センチメンタルグラフティクイズコレクション

途中経過3

とよしままちこの歌を歌う事になった。
人前で、2曲も。
成功報酬は10万円(歌詞カードを見ないで歌いきれた場合)。
なぜか他の研究室の先輩とコンビを組んで挑戦する事になった。
その場合、報酬は山分けの5万円となる。
オレはあまり乗り気ではないのだが、その先輩はやる気マンマンだ。
仕方なく、覚悟を決めた。5万円だしな。
本番は明日の午後5時、あまり時間がない。

翌朝。
朝は忙しい、誰だってそうかもしれないが。
今日は歌を歌わなければいけない、とよしままちこのを2曲。
昼間は水理学のテストがある、その勉強のため、昨日は歌の特訓をろくにしていない。
まぁ、テストは午後1時には終わるから、その後に歌の練習をしても間に合うだろう。
大学まで車で約40分、その間ずっとエンドレスで聴いていれば少しは身につくかもしれない。
車ではCDかカセットテープが聴ける。
家のCDラジカセにはなぜか、フロッピーディスクが入るようになっている。
フロッピー?MP3とかWAVEファイルとかに変換できるのだろうか、面妖な。
1.44MBのフロッピーに2曲収まるのだろうか?オレは詳しくないので判断できなかった。
いや、その前に車でフロッピーを読み込む装置が無いぞ。
「パズルボブルって面白いねぇ」
突如、姉さんが言った。
言うほど面白いゲームではないような気がしたが、いちいち相手にしている暇はない。
オレは、取りあえずカセットテープに2曲おとし、学校に向った。

教室では、テストの追い込み勉強している奴等が既にいた。
「オッス、Oちゃん」
オレは一人の友達に声を掛けた。
「オぅ」
Oちゃんの手許にあるノートを覗きこむ。そこには、
f=V-v/V+v*f0
あ、れ。
どうみても、ドップラー効果の数式だ、今日は水理学のテストのはずだ。
こんな高校物理みたいな問題がでるのか?
「ねぇ、こんなの出るの?」
不安になって聞いてみた。
「うん、出るってよ」
げぇ、マジかよ。こんなの勉強してない。
でも、この程度ならすぐに憶えられる。

出なかったよ、ドップラー効果。
ハメられた。テストの出来はいまいちだ。
こんなことなら、フィックの拡散方程式を憶えたほうが良かった。
済んだことは仕方ない、歌の練習をしよう。5時まであと数時間だ。
うまく決めれば5万円だ、かなり恥ずかしいけど。
前向きにがんばることにした。


……というような、夢を見た。
夢だったんスよ、全部。ちくしょうオレの5万が。
精神的、肉体的に疲れた今日はもう何もしたくない。
だいたい、歌を歌いきれたら10万という時点で気が付くべきだったんだ。
テレ朝の炎のチャレンジャーじゃあるまいし、うまい話が転がってるわきゃねーんだよ。
フロッピーディスクが読み書きできるCDラジカセってのもオカシイ、MP3、WEVE、アホかオレ、はよ気付け。
普段ゲームなんかしない姉さんがゲームの話をしてくるのもオカシイ。
こんなに現実世界と違う点が随所に盛り込まれていたのに全然気が付かなかった、ちくしょう。
夢を見るのは構わないが、途中で目が覚めて夢の内容を覚えていて、妙に疲れているのが気に入らない。
他人の倍以上の人生を送っているような気分だ、朝っぱらから徒労感にさいなまれる。
って言うか、とよしままちこって誰なんだよ、一体。
とよしままちこ、そいつが今回の騒動の諸悪の根源ということになる。
ちくしょう、とよしままちこのくせに(意味不明)。
もう何もやる気がしない。オレは午前中はふて寝を決め込んだ。


とよしままちこは声優さんでした。豊嶋真千子って書くみたいだ。
みんなお馴染みの杉原真奈美役だよ、ちゅんちゅん
もお、ダメだ、こんなのが夢に出てくるようになっちゃ、壊れているよ、脳みそが。
あと3年ぐらいで、死に至るんじゃなかろうか、急性クソゲー中毒とかで。
3年も経っちゃ急性ではないな。
もう、止そうクソギャルゲーやるの、だって、辛いだけなんだもん……。


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