ピコ通信/第129号
発行日2009年5月25日
発行化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

ジュネーブ 5月11〜15日/第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)
新規の課題:ナノ物質、製品中の化学物質
電子廃棄物、塗料中の鉛
過フッ素化合物も検討



1. はじめに
 5月11日から15日まで、第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)がスイスのジュネーブで開催されました。国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の実施状況のレビューや新規の課題としてナノ物質の安全性、製品中の化学物質、電子廃棄物、塗料中の鉛、そして過フッ素化合物(PFOS等)の管理などが検討されました。
 会議の結果について環境省が5月18日付報道資料で概要を発表しましたが、SAICM事務局からの公式な結果文書の発表や、IPEN等、主要参加NGOsからの包括的で独自の見解を述べた声明や詳細報告書の発表はまだありません。発表され次第、順次日本語化して紹介する予定です。
 本稿ではICCM2の新規の課題の紹介と当会の取り組み、及び会議後に発表されたナノに関するNGOsの共同声明を紹介します。

2. 新規の課題
 当会は、新規課題に関しICCM2事務局が事前に発表した提案文書、会議後の参加NGOsのナノに関する共同声明、及び海外メディアの報道を日本語化して、当会のウェブサイト(SAICM関連情報/ICCM2)で紹介しています。
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm_master.html

日本語化して紹介した文書・記事:
3. 新規課題に対する当会の取り組み
 ICCM2が取り上げた4プラス1の課題のうち、当研究会はすでに、電子廃棄物と過フッ素化合物に関しては2003年から、ナノ物質の安全性の問題に関しては2005年から、本格的に取り組んでいます。また製品中の化学物質についてもピコ通信の連載「調べてみよう家庭用品」シリーズが、第103号(2007年3月)以来今号で26回目となりました。
   これらの課題は当研究会が発足以来取り組んでいる様々な課題の一部ですが、世界の化学物質問題/化学物質の政策課題を先取りして取り組んでいると自負しています。

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IPEN Press Releases SAICM 2009/5/15
NGOs ナノに関する第2回国際化学物質
管理会議(ICCM2)の結果に失望
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【ジュネーブ 2009年5月15日】 国、産業、及び非政府組織の代表が、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の旗印の下に化学物質管理の問題を討議するために、今週、ジュネーブに参集した。代表者らは、ナノテクノロジーなど新たに出現している多くの課題を検討した。

 "本日同意されたナノテクノロジーに関する行動は、この課題の緊急性を反映していない。代表者らは、ナノマテリアルはナノ粒子が母親の血液を通じて母親から子どもに伝えられる世代をまたがるリスクを及ぼすことについて知らされている。しかし、これらのリスクは、ICCM2による対応の中では無視されているように見える"と 国際POPs廃絶ネットワーク(IPEN)共同議長のマリアン・ロイドスミス博士は述べた。
 "1年も経過していないダカールにおける化学物質安全に関する国際フォーラムで採択された声明()の足元にも及ばない"とETCグループのダイアナ・ブロッソンは述べた。"そこでは、政府、産業、労働組合、非政府組織が、予防原則が適用される必要があること、国はナノテクノロジーにノーという権利を持つべきであること、脆弱なグループを守るための特別の措置が必要であることに同意した。ジュネーブではそれらについて我々は何も得なかった"。

 国連及びその加盟国の大部分は軽視され、ダカール宣言はこの会議の準備期間中に弱められた。英語だけで夜遅くの会議で協議された草案は、経済協力開発機構(OECD)と国際標準化機構(ISO)にすっかり委ねられてしまった。予想されたことであるが、これは代表者らの支持を得ることに失敗した。
 "ある程度厳しい交渉の後、会議の総会で採択された決議は、ナノテクノロジーによって提起された課題に対応するために、真にグローバルでオープンで透明なプロセスの必要性を認め、さらなる研究がなされる必要があり、製品中のナノマテリアルの存在についての情報のより広い周知が必要であることを述べている"と国際環境法センター(CIEL)のデービッド・アゾレイは述べた。

 "決議はまた、次の3年間の控え目な行動のための緩い提案を含んでいる。すなわち、協議、情報共有、異なる地域における会議とワークショップ、そして批判的に、第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)における途上国および移行経済国への関連する課題に関する報告などである。本質的な議論がICCM3でのより強い行動計画を導くことができるようにするために、これらの行動に必要なリソースが供給されることを確実にすることができるかどうかは、これらの課題ついて関心を持つ組織と政府次第である"。
 "途上国はこれらの工業的物質についてよりよい情報を必要としている"とクック島のアイランド・サステイナビリティのイモゲン・イングラムは述べた。"消費者として、我々は、肌に塗っている日焼け止めの中に何が入っているか知る必要がある。SAICMでは、人の健康と安全及び環境に関連する化学物質は機密とみなされるべきではないと述べている。我々は産業側が情報を自主的に提供しようとしていることで満足することはできない。我々はそれらを含む製品にラベル表示することを強く産業に求める"。
 労働組合の一部であるサステインレーバーのジュディス・カレラスもまた、ナノに関連する労働安全衛生の問題に関し、より強い声明がなされなかったことに失望の意を表明した。"我々は、かろうじて文書中に労働者についての記述を得たが、彼らは職場におけるナノマテリアルへの暴露の最前線にいる(研究、製造、包装、・・・)。多くの場合、労働者たちは、彼らがナノ粒子を扱っていることはもちろん、有害影響のリスクにさらされていることすら知らない。この問いはもっと多くの注目を受けることが必要であり、我々は、ある代表者らはより強い条項に反対したことに失望した"。
 (安間 武)

(注):第6回政府間化学物質安全性フォーラム IFCS/FORUM-VI報告書エグゼクティブサマリー 2008年9月24日 工業ナノ物質に関するダカール声明
 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/IFCS/IFCS_2008_Dakar.html


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