バランスクリニック

福山市に坂本治療院という凄腕の整体がある。”病気ではない、あなたも治る”や”健康で100歳まで生きよう”などの名著書をだしていて、私も本を読んでずいぶんと参考にしたものだ。
なんでも、体を悪くして血行を阻害している筋肉の凝りというものは、必ず関節の異常(ずれなど)から生じているとし、うまい具合に関節のずれや癒着を修繕して圧倒的な治病力を誇っているのだ。ただ、本を読んでやってみようと思っても、書いてあるほど簡単には出来ない。

そこで私は弟子入りしようと決意し、自分の所に治療に来ていた患者さんを連れていって習うことにした。
福山からは初の弟子入りとなった!そうだ。

私が習いたいと思ったのは、当時、70歳や80歳になるような老人性の変形性膝関節症の治療に困っていて、それがどうしても解決できず悩んでいたからだ。坂本治療院に行ってみると、
せんべい布団を一枚敷いた治療所の中で、しわがれた声の白髪のじいさんが、気合の掛け声とともにポイポイと治療をしている。

そのじいさんに頼み込んで、やり方を色々と指導してもらい、何日も通って一通りを学んだのだが、見た目よりかなり難しかった。やることは簡単なようだが、診断が困難なのだ。あれを簡単にポイポイとかたずける坂本のじいさんは紛れもなく整体術の達人である。本人は日本一だと自負しているようだが、間近にその切れ味を見ていた私も、確かに整体術としては本当に日本一なのかもしれないと思った。

すごい、まことにすごい先生なのだが

私はなんと、坂本治療院に弟子入りを決めた翌日、今度は予約していたトントン骨調整法を習うために海田まで行くのだった。
それには坂本先生も驚いたろうが、「あなたは若いんだから、どんどん研究しなさい」とおっしゃって下さった。まことにありがとうございます。


それ以来の私は、トントン骨調整で知った理論をメインテーマに研究し始めたため、一般的な整体術とはかけはなれた治療を行うようになりました。それはおそらく自分でいうのもなんですが、一般の常識を覆すような、超すばらしい技術だと思っています。
だが、実験当初は気付きませんでしたが、この坂本式バランスクリニックはその中でも欠かすことが出来ない優秀な面をもっていました。それは坂本先生の考えていた理論とは若干違うのですが、ともかくも”治る”わけです。バランスクリニックをこの骨調整法の理論で再点検してみた時、少し修正しての組み合わせが絶妙で、そこに気付いたときの私は、
”ひょっとして治療の道で私は名人になれるかも”と思わず小躍りして喜んだものです。
(平成14年の記)



追記:私が修業に通っていた頃から半年くらいして坂本先生は亡くなられました。もう教えてもらう機会は永遠に来ないんですが、今でも難しい患者さんを診たときには、坂本先生だったら、どうやっただろうと考えたりします。ムリヤリでも治そうという強固な信念に基づいた豪快な技は、ちょっと普通の人間では思いつかないし、やってみる勇気が出にくいものでした。相手を助けようという気持ちと、激しい追求心が駆り立てたのでしょうが、最初にやった坂本先生は本当にスゴイ!と思いますね。いつまでも心に残る強烈先生でした。
(平成18年の記)


   
日本一