ピコ通信/第166号
発行日2012年6月25日
発行化学物質問題市民研究会
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URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/


6/17 水俣シンポジウム 「再々度、水俣病未認定問題を問う」
当研究会は水銀条約と国際NGOs の連帯を発表

■6/17 水俣シンポジウム 報告(2) 国際NGOs の水俣への連帯
 水銀条約政府間交渉委員会(INC)の第1 回会合(INC1)からNGO として参加している当研究会は、水銀汚染による水俣の悲劇を二度と起こさないようにするために、シンポジウム開催、パワーポイント資料、写真展示、報告書、ポスター、メール発信、英字紙報道紹介など、様々な形で水俣問題について世界のNGOs に情報を発信してきました。
 当研究会からの情報を受けて、世界のNGOs は、水俣の教訓を水銀条約に生かすことが水俣の被害者を敬うことであるとの認識の下に、INC1 以来一貫して水俣への連帯を表明してきました。以下にINCを中心に、当研究会の情報発信と国際NGOs の連帯の概要を紹介します。

▼原田正純先生の訃報を6 月12 日早朝、ネットワークを通じて水銀に関わる国際NGOs に伝えたところ、Rio+20 に関連してブラジルのリオで総会を開催していた国際POPs 廃絶ネットワーク(IPEN)から、総会参加者32 か国60 人以上を代表する弔意や、国際的に水銀問題に特化して取り組むゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)の共同代表からの弔意など、多くの団体/個人から心のこもった弔意をいただいたので、リストにして報告しました。

▼また、リオでのこのIPEN 総会の参加者らが、水俣への連帯を表わしたブルーとオレンジ色の長い布帯2 本を配置して納まった記念写真が送られてきました。ブルーは水俣の海、オレンジは水銀汚染の警告を意味するものであり、IPEN は2011年1月のINC2(千葉)と2011年10月のINC3(ケニア)で、胸への着用にデザインされた2色の水俣連帯リボンを参加者に配りましたが、今回は、特大のリボンをあしらって、改めて水俣への強い連帯を示してくれました。


写真:John Wickens/IPEN

▼2010 年6 月にストックホルムで開催されたINC1では、当研究会はZMWGのブースに下記を出展しました。
  • パワーポイントによる「水俣病と日本の水銀問題」を上映
  • ポスター「水俣を忘れるな/患者と家族を敬え/日本の水銀輸出をやめろ」(ZMWG との共同制作/展示)
  • チラシ「水俣の悲劇と水銀貿易禁止の必要性」ZMWG との共同制作/展示
▼2010 年12 月に、当研究会はINC2 に向けた国際NGO水銀シンポジウムを東京で開催し、日本側からは、原田正純先生の講演「水俣から学ぶ−50 年の歴史から」、谷洋一さん(水俣病協働センター理事)、佐藤英樹さん(水俣病被害者互助会会長)、佐藤スエミさん(水俣病被害者互助会)、そして当研究会の安間武の報告がありました。
 海外からはジョセフ・ディガンギ博士(米)(国際POPs 廃絶ネットワーク(IPEN)科学顧問)と、リチャード・グティエレス氏(比)(バン・トクシックス代表/ZMWG)がそれぞれ、世界の水銀問題と小規模金採鉱について講演しました。

▼INC2(2011 年1 月、千葉)では、当研究会とZMWG はランチタイム・サイドイベントで、アイリーン・スミスさん(グリーン・アクション)、坂本しのぶさん(水俣病被害者)、谷洋一さん(水俣病協働センター)、そして当研究会の安間武が水俣の状況と水銀条約への取り組みについて世界中の参加者に報告しました。

▼INC2 サイド・イベントとして当研究会/ZMWG が「アイリーン・アーカイブ写真展」を主催しました。

▼さらに、INC2 のサイド・イベントでは水俣被害者団体及び支援者団体がIPENの協力を得て、水銀条約を“水俣条約”と命名するとする日本政府の提案に対して、水俣の悲劇にきちんと向き合い、本質的な 解決の道筋が示されない限り反対するとする声明を発表し、下記を求めました。
 ▽水俣病被害の全容の解明▽全ての被害者への補償▽汚染企業を擁護するのでなく、「汚染者負担の原則」の確実な実施▽水俣及び不知火海の水銀汚染の浄化▽被害者が地域社会で安心して暮らせる医療や福祉の仕組みの確立

▼INC2 の本会議では坂本しのぶさんがアイリーン・スミスさんの英語通訳で次のように感動的な発言をしました。
 「私の名前は坂本しのぶです」、「私は胎児性水俣病です」、「水俣病は終わっていません」、「人は終わったといいますが、終わっていません」、「政府は、水俣病のことをもっとよく学んでほしい」、「水俣病が二度と起こらないようにしてください」、「どうぞ、よい水銀条約を作ってください」。

▼INC2 のNGO 会議室でIPEN は「水俣被害者団体を支援する国際連帯声明」を発表し、IPEN 共同議長による署名式を行いました。この声明は、英語版|日本語版|ロシア語版|アラビア語版|スペイン語版が発表され、INC2 の期間中に、42か国のNGOs 72 団体が賛同署名しました。

▼INC2 とINC3 の間の2011 年6 月、IPEN と当研究会が中心となり、世界のNGOs16 団体が水俣に連帯を示す下記プラカードを掲げて各国で写真をとるキャンペーンを実施し、IPEN の水俣支援キャンペーンのウェブ・ページに写真を掲載しました。Honoring Minamata:(水俣を敬う)http://ipen.org/minamata/
  • 水俣を敬い、被害者を敬え
  • 全ての被害者を補償せよ
  • 水俣の水銀汚染場所を浄化せよ
  • 水俣病の全容を解明せよ
▼2011 年 10〜11 月のINC3(ナイロビ)では、本会議前のIPEN 主催NGO 準備会合で、当研究会は、水俣の補償問題の動向、水俣湾の水銀汚染ヘドロ埋め立ての問題と八幡プールの問題などについて紹介しました。また、NGOs ブースにはIPENとZMWGがそれぞれ当研究会と共同で制作した水俣関連ポスターを展示しました。

▼本年6 月末からウルグアイで開催されるINC4 に向けて、坂本しのぶさんから次のようなメッセージをいただきました。
“加害責任の検証、全ての被害者への補償、水俣湾などの水銀ヘドロ埋め立て問題、水俣病の全容解明など、水俣病はまだ解決していません。被害者を苦しめることのない、強い水銀条約にしてください。”

 IPEN は、この坂本しのぶさんのメッセージとINC2 での坂本さん(日本)とフェルナンド・ルグリス議長(ウルグアイ)の写真をあしらったポストカードを検討中でありINC4 会場で配付する予定です。
(文責:安間 武)


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