も知らず、YMOの結成より4、5年前のことだ。

  アルバム『HOSONO  HOUSE』をちゃんと聞いたのはYMO以後だと思うけれど、最近CDでよく聞き直す。これは、感情が先走りしている時や、ルンサチマンゲームの罠から抜け出せないような時、聞くのにいいアルバムだ。全曲細野さんの作詞作曲だけれど、日本的な諦念にラテンの陽気さが混じったような飄々とした様子がとても気持ちいい。彼が歌うと、「終りの季節」のような悲しい(はずの)唄も、〈住所不定無職おまけに低収入〉なんていうとんでもない状況も不思議と暗くならないし、今聞いて一番いいなあと思う「恋は桃色」でも、恋は桃色というくらいだからやっぱりラブラブな曲なのか、でもそうでもないし、なあんかいろんな感情を抱き込んで、やっぱりしあわせなのかなあ、という単純な前向き指向ではない暖かさがある。特に「恋は桃色」の〈おまえの中で雨が降れば  僕は傘を閉じて濡れていけるかな〉という歌詞が好きです。

  「三時の子守唄」もそうだけど、「ろっかばいまいべいびい」や「僕は一寸」に出てくる大人のプロポーズも、参考にしたいもんです。


 

●細野晴臣 「三時の子守唄」
セカンドソロアルバム『TROPICAL DANDY』(1975年5月発売)収録曲。CDあり。

●細野晴臣 『HOSONO HOUSE』
1973年5月発売のファーストソロアルバム。CDあり。<収録曲>(A面)ろっかばいまいべいびい/僕は一寸/CHOO CHOOガタゴト/終りの季節/冬越え (B面)パーティー/福は内鬼は外/住所不定無職低収入/恋は桃色/薔薇と野獣/相合傘

(c) 2000 Shirokuma Seshiro, Hebon-shiki