ピコ通信/第154号
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福島県アドバイザーの「安心・安全」に二本松市長が異議 「国民が判断する」
福島大学準教授らも要望書 今回の福島原発事故で、国、県、東京電力、御用学者等は、情報を隠蔽し、地震・津波が想定を超えていかに大きかったか、チェルノブイリに比べていかに事故は小さく、汚染も少なく、安心・安全であり、原発がないと電力不足で大変なことになり、電力料金も上がる−等、国民を脅すことにより、脱原発の高まりを抑え、原発推進政策が影響を受けぬよう、あらゆる努力をしています。 6月18日には、海江田経産相は「原発安全宣言」をし、全国の立地自治体に原発再稼動の要請をしました。多くのマスコミも程度の差はあれ、様々な形で世論が脱原発に傾かないよう"自粛"しているように見えます。 本稿では震災後、このような状況の下に、福島県が任命したリスク管理アドバイザー(山下俊一・長崎大学教授)が福島県各地で行なった「安心・安全」講演と、その内容に異議を唱えた二本松市の三保恵一市長の決断、及び福島大学準教授12名の「福島県知事への請願書」を紹介します。 二本松の三保市長は、山下教授が国の言うことを守ることが国民の義務であると繰り返し説いたことに対し、▼大事なことは、国や政府ということではなくて、政治の主人公は国民一人ひとり、主権在民、国民があらゆる判断、行動の基準でなくてはならない−と述べました。このことは、4月29日に東京で開催された「終焉に向かう原子力第11回」の講演で、小出裕章さんが話された▼自分に加えられる危害を容認できるか、あるいは、罪のない人々にいわれの無い危害を加えることを見過ごすかは、誰かに決めてもらうのではなく、一人ひとりが決めるべきこと−という内容と本質的に同じです。 1. アドバイザー山下俊一教授 東電福島第一原発の事故後、福島県は長崎大学や広島大学の原発推進学者らを放射線健康リスク管理アドバイザーとして任命し、アドバイザーらはクライシス(危機)・コミュニケーションと称して、福島県各地の講演会で「安心・安全」を説いて回りました。 ■山下教授 3月21日福島市での講演会質疑応答での安心・安全発言 (福島県ホームページ「福島県放射線健康リスクアドバイザーによる講演会」に基づく)
■山下教授 5月3日の二本松市での講演 (YouTube『山下俊一氏講演 5月3日二本松市』に基づく) http://www.youtube.com/watch?v=k5Dv8AC-lwQ&feature=related 他
2. 二本松市 三保恵一市長 5月3日に二本松市で、山下俊一アドバイザーの講演会が開催されました。この講演会を主催し、講演を傍聴した二本松市の三保恵一市長が、山下俊一氏の講演について、取材(Our Planet TV)で述べた内容を紹介します。(YouTube OurPlanetTVのインタビュー5月27日に基づく)
3. 福島県知事宛 福島大学 12人の準教授による「要望書」 福島大学の準教授12名が、佐藤雄平・福島県知事に、現アドバイザーの山下俊一氏、高村昇氏、神谷研二氏とは異なる立場の学者を招聘すること等、7項目の要望からなる要望書を6月5日に提出しました。 原発王国福島県及び、経済産業省とともに原発推進の旗頭である文部科学省に逆らって、長期・低線量曝露と内部被曝の重要性を考慮して、要望書を出した12人の勇気ある準教授に敬意を表します。 また、福島県のNGO「子どもたちを放射能から守る 福島ネットワーク」は「山下俊一の解任を求める県民署名」のキャンペーンを開始しました。 なお、福島県は、県民の被ばくによる長期の健康影響を疫学的に明らかにするために調査検討委員会を発足させましたが、その座長になんと山下俊一氏が就任しました。 チェルノブイリで多くの被害者と事故との因果関係を認めず、1991年にチェルノブイリ安全宣言を出したIAEA事故調査委員会の委員長は悪名高い放射線影響研究所(*)の元理事長、重松逸造氏であり、山下氏は重松氏の直弟子であると言われています。 (*):アメリカが原爆投下後、設置した原爆傷害調査委員会(ABCC)の後身 以下に7項目の要望を示します。 【要望1】 福島県は、低線量被ばくの健康影響に詳しい専門家として、次の二つの立場の学識者をそれぞれ放射線健康リスク管理アドバイザーとして招聘してください。 (1)被ばく量が少なくなればリスクは減るものの、どんな低線量でもリスクはゼロでないとする立場 (2)内部被ばくのリスクを重視し、低線量であっても決してリスクは小さくないとする立場 この二つの立場は、低線量被ばくの健康影響はほとんどないと主張する現アドバイザーの山下俊一氏、高村昇氏、神谷研二氏とは異なるものです。低線量被ばくの健康影響についての様々な見解を県民に示すことは、県民をいたずらに不安にさせるという懸念があるかもしれません。しかしながら、一面的な情報だけを流し、見せかけの「安心」を作り出しても、長い目でみれば、県民の健康を守ることにつながるとは思えません。 低線量被ばくの健康影響に関する専門家の見解は定まっていないという事実がある以上、県民ひとりひとりがその事実を受け止め、考え、議論していかなくてはなりません。 そのための下地を作ることは、県行政の重要な役割であるはずです。医療現場におけるセカンド・オピニオンの重要性が指摘されているように、様々な立場のリスク管理アドバイザーに意見を求める機会を県民に与えることは、むしろ、県民の健康を守るうえで有効であると考えます。 【要望2】 福島県は、県民の被ばくによる長期の健康影響を疫学的に明らかにするために調査検討委員会を発足させ、その座長には、低線量被ばくの健康影響はほとんどないと主張してきた山下俊一氏が就任しました。この人選のプロセス及び根拠を説明してください。 【要望3】 先の調査検討委員会を含め、今後行われる疫学調査につきましては、研究計画、データ、分析過程を細やかに公表するとともに、調査結果の正当性に対する第三者による評価体制を整えてください。疫学調査の結果が、仮に、これまで健康リスク管理アドバイザーが発言してきた内容と食い違うものになったとしても、その結果が正しく公開されるよう透明性を確保することが重要であると考えます。第三者によるチェック機能により透明性を確保することの重要性については、今回の事故における原子力安全・保安院や原子力安全委員会の独立性に関する教訓などからも明らかです。 なお、長期の疫学調査の必要性は否定しませんが、県民の健康チェックは、何よりもまず、県民の被ばく線量を少しでも低減し、健康を維持するために行われるべきであると、我々は考えます。 【要望4】 福島県は、公衆の被ばく線量が年間1mSv 以下に収まることを短・中期的な目標とし、それに基づいた具体的な除染計画(表土の除去、高圧洗浄など)を迅速に作成し、公表してください。 国際放射線防護委員会(ICRP)が福島原発事故を受けて表明したコメントでは、公衆の被ばく線量限度は年間1mSv であり、20mSv はあくまで非常時に暫定的に許容されるレベルであることが示されています。つまり、行政は、子供が長時間過ごす学校などを優先的に除染するのはもちろんのこと、すべての地域に住むすべての住民の被ばく線量が年間1mSv を下回るように努力し続けなければなりません。 ただし、余計な被ばくは少なければ少ないほどよいという観点から、我々は、究極的には、平常時のバックグラウンドの放射線レベルに戻すことが理想であると考えております。県としても、長期的には、医療を除く人工線量をゼロにすることを目標に据え、諸策を講じてください。 【要望5】 福島県は、県民が外部被ばくをどれだけ受けているかチェックできるような体制を早急に整えてください。具体的には、モニタリングポストの拡充、ホットスポットマップの作成、バッジ式線量計の配布、サーベイメータ式線量計の配布または貸与、といった策を迅速に講じてください。 【要望6】 福島県は、県民が内部被ばくをどれだけ受けているかチェックできるような体制を早急に整えてください。具体的には、ホールボディカウンター(WBC)の県内病院への設置及びその支援、ならびに無料検診サービスの整備を、迅速に進めてください。 【要望7】 福島県は、県民が日常生活を送るうえで余計な被ばく(内部、外部とも)を避けることができるように、県民に向けたガイドラインを作成してください。また、被ばくを避けるためのマスク等の日常品を配布してください。 (文責:安間 武) |
有害物質被害者、環境NGOs、科学者らが
WHO に二つの環境病 MCS と EHS の公式な認知を求める ■ICD 10 とは 世界保健機関(WHO)には、死因や疾病の国際的な統計基準のための分類として、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)(略称 ICD)というものがあります。 現在の最新版は、1990年の第43回世界保健総会で採択された第10版で、ICD-10 として知られています。(ウィキペディア ICD 10) 多くの国は国内版 ICD 10を持っており、日本では、厚生労働省の下、一般財団法人 医療情報システム開発センターが管理する「ICD10対応電子カルテ用標準病名マスター」がこれにあたります。 ある疾病がICD 10 に加えられるということは、その疾病が公式に認められたということになり、重要な意味を持ちます。 ■化学物質過敏症と電磁波過敏症 世界中の化学物質過敏症患者や電磁波過敏症患者は、この疾病が精神的なものではなく、身体的な疾病であることをWHOや国家が正式に認めるよう強く望んでいますが、化学物質過敏症MCSも電磁波過敏症EHSもWHOのICD 10 には加えられていません。 しかし日本では、多くの患者や支援団体の働きかけにより、2009年10月1日に化学物質過敏症が、分類コードT65.9(その他及び詳細不明の物質の毒作用,詳細不明の物質の毒作用)として標準病名マスター(ICD-10)に加えられました。また、シックハウス症候群は2002年にT52.9(有機溶剤の毒作用、有機溶剤、詳細不明)に登録されています。 化学物質過敏症が国内版ICD 10 に加えられているのは、日本以外ではドイツ、オーストリア、ルクセンブルグだけであり、電磁波過敏症はどこの国のICD 10 にも登録されていません。 このような状況の下に、スペインとイタリアの団体が中心となり、化学物質過敏症(MCS)と電磁波過敏症(EHS)を WHO のICD 10に登録するよう要請するために WHO 事務局長宛の手紙を起草し、世界中のNGOs及び専門家(研究者/医師/看護師/法律家など)に呼びかけて賛同署名を募りました。 日本では当研究会が賛同署名をとりまとめ、専門家12名と、MCS/EHSの患者及び支援16団体が賛同の署名をし、スペインの団体に提出しました。スペインとイタリアの団体は5月13日にジュネーブに行き、WHOの担当者に世界中から集まった賛同署名を添えてWHO 事務局長宛の手紙を手交しました。(ピコ通信第153号(2011年5月)) ■WHOとMCS/EHS患者・支援者団体の会談 スペインの団体から5月13日のWHOとの会談の内容が報告されたので、その概要を報告します。 WHO側出席者: マリア・ネイラ博士:WHO 公衆衛生環境部門ディレクター アンネ・プルス−ウスツン博士:WHO 公衆衛生・環境部門チームリーダー イワン D. イワノフ博士:WHO 労働衛生、公衆衛生・環境部門 T. ベディルハン・ウスツン博士:WHO コーディネータ:分類・用語・標準、健康統計・情報部門 ナダ・オセイラン氏:WHOコミュニケーション担当、公衆衛生・環境部門 MCS/EHS患者・支援者団体側出席者: アヌンシアシオン・ラフェンテ博士:ビゴ大学教授、スペイン毒性協会(AETOX)副会長 ジュリアン・マルケス博士:多種化学物質過敏症及び電磁波過敏症を専門とする臨床神経学者/神経生理学者 イサベル・ダニエル氏:看護師、神経生理学専門 ジャウメ・コルテス氏:ロンダ弁護士会メンバー、労働法及び環境病(MCS/EHS)専門の弁護士、スペイン全国多種化学物質過敏症認知委員会メンバー ソニア・オルテガ氏:環境専門の弁護士 フランシスカ R. オリアンド氏:イダリアの連合組織 AMICA 副代表 フランシスカ・グティエレス氏:スペインの連合組織 ASQUIFYDE 代表、スペイン全国多種化学物質過敏症認知委員会メンバー 【ジャウメ・コルテス氏 NGO】 多種化学物質過敏症(MCS)及び電磁波過敏症(EHS)に関するいくつかの基本的な問題点を提起することにより発言の口火を切った。
■NGO代表団のいくつかの所見
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