ピコ通信/第100号
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化学物質管理のあり方に関する市民からの提案
新化学物質NGOフォーラム 今年春から、環境省、経産省は、2007年の化管法の見直し、2009年の化審法の見直しを見据えて、化管法に関する懇談会と化学物質政策基本問題小委員会を設置し、今後の化学物質政策についての検討が始まりました。 れに対して我々市民の側は、「新化学物質NGOフォーラム」(当会も参加※)を発足させ、両委員会を毎回傍聴し、NGO代表委員と一緒に内容を検討して意見を出してきました。そして、12月11日、「化学物質管理のあり方に関する市民からの提案」を記者発表し、同日開かれた化学物質政策基本問題小委員会に提出しました。 同委員会は12月22日に第9回(最終回)を開催し、「中間取りまとめ」を決め、来年1月パブリックコメントにかける予定になっています。 その後、今後の化学物質の政策のあり方を決める具体的な検討のための委員会が発足し、2年間かけて結論を出す予定です。フォーラムは市民提案を実現するために、NGO代表委員をサポートしながら、活動していきます。 今号では、市民提案の概要を紹介します。(全文は当会のホームページ掲示板に掲載しています。) ※化学物質問題市民研究会、有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、WWFジャパン、全国労働安全衛生センター連絡会議、中皮腫・じん肺・アスベストセンター 《概要》 1.化学物質管理のあり方の基本的方向性に関する提案 現行の管理制度は、原則的には用途別・省庁別となっていますが、昨今のアスベスト問題が示しているように、縦割りの管理だけでは、どうしても施策の間隙が生じたり、情報や認識のギャップが生じることは避けられません。そもそも環境には省庁のような境界はないことを考えると、中枢的役割を担う組織を整備して、総合的な管理システムを確立することが不可欠です。 したがって、「化学物質安全庁」(仮称)を新たに設置するか、内閣府に「化学物質安全委員会」(仮称)を設置するとともに、「化学物質安全基本法」(仮称)を制定して、総合的管理システムを確立することを提案します。 そのために、ライフサイクル管理システムの構築や、現在の化審法を改正した既存化学物質を含む事前審査制度の確立、化学物質の製造、使用に関する予防原則及び代替原則の確立、市民参加の保障を求めます。 2.化学物質に関する情報収集、伝達のあり方についての提案 化学物質管理のためには、情報の活用が重要です。収集すべき情報は、国際的な調和の観点から、GHSやOECDガイドラインに準拠したものとすべきです。対象試験の範囲は、一律ではなく、生産量や用途に応じて異なることとします。川上メーカーと川下メーカーが分担し、収集した毒性データのほか、生産量や用途に関しても国に届出る制度を確立すべきです。 届出データのチェック・評価は国の第三者機関が行うべきであり、前述の「化学物質安全庁」又は「化学物質安全委員会」の中に、評価システムを設けるのが望ましい と考えます。また、届出データについては、原則公開とすべきです。特に、SAICMの包括的方針戦略WのBの第15項(c)にあるように、人の健康・安全と環境に係る化学物質情報については機密情報とみなすべきではありません。 3.GHSの本格導入に関する提案 国連のGHSに関する勧告の趣旨は、「全ての化学物質及び混合物を対象として、危険有害性(ハザード)に基づき分類し、表示すること」にあります。日本では、2006年12月からGHSが導入されますが、労働安全衛生の分野だけにとどまっています。法令が適用される物質数も制限されています。 国連勧告の趣旨に則り、労働安全衛生の分野だけでなく、環境・消費者分野も統合した総括的なGHS制度を確立し、広く表示及びMSDSの交付を義務づける必要があります。したがって、私たちは、すべての化学物質を対象とした一元的な「化学物質表示法」(仮称、略称GHS法)を制定することを提案します。 当面の対処として、現行の労働安全衛生法、化管法、毒劇法で制度化されているMSDS文書の作成に関し、GHSに対応したMSDS文書に作成し直すことと絵表示を早急に義務づけること及び、早急に家庭用品規制法等の関係法令を見直し、消費者保護の観点から、消費者製品への危険有害性分類と絵表示を義務づけることを提案します。 4.化学物質管理手法に関する提案 化学物質管理にあたっては、上市前の事前審査制度を整備することが重要です。上市後の管理については、総合的管理システムの下で、領域別・用途別に規制を実施する必要があります。管理手法は、規制的手法、枠組み規制手法、経済的手法、情報的手法、自主管理手法を適切に組み合わせて、効果的な管理を行う必要があります。管理システムの整備にあたっては、子どもなどのハイリスクグループや生態系に配慮することにも留意する必要があります。 5.リスク評価・リスク管理のあり方に関する提案 私たちは、化学物質管理にリスク・アプローチを採用する際、事業者のリスク評価の実施義務付けと国の第三者機関による評価、予防原則の適用、高懸念リスクに着目したリスク評価の実施、複合曝露、複合影響を勘案した評価・管理体制の構築、市民参加の保障などに留意する必要があります。 6.新たな被害に関する対する救済制度についての提案 近年、シックハウス・シックスクール症候群や化学物質過敏症など、従来の公害被害とは異なる新たな化学物質被害が発生し、増加傾向にあります。これらの被害については、未だその発症メカニズムや原因物質、治療方法についての知見が著しく不足しており、被害者の救済にはまったく手がつけられていません。そこで、私たちは、このような新たな被害に対する知見を確立するための調査・研究を積極的に推進することに加え、救済制度を整備することを提案します。 7.新たな課題への対処 ナノ技術や遺伝子組換え技術などの新技術についても、それらを利用した製品等が市場に出る前に、技術の安全性や社会経済的合理性について総合的な評価制度を市民参加の保障の下に確立する必要があります。 ナノ技術はあらゆる産業分野に革命を起こす新たな技術として期待されており、日本を含む世界各国はナノ技術の開発にしのぎを削っています。ナノ技術の発展を図ろうとするなら、ナノ技術が人の健康と環境に及ぼすリスクを適確に評価するとともに、その安全性を確保する必要があります。 安全性が確保されるまで、ナノ製品の製造、使用等を一時中止すべきです。 |