「カイエ」表紙に戻る
2000.11.02.

ヴァージン・スーサイズ
 

 『ヴァージン・スーサイズ』を見て、閉所恐怖症の気がある私は、余りの息苦しさで呼吸困難に陥ってしまう。そもそもこの映画は美しい少女たちが自殺してしまうという閉塞空間を描いているので、当然と言えば当然の効果なのだけれど、それ以上に女の子のぷよぷよとした身体を見ていると、どうにも耐えられない気分になってしまうのだ。あんな柔らかそうな、しかも色気づいた物体が家にごろごろころがってたら、こっちが自殺したくなるぞ。

 映画自体はまあ良くできていると思うのだけど、この異様な少女趣味は一体何なのだろう。私はぼんやり画面を見ながら、子供には絶対レースを着せないぞとか、部屋に花柄のカーテンは掛けないぞといったことばかり考えていた。レースと花柄のインテリアは人間を駄目にする、とまで考えた。これが、レースの下着をつけた大人の女性が部屋に寝そべっている映画なら、私も存分に楽しめると思うのだけど、あの子供特有の柔らかな締まりない身体にそれらの装飾は、それだけで閉塞的で気味が悪く、息苦しくなる。この息苦しさは、彼女たちを指をくわえて見つめている少年達の憧れとも全く違うので、私は女の子は勿論、男の子にも誰にも感情移入できず、何とも居心地が悪い。

 おかげで息をぜいぜいさせながらエンドロールを見終えた私は、車の窓を全開にして家まですっ飛ばし、気持ち悪さを納めるために、ガーリックバターをべたべたに塗ったパンとエスプレッソを3杯消化しなくてはならなかった。その頃にはもう、夜の11時を回っていた。


 

(c) 2000 Shirokuma Seshiro, Hebon-shiki