ピコ通信/第97号
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経産省化学物質政策基本問題小委員会
第4回のトピックスと当会の意見 2006年8月30日に開催された第4回小委員会を傍聴したので、事務局の説明及び討論の概要を紹介します。第1回と第2回の内容については94号(06年6月発行)、第3回については95号(06年7月発行)をご覧ください。 ■第4回の議題 (1)前回の議論を踏まえた論点整理 (2)情報伝達の仕組み (3)その他 ■第3回小委員会指摘事項への回答等 1. MSDSの記入状況について(事務局資料 ) ◆記載の欠けている項目 多くはないが、「暴露性」に関わる情報や、「製品名、含有する化学物質の名称、政令上の号番号、種類、含有率」の欠如を挙げる事業者が相対的に多い。 2.アスベスト問題の政府の過去の検証について 中地委員による前回の質問、「"リスクベースのアプローチ"はアスベスト問題が現実に発生したことをどのように説明するのか」という問いに対し、事務局はアスベスト問題に関する環境閣僚会議会合資料(2005年9月20)を引き合いに、次のように回答した。 ◆検証結果全体としては、それぞれの時点で当時の科学的知見に応じて関係省庁による対応がなされており、行政の不作為があったということはできないが、当時においては予防的アプローチ(完全な科学的確実性がなくても深刻な被害をもたらすおそれがある場合には対策を遅らせてはならないという考え方)が十分に認識されていなかったという事情に加えて、個別には関係省庁の連携が必ずしも十分ではなかった等の反省すべき点も見られた。 ◆当研究会の意見 この説明は、その時点の科学的知見に応じてリスクベースで管理しても、重大な結果を引き起こすことがあるので、ハザードベースに基づく予防的アプローチが必要なケースがあると国は認めたことになる。 ◆城内委員提出資料の一部 アスベストによる被害がこれほどまでに大きくなっているのは、労働者はもちろんのこと一般の人にもアスベストが悪性中皮腫や肺がんの原因物質であるということを知らせなかったからである。アスベストの災禍を教訓に、「化学品の危険有害性をそれを取り扱う人に伝えること(ハザードコミュニケーション)が事故や健康障害を防止するために最も基本的で重要なことである」ということを再認識する必要があろう。 3.ハザードベースの規制」と「リスクベースの管理」について 3.1 用語の説明 ◆「リスクベースの管理」 【第3回資料8 頁1】 リスクの概念を導入すると、一般的にはハザードの強い物質であっても、人・環境への暴露量が十分に小さい時にはリスクは小さいと判断でき、リスクに応じた管理の下での使用が可能となり、逆にハザードが小さい物質であっても、人・環境への暴露量が十分に大きいとリスクが大きいと判断することとなり、リスクに応じた管理が求められるようになる。 リスクベースでの管理を行う場合、まず製造・輸入量等暴露情報を先に把握した上で、暴露可能性の多い物質から順にデータ取得を行い、かつ暴露可能性の多い物質ほど取得すべきデータの種類も増えることとなる。 ◆「ハザードベースの規制」 【第3回資料8 頁1】 ハザードベースでの規制を行う場合は、製造・輸入量にかかわりなく、一定の信頼性のある安全性データの取得を優先的に行い、ハザードが明らかになった物質に関して製造量・輸入量等に規制をかける。 【第1回資料5 頁13】 化学物質の市場導入段階は、主に化審法(特定の有害化学物質の製造・輸入を規制する、いわゆる蛇口規制法)で管理されている。 3.2 両者の関係について ◆「ハザードベースの規制」とは、化学物質の有害性の強さのみに着目し、製造、輸入、使用の禁止を含む制限措置を講ずること ◆「リスクベースの管理」とは、暴露の考慮されたリスクの大きさに基づいて、製造、輸入、使用(加工)、廃棄の段階での管理措置を講ずること なお、各国の規制体系毎にその制度上の濃淡は異なるものの、「ハザードベースの規制」と「リスクベースの管理」は二者択一の考え方とはなっておらず、実際の制度設計に当たっては、各国の実態に即して、製造・輸入段階での蛇口規制と使用段階での管理という、それぞれの特徴を活かした最適な組合せを検討することが重要と考えられる。 ◆当研究会の意見 どこに最適な組み合わせを置くかが攻防となる。企業側はリスク許容のより大きいところを求めようとするが、我々市民・NGOはリスク許容のより小さいところを求める。 ■第4回テーマ:情報伝達の仕組み 下記内容について事務局の説明及び産業側委員からのプレゼンテーション、及び委員による討論が行われました。詳細については、この小委員会のウェブサイトをご覧ください。 http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/07/a25.htm 1.テーマ:情報伝達の仕組み等 サプライチェーン全体にて化学物質の管理を促進するために必要となる、安全性情報やリスク評価結果のサプライチェーンへの伝達を促進する上での政策的課題に関する議論 ◆化学物質管理の全ての基盤となる化学物質の有害性情報等に関し、これを国際的に整合性がとれた形で分類し、伝達・表示する方策はどうあるべきか。 ◆さらに、リスク評価結果・管理手法についても、サプライチェーン上の事業者間で伝達し、共有できる仕組みをどのように構築すべきか。 2.検討すべき論点(事務局案) (1)有害性情報等の分類・伝達・表示はどのように進めるべきか 化学物質の分類と表示に関する国際的調和を目的としたGHSは、どのように導入すべきか (2)サプライチェーン上の事業者間で共有すべき情報とは何か サプライチェーン上の ●川上事業者から、川中・川下に伝達すべき情報 ●川中・川下事業者から、川上に伝達すべき情報 には、どのようなものがあり、それらはどのような仕組みの下で伝達されるべきか (3)サプライチェーン上における情報伝達・リスク評価の実施・リスク削減策の共有は、関係者間で、どのような役割分担・責任分担で進めるべきか サプライチェーン上において、事業者レベルでリスク評価を行うに当たり、評価に必要な情報(用途情報、取扱情報、暴露情報等)の内容や程度はどのようなものか また、それら情報はどのように得られ、さらに評価結果やリスク削減策等はどのようにサプライチェーン上で伝達されるべきなのか (文責:安間 武) |