オレ攻略 水木しげるの妖怪写真館

しげる邂逅編


その時の私はメモリーズオフピュアーがやりたくて仕方が無かった。
極めて刹那的な、理性では抑えることの出来ない情動に駆られていた。
メモリーズオフピュアーとは、携帯ゲーム機ネオジオポケットカラー専用ソフトである。
私はクソゲーが好きだが、ギャルゲーも好きなのだ。
ネオジオポケットカラー本体とソフトを同時に購入してしまえば良いのだが、
六月のドリームキャストソフト攻勢のおかげで、財布は軽かった。
いくら何でも、新作旧作合わせて合計8本は買い過ぎであった。
これ以上の無駄な出費は避けるべき状況下にあった。
戦略として、友人にネオジオポケットカラー(長いので、以後ネポカーと略)を借り、
ソフトのみ購入してくるという案を思い付いた。
これならば、出費をより少なくする事が出来る。
問題はネポカーを持っている人間が近くにいるか?という点である。
…いた。
当面の問題はクリアされ、計画は実行に移された。
大学から最も近いゲームショップに向かう。
あった!!
新品4320円
高いが、仕方が無い。
理性では無意味で無駄な事だと解っていても、体が言う事を聞かずについついはまり込んで行ってしまう、この状態をデスクリムゾンシンドロームもしくはクソゲーリバウンド効果とでも呼ぼうか…。
まさに、私はそんな状態だった。
島耕作、視野狭窄、この2つなんだか言葉の響きが似ている。
恥も外聞もなく、ギャルギャルしいパッケージをむんず、と掴み、レジへ向かう。
店員は奥に行ったり、商品陳列棚の裏でモゴモゴしたりしていた。
無いようだ…。
在庫が無いのであれば、売り切れの表示を出しておけッ!!
危うくキレるところであったが、踏みとどまる。
私は紳士だ。
それにたかが、ギャルゲーにそこまでの情熱を見せることもあるまい。
気を取りなおし、別の店に向かう。
無い、人気作なのか、それとも逆に売れ筋では無いため、出荷本数も少ないのだろうか?
おそらく後者であろう。
ここいら一帯の店には無いと目星をつけた私は、車で北に20キロほどの所にある店へ向かってみることにした。
私は変に頑ななところがある。
たかがギャルゲーにそこまでの情熱を見せなくても良いのに。
40分くらい車に揺られ、店に着く。
あった!!!
中古3170円
封を切る楽しみが無いが、経済的観点から観ると丁度良い値段、いや、まだちょっと高い。
だが、選択の余地など無い。
迷う要因は皆無だ。
どうせあと数日で給料日だ、なんとかなる、という気持ちもあった。
容赦無く、購入に走る。
友の家にネポカーを借り受けに行く。
友はソフトが一本だけではつまらないだろうから、ソフトを貸してくれるという。
私の視線はあるゲームに釘づけになった。
水木しげるの妖怪写真館
私はクソゲーやギャルゲーが好きだが、イロモノやキワモノも好きだ。
タイトルだけで魅入られた。
するすると手を伸ばす。
その時、友はそのソフトを確かに、こう呼んだ『ポケットモンスター しげる』と。

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