ピコ通信/第87号
発行日2005年11月25日
発行化学物質問題市民研究会
e-mailsyasuma@tc4.so-net.ne.jp
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 11月7日東京宣言賛同署名提出
    東京宣言の主旨にそった化学物質政策の実現を要望

  2. 9/29 環境ホルモン学会市民交流講演会
    奪われし未来のその後:公衆健康科学における革命/ジョン・ピーターソン・マイヤーズ博士

  3. 総務省 公害等調整委員会発表 日野市における農薬等による健康被害責任裁定申請事件
  4. 海外情報/カナダETCグループの報告:ナノが引き起こした水汚染
  5. 化学物質問題の動き(05.10.23〜05.11.24)
  6. お知らせ・編集後記


11月7日東京宣言賛同署名提出
東京宣言の主旨にそった化学物質政策の実現を要望



 化学物質問題市民研究会も参加する「化学物質汚染のない地球を求める東京宣言推進実行委員会」(注)は、11月7日、東京宣言賛同署名を内閣総理大臣あてに提出しました。署名簿とともに要望書(PDF)を提出し、東京宣言の内容にそった化学物質政策の実現を要求しました。
 同委員会では、本宣言に対するより多くの市民の賛同を集めるために2005年2月から10月15日まで賛同・署名キャンペーンを展開し、個人署名20,802筆、団体署名131団体と多くの方々の賛同・署名をいただきました。ご協力いただいた方々にお礼を申し上げます。
注:構成団体:有害化学物質削減ネットワーク、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、化学物質問題市民研究会、WWFジャパン、全国労働安全衛生センター連絡会議

環境省、経産省と意見交換
 当日は、同実行委員会から6名が参加し、署名簿と要望書を内閣府に提出するとともに、環境省環境保健部化学物質審査室(森下 哲室長)、経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室(辻 信一室長)と懇談しました。環境省との懇談内容の概要を紹介します(経産省は省略)。

森下 環境省としてはREACHについて勉強して情報を発信していこうということが来年度の重点課題の一つとなっている。色々な団体と意見交換をさせていただきたいと考えている。
 "ジャパンチャレンジプログラム"(注)に経産省、厚労省と一緒にしっかり取り組んでいきたい。2002年のヨハネスブルグ・サミット2020年までに既存化学物質を含めて化学物質全体にチェックをかけていくということが決まっている。現在、環境基本計画を見直し中であるが、その中で既存化学物質対策についての方向性を示したい。
 既存化学物質は2万点以上あるが、全部について動物実験が必要だとは考えていない。代替手法も含めてどういう手法でやっていくか、環境基本計画の見直しが終わった後、仕組み等について具体的に考えていきたい。

実行委員 ジャパンチャレンジで対象としている物質数は665だが、現在データのない約2万の物質についてはどうやって調べるのか。2020年までにデータを集めるだけなのか、評価はどうするのか。

森下 今は既存化学物質については、「点検」という言葉しかなくて、「点検」においては必ず動物実験をしなくてはいけない。ジャパンチャレンジは2008年に中間評価をすることになっている。その時に、優先度の高い物質以外についてはどうするか、合理的なチェック方法について考えなくてはならない。

実行委員 ジャパンチャレンジのパブリックコメントは2週間という短い募集期間だった。また、ジャパンチャレンジ推進検討委員会が発足して約2ヶ月で決めてしまった。あまりに拙速だったのではないか。もっと国民にきちんと知らせて意見を聞くべきだ。

森下 国は国民に情報をきちんと発信する努力をしなくてはいけないと思う。

実行委員 総合的な枠組みで化学物質の管理をするためには、化学物質基本法が必要ではないかと考えている。

森下 基本法については、NGOや政党から色々と提案がある。基本法を導入して何をしようとするのか、基本法による効果を見極める必要がある。基本法制定に力を注ぐよりも、実務の整備の方に注ぐほうがいいという考えもある。

実行委員 省庁間での取り組みにひじょうに差があるが、それを調整する場がない。例えば、家庭用品の有害物質規正法はほとんど動いていない。化審法の中で用途別規制ができればいいが、それはできないから、足並みが揃わない。もっと総合的な枠組みでの法律が必要だと思う。

実行委員 今検討中の環境基本計画は2025年を視野に入れているとすると、当然ナノについても考慮されるべきと思うが、ナノについては一言も触れられていない。ナノの安全性についてはどこが担当しているのか。

森下 環境省の中では、総合環境政策局環境研究技術室が担当している。

実行委員 環境省のREACHに関する調査・検討計画において「国際的な動向を踏まえて化学物質審査制度の検討に資する」とあるが、具体的な計画があるのか。

森下 化審法の次の改正が2011年に行われる予定になっているので(施行後5年後の見直し規定)、そこで生かしていきたい。

実行委員 今回提出した署名と要望書にあるように、5つの要望項目を化学物質政策の中で実現してほしいと要望している。そのひとつとして、今進められている環境基本計画の見直しの中に入れていただきたい。

森下 第3次環境基本計画は来年パブリックコメントにかけられるので、意見として出してほしい。いただいた要望項目は基本的には合致していると思うが、具体的にどう政策に反映するかという点では議論があると思う。
 REACHは今までの、基本的にはシロだけれど中にいくつか危ないものがあるからそれを規制するという化学物質規制の世界を逆転させて、まず基本的に危ないという所から出発してシロとなったものは使っていいという制度で、これから議論が必要だ。

注 官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラムのこと。既存化学物質(73年の化審法制定時に既に製造・輸入されていた物質)のうち、国内年間製造・輸入量が1,000トン以上の物について、国と産業界が連携して、OECDの高生産量化学物質安全性情報収集プログラムと協調しながら、2008年度までに安全性情報を収集・発信する。1,000トン未満の物質の取扱いについては今後の検討課題としている。(まとめ 安間節子)



9/29 環境ホルモン学会市民交流講演会
奪われし未来のその後:公衆健康科学における革命
ジョン・ピーターソン・マイヤーズ博士



 9月27日〜29日、江戸東京博物館において、環境ホルモン学会(日本内分泌撹乱化学物質学会)第8回研究発表会が開催されました。昨年までは、環境省主催の環境ホルモン国際シンポジウム(今年は12月4日〜6日、沖縄で開催)の前に同会場で開催されていたのですが、今年は別に開催されました。
 1日目はF.S.ボンサール(ミズーリ大学)さんの「ビスフェノールAの低用量影響−なぜ今もって論争になっているのか」、2日目はマチュー・ロングネッカー(NIH/NIHS)さんによる「内分泌撹乱のヒトの初期段階における研究」の特別講演がありました。そして、3日目には市民交流プログラムが設けられ、J.P.マイヤーズさんによる「奪われし未来のその後」の特別講演、森千里さん(千葉大)「未来世代の健康を守る」、坂部貢さん(北里大/北里研究所病院臨床環境医学センター)「低用量化学物質曝露症候群としてのシックハウス症候群・化学物質過敏症」の講演がありました。その中から、J.P.マイヤーズさんの講演の概要を報告します。(参考資料:環境ホルモン学会市民交流講演会資料)



 『奪われし未来』は1996年に出版され、翌年日本語訳が出ました。この本は、微量の汚染物質がホルモンの信号伝達に干渉し、それによって胎児の発達に影響を与えるという科学的発見についての、科学及び社会的な関心に焦点をあてたものです。
 私たちが『奪われし未来』を書いた時には、動物実験と野生動物の研究において強い証拠がありましたが、動物実験から予測されることが人間に起こっていることについての研究はわずかしかありませんでした。動物を用いた研究で見られた問題は重大であったため、各国政府は、この10年間に内分泌撹乱化学物質の研究に数百億円の研究費を投資しました。日本はこの研究の世界のリーダーでした。
 このような研究投資によって、内分泌擾乱物質の影響について、新しい科学的発見が、潮のように押し寄せていることを経験しています。世界中で、数千人の科学者が、大学や政府機関で、内分泌擾乱物質の研究に従事していますし、数千編の論文が発表されています。
 動物実験や培養細胞を用いた作用メカニズムの研究で、私達が『奪われし未来』で考証した科学的結果が確認されましたし、また10年前には確認されなかった追加的な懸念がさらに多く持ち上がってきました。ヒトの研究においては、かつて私たちが動物研究に基づいて行った予測と一致するパターンがみられています。
 これらの研究は、私たちが今、科学的な革命の中に身をおいていることを示しています。この革命には多くの要素があります。

  • ひじょうに微量でも、ある種の汚染物質はホルモンの信号伝達を変更する。それによって遺伝子の働く道(遺伝子発現)を変化させ、発達に悪影響を与え得る。
  • 内分泌撹乱と傷つきやすいホルモン信号の範囲は劇的に拡大してきている。注意深く調べた結果、現在ではエストロゲン、アンドロゲン、グルココルチコイド、甲状腺ホルモン、プロゲステロン、インシュリン、レチノイドによって制御されている信号伝達を変更してしまうものがあることが明らかとなった。
  • 動物や細胞を用いた研究では、用量応答曲線が単調ではなく、U字形、あるいは逆U字形である。このことは、低用量では高用量での影響とは性質の異なる影響を示すこと、また低用量影響は、高用量の結果からは予測できないことを示している。
  • 健康影響の関心は、当初は生殖と不妊にフォーカスがあてられていたが、今は劇的に広がっている。知能の発達、行動、病気への抵抗性、自己免疫疾患、体重制御(肥満)などが内分泌撹乱物質影響の研究対象となっている。
  • 今までは、1つの汚染物質は、比較的少数の作用を示す(例えばアスベストは中皮腫を引き起こす)と考えられていた。しかし、これは今や間違った仮定であることが明らかとなった。内分泌撹乱物質は多数の遺伝子の発現に影響を与えるので、これらの遺伝子と関わる病気の原因物質であると考えることもできる。例えば、ビスフェノールAの研究では、200以上の遺伝子の発現が変更されてしまうことが分かった。これらの遺伝子のいくつかは、健康問題(不妊、行動異常、記憶の問題、呆け、肥満など)と関連することが明らかとなっている。
  • 胎児期は最も傷つきやすい発達時期であり、胎児へのインパクトは、一生影響を残すことがある。そして、その影響は大人になるまで見えてこないことがある。"胎児期に起源をもつ大人の病気"と呼ばれる新しい研究領域が広がってきている。精巣ガンはその一例で、子宮の中でのホルモンバランスの崩れが、胎児の精巣内の細胞の異常な発達を引き起こし、このような異常細胞は大人になってからガン化する。
  • 精巣ガンは、"精巣劣化症候群"の一部であることを示す証拠が積みあがってきている。この症候群の他の例は、精子数の減少であり、停留精巣(睾丸)である。動物実験で、症候群と類似の影響を示すことができる。即ちフタル酸エステルと呼ばれるプラスチック可塑剤を胎児期のオスのネズミに与えると、テストステロン(男性ホルモン)合成を抑制し、胎児の精巣の降下に関連している遺伝子に干渉する。最近の疫学研究で、男の赤ちやんで、子宮内でのフタル酸エステルの曝露との関連づけを示すものがある。
  • 環境ホルモンの混合物は、どこにでもあり、単一の物質よりもより大きな影響を与えうる。いくつかの注意深くデザインされた実験研究で、単独では影響が見られないが、複合 することにより大きな影響を引き起こすことがあることが示されている。これらの実験では、最大12の汚染物質を同時に与えて行われてきたが、人が同時に数百種の物質に曝露されているとして、更に詳しく調べられはじめた。例えば、人の臍帯血の研究では、調べられた413種の汚染物質のうち、287種の物質が見出されている。
 実験室研究が意味する最も重要なことの一つは、ヒトの環境ホルモン研究では、その影響を検出する能力を弱める方法で調査されていたのではないかということである。上記にまとめられた実験科学の指摘を組み込んだ疫学研究は少ない。特に、大人の病気に対する胎児期曝露の影響、多くの化学物質を同時に受けること、高濃度での影響と低濃度での影響が異なることを考慮した疫学研究はない。また、人と動物では曝露に対する感受性が異なること、また同じ集団の中でも異なることを無視しており、疫学的検出力を更に弱める失敗となっている。
 このようなこと及びその他の研究デザインの失敗により、疫学的研究論文は、"偽陰性"(誤った否定)に満ちており、危険なものを危険ではないと結論づけている可能性が非常に高い。規制にはヒトの研究からの明確な証拠があるべきということに、こだわることは国民を危険に放置することになりがちである。
 何人かの疫学者はこの挑戦に向かっており、動物科学の有利さを研究のデザインに入れ込もうとしている。これらの新しい研究では、環境ホルモンが人々に強い影響を与えていることを示し始めている。
 このような研究で浮上してきた混乱パターンは、研究資金源が研究結果と関連していることである。企業からの資金の研究は、政府資金の研究に比べて、悪影響を報告することが少ない。このパターンは化学工業だけでなく経済セクターの広い範囲の科学的研究にみられる。

表 低用量ビスフェノールA研究における
資金源と結果(2005.8 ボンサール、ヒューズ)
研究資金源 有害影響
あり
有害影響
なし
合計件数
政府 110(92%) 10(8%) 120
化学企業 0(0%) 11(100%) 11
合計件数 110 21 131


総務省 公害等調整委員会発表
日野市における農薬等による健康被害責任裁定申請事件



 近隣からの農薬や悪臭、化学物質による被害の相談を当会でも度々受けています。これらの解決は現行法ではひじょうに難しいのですが、この度、公害等調整委員会で参考になる調停結果が公表されましたので、紹介します。

1 事件の概要
 平成17年3月22日、申請人(東京都の住民)から、申請人の住居に隣接する畑及びアート敷地内に除草剤及び殺虫剤を散布する被申請人を相手方として、責任裁定を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。申請人は、被申請人の散布する除草剤及び殺虫剤により、喘息の悪化、肺気腫、難聴等の症状が出始め、慢性炎症性脱髄性多発神経炎になり、多額の医療費の出費を余儀なくされるとともに、現住所に暮らすことも困難な状況にある。これらを理由として、被申請人らそれぞれに対し、2、000万円、1、000万円及び500万円(総額3、500万円)の損害賠償を求めるというものである。

2 事件の処理経過
 公害等調整委員会は、本申請を受け付けた後、直ちに裁定委員会を設け、2回の審問期日を開催して手続を進めた結果、本件については当事者間の合意による解決が相当であると判断し、平成17年11月2日、第3回審問期日において、公害紛争処理法第42条の24第1項の規定により職権で調停に付し、裁定委員会が自ら処理することとした(平成17年(調)第2号事件)。
 同日開催した第1回調停期日において、裁定委員会から調停案を提示したところ、当事者双方はこれを受諾して調停が成立し、責任裁定申請については取り下げられたものとみなされ、本事件は終結した。

調停条項
  1. 被申請人B、C及びD(以下「被申請人ら」という。)は、調停成立の日以後、○○市○丁目○番○の土地(以下「本件土地」という。)で、原則として農薬及び除草剤(以下「農薬等」という。)を使用しない。

  2. 上記1.の原則の例外となるのは、周辺地域全体における病害虫の大量発生により特に必要がある場合や市等の公的機関から病害虫の駆除等のため農薬等の使用の指導があった場合等の已むを得ない事情がある場合とする。単に病害虫の駆除や除草に手間や費用がかかる等の個人的な事情による場合は、この例外に当たらないものとする。

  3. 上記2.の例外的な事情がある場合には、被申請人らは、農薬等の使用開始の1週間前までに、例外的な事情の存在についての説明、使用しようとする農薬等の名称、成分、使用量、使用日時、使用方法等を記載した農薬等の使用計画を文書で申請人Aに通知しなければならない。

  4. 申請人が、本件土地で調停成立の日以後に被申請人らが上記2.の例外的な事情がないにもかかわらず農薬等の使用を行ったと認めるときは、申請人は、事前に被申請人らに通知した上で、申請人の負担において、本件土地の土壌及び作物から必要最小限度の検査試料を得て農薬等の使用の有無に関する検査を行うことができ、被申請人らは、これに協力するものとする。

  5. 申請人は、本件責任裁定申請の日(平成17年3月22日)より前に被申請人らの行った農薬等の使用に関して、損害賠償請求を行わない。

  6. 上記1.から4.までの事項について、申請人及び被申請人らの間に争いが生じた場合は、当事者は、公害等調整委員会に対し、義務履行勧告手続において、必要な調査を行い、当該事項の履行に関する勧告を行うよう申し出ることができる。

  7. 申請人及び被申請人らは、今後、相互に協力して良好な近隣関係を維持するものとする。

公害紛争処理制度とは?
(公害等調整委員会ホームページから)
http://www.soumu.go.jp/kouchoi/index.html

 公害問題や環境問題で困っている場合に、公正・中立な第三者機関である公害等調整委員会や都道府県の公害審査会が被害者と加害者との間に入り、あっせん、調停、仲裁、裁定という手続で、こうした紛争を解決する制度です。

1 あっせん
 あっせん委員が紛争の当事者間に入って、交渉が円滑に行われるよう仲介することにより、当事者間の自主的解決を援助、促進するための手続です。
 あっせんの申請がなされると、3人以内のあっせん委員が指名されます。あっせん委員は、当事者双方の主張の要点を確かめ、当事者間の話合いが円滑に進むようにその間を仲介し、当事者間に合意が成立するように努めます。あっせんの結果、当事者間に合意が成立すると、民法上の和解契約の効力を有することになります。

2 調停
 調停委員会が紛争の当事者を仲介し、双方の互譲による合意に基づいて紛争の解決を図る手続です。あっせんと類似していますが、調停委員会が積極的に当事者間に介入し、手続をリードしていく点が異なります。
 調停の申請がなされると、3人の調停委員で構成される調停委員会が設けられ、手続を進めていきます。調停委員会は調停期日を開催して、当事者から意見を聴取し、資料の提出を求め、また、現地調査を行う等により、事実関係を明らかにして当事者間の話合いを進めます。さらに、必要に応じて調停案の提示や、調停案の受諾の勧告を行います。当事者間に合意が成立すると、民法上の和解契約としての効力を有することになります。

3 仲裁
 紛争の当事者双方が裁判所において裁判を受ける権利を放棄し、紛争の解決を仲裁委員会にゆだね、その判断に従うことを約束(仲裁契約)することによって紛争の解決を図る手続です。
 仲裁の申請がなされると、当事者の合意に基づき選定された3人の仲裁委員が仲裁委員会を構成し、手続を進めます。仲裁委員会は、当事者を審尋し、必要があると認めるときは事実の調査等を行い、仲裁判断を行います。仲裁判断は、当事者間において確定判決と同一の効力を有します。

4 裁定
 当事者間の紛争について裁定委員会が所定の手続により、法律的判断を下すことによって、紛争の解決を図る手続です。裁定には、責任裁定と原因裁定の2種類があり、いずれも公害等調整委員会のみが行う手続です。

(1) 責任裁定
 裁定委員会が損害賠償責任の存否及び賠償すべき損害額を判断することにより、紛争を解決する手続です。責任裁定の対象となる紛争は、公害に係る被害についての損害賠償に関する紛争に限られており、また、申請を行うことができるのは、被害者(損害賠償の請求者)だけです。
 責任裁定の申請がなされると、3人又は5人の裁定委員で構成される裁定委員会が設けられ、手続を進めます。

(2) 原因裁定
 原因裁定は、裁定委員会が加害行為と被害の発生との間の因果関係の存否について判断する手続です。原因裁定は当事者の権利義務関係について判断するものではありませんが、公害紛争においては、当事者間で因果関係が最も大きな争点となる場合が多くみられ、当事者は、原因裁定によって明らかにされた因果関係についての判断を基礎として、紛争の実情に応じて適当な方法(直接交渉、あっせん、調停、仲裁、責任裁定、訴訟等)を選択し、紛争の解決を図ることができます。

相談窓口:公害等調整委員会
〒100-0013東京都千代田区霞ヶ関3-1-1中央合同庁舎第4号館10階
TEL:03-3581-9959 FAX:03-3581-9488
e-mail: kouchoi@soumu.go.jp

現在係属している公害事件のうち、化学物質等関連の事件
  • 津市における化学物質による健康被害原因裁定申請事件: 申請人らに生じている健康被害は、被申請人会社の行った申請人宅の補修工事による、との原因裁定を求めた事件(平成17年6月14日受付)
  • 大和郡山市における化学物質による健康被害原因裁定申請事件: 申請人に生じている健康被害は、被申請人会社が有害化学物質を含む集成材を販売したことによる、との原因裁定を求めた事件(平成17年6月8日受付)
  • 高崎市における低周波音被害原因裁定申請事件: 申請人の健康被害と室外機等からの低周波音との因果関係の判断を求めた事件。(平成14年10月10日受付)

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