ピコ通信/第87号
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11月7日東京宣言賛同署名提出
東京宣言の主旨にそった化学物質政策の実現を要望 化学物質問題市民研究会も参加する「化学物質汚染のない地球を求める東京宣言推進実行委員会」(注)は、11月7日、東京宣言賛同署名を内閣総理大臣あてに提出しました。署名簿とともに要望書(PDF)を提出し、東京宣言の内容にそった化学物質政策の実現を要求しました。 同委員会では、本宣言に対するより多くの市民の賛同を集めるために2005年2月から10月15日まで賛同・署名キャンペーンを展開し、個人署名20,802筆、団体署名131団体と多くの方々の賛同・署名をいただきました。ご協力いただいた方々にお礼を申し上げます。 注:構成団体:有害化学物質削減ネットワーク、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、化学物質問題市民研究会、WWFジャパン、全国労働安全衛生センター連絡会議 環境省、経産省と意見交換 当日は、同実行委員会から6名が参加し、署名簿と要望書を内閣府に提出するとともに、環境省環境保健部化学物質審査室(森下 哲室長)、経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室(辻 信一室長)と懇談しました。環境省との懇談内容の概要を紹介します(経産省は省略)。 森下 環境省としてはREACHについて勉強して情報を発信していこうということが来年度の重点課題の一つとなっている。色々な団体と意見交換をさせていただきたいと考えている。 "ジャパンチャレンジプログラム"(注)に経産省、厚労省と一緒にしっかり取り組んでいきたい。2002年のヨハネスブルグ・サミット2020年までに既存化学物質を含めて化学物質全体にチェックをかけていくということが決まっている。現在、環境基本計画を見直し中であるが、その中で既存化学物質対策についての方向性を示したい。 既存化学物質は2万点以上あるが、全部について動物実験が必要だとは考えていない。代替手法も含めてどういう手法でやっていくか、環境基本計画の見直しが終わった後、仕組み等について具体的に考えていきたい。 実行委員 ジャパンチャレンジで対象としている物質数は665だが、現在データのない約2万の物質についてはどうやって調べるのか。2020年までにデータを集めるだけなのか、評価はどうするのか。 森下 今は既存化学物質については、「点検」という言葉しかなくて、「点検」においては必ず動物実験をしなくてはいけない。ジャパンチャレンジは2008年に中間評価をすることになっている。その時に、優先度の高い物質以外についてはどうするか、合理的なチェック方法について考えなくてはならない。 実行委員 ジャパンチャレンジのパブリックコメントは2週間という短い募集期間だった。また、ジャパンチャレンジ推進検討委員会が発足して約2ヶ月で決めてしまった。あまりに拙速だったのではないか。もっと国民にきちんと知らせて意見を聞くべきだ。 森下 国は国民に情報をきちんと発信する努力をしなくてはいけないと思う。 実行委員 総合的な枠組みで化学物質の管理をするためには、化学物質基本法が必要ではないかと考えている。 森下 基本法については、NGOや政党から色々と提案がある。基本法を導入して何をしようとするのか、基本法による効果を見極める必要がある。基本法制定に力を注ぐよりも、実務の整備の方に注ぐほうがいいという考えもある。 実行委員 省庁間での取り組みにひじょうに差があるが、それを調整する場がない。例えば、家庭用品の有害物質規正法はほとんど動いていない。化審法の中で用途別規制ができればいいが、それはできないから、足並みが揃わない。もっと総合的な枠組みでの法律が必要だと思う。 実行委員 今検討中の環境基本計画は2025年を視野に入れているとすると、当然ナノについても考慮されるべきと思うが、ナノについては一言も触れられていない。ナノの安全性についてはどこが担当しているのか。 森下 環境省の中では、総合環境政策局環境研究技術室が担当している。 実行委員 環境省のREACHに関する調査・検討計画において「国際的な動向を踏まえて化学物質審査制度の検討に資する」とあるが、具体的な計画があるのか。 森下 化審法の次の改正が2011年に行われる予定になっているので(施行後5年後の見直し規定)、そこで生かしていきたい。 実行委員 今回提出した署名と要望書にあるように、5つの要望項目を化学物質政策の中で実現してほしいと要望している。そのひとつとして、今進められている環境基本計画の見直しの中に入れていただきたい。 森下 第3次環境基本計画は来年パブリックコメントにかけられるので、意見として出してほしい。いただいた要望項目は基本的には合致していると思うが、具体的にどう政策に反映するかという点では議論があると思う。 REACHは今までの、基本的にはシロだけれど中にいくつか危ないものがあるからそれを規制するという化学物質規制の世界を逆転させて、まず基本的に危ないという所から出発してシロとなったものは使っていいという制度で、これから議論が必要だ。 注 官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラムのこと。既存化学物質(73年の化審法制定時に既に製造・輸入されていた物質)のうち、国内年間製造・輸入量が1,000トン以上の物について、国と産業界が連携して、OECDの高生産量化学物質安全性情報収集プログラムと協調しながら、2008年度までに安全性情報を収集・発信する。1,000トン未満の物質の取扱いについては今後の検討課題としている。(まとめ 安間節子) |
総務省 公害等調整委員会発表
日野市における農薬等による健康被害責任裁定申請事件 近隣からの農薬や悪臭、化学物質による被害の相談を当会でも度々受けています。これらの解決は現行法ではひじょうに難しいのですが、この度、公害等調整委員会で参考になる調停結果が公表されましたので、紹介します。 1 事件の概要 平成17年3月22日、申請人(東京都の住民)から、申請人の住居に隣接する畑及びアート敷地内に除草剤及び殺虫剤を散布する被申請人を相手方として、責任裁定を求める申請があった。 申請の内容は以下のとおりである。申請人は、被申請人の散布する除草剤及び殺虫剤により、喘息の悪化、肺気腫、難聴等の症状が出始め、慢性炎症性脱髄性多発神経炎になり、多額の医療費の出費を余儀なくされるとともに、現住所に暮らすことも困難な状況にある。これらを理由として、被申請人らそれぞれに対し、2、000万円、1、000万円及び500万円(総額3、500万円)の損害賠償を求めるというものである。 2 事件の処理経過 公害等調整委員会は、本申請を受け付けた後、直ちに裁定委員会を設け、2回の審問期日を開催して手続を進めた結果、本件については当事者間の合意による解決が相当であると判断し、平成17年11月2日、第3回審問期日において、公害紛争処理法第42条の24第1項の規定により職権で調停に付し、裁定委員会が自ら処理することとした(平成17年(調)第2号事件)。 同日開催した第1回調停期日において、裁定委員会から調停案を提示したところ、当事者双方はこれを受諾して調停が成立し、責任裁定申請については取り下げられたものとみなされ、本事件は終結した。 調停条項
公害紛争処理制度とは? (公害等調整委員会ホームページから) http://www.soumu.go.jp/kouchoi/index.html 公害問題や環境問題で困っている場合に、公正・中立な第三者機関である公害等調整委員会や都道府県の公害審査会が被害者と加害者との間に入り、あっせん、調停、仲裁、裁定という手続で、こうした紛争を解決する制度です。 1 あっせん あっせん委員が紛争の当事者間に入って、交渉が円滑に行われるよう仲介することにより、当事者間の自主的解決を援助、促進するための手続です。 あっせんの申請がなされると、3人以内のあっせん委員が指名されます。あっせん委員は、当事者双方の主張の要点を確かめ、当事者間の話合いが円滑に進むようにその間を仲介し、当事者間に合意が成立するように努めます。あっせんの結果、当事者間に合意が成立すると、民法上の和解契約の効力を有することになります。 2 調停 調停委員会が紛争の当事者を仲介し、双方の互譲による合意に基づいて紛争の解決を図る手続です。あっせんと類似していますが、調停委員会が積極的に当事者間に介入し、手続をリードしていく点が異なります。 調停の申請がなされると、3人の調停委員で構成される調停委員会が設けられ、手続を進めていきます。調停委員会は調停期日を開催して、当事者から意見を聴取し、資料の提出を求め、また、現地調査を行う等により、事実関係を明らかにして当事者間の話合いを進めます。さらに、必要に応じて調停案の提示や、調停案の受諾の勧告を行います。当事者間に合意が成立すると、民法上の和解契約としての効力を有することになります。 3 仲裁 紛争の当事者双方が裁判所において裁判を受ける権利を放棄し、紛争の解決を仲裁委員会にゆだね、その判断に従うことを約束(仲裁契約)することによって紛争の解決を図る手続です。 仲裁の申請がなされると、当事者の合意に基づき選定された3人の仲裁委員が仲裁委員会を構成し、手続を進めます。仲裁委員会は、当事者を審尋し、必要があると認めるときは事実の調査等を行い、仲裁判断を行います。仲裁判断は、当事者間において確定判決と同一の効力を有します。 4 裁定 当事者間の紛争について裁定委員会が所定の手続により、法律的判断を下すことによって、紛争の解決を図る手続です。裁定には、責任裁定と原因裁定の2種類があり、いずれも公害等調整委員会のみが行う手続です。 (1) 責任裁定 裁定委員会が損害賠償責任の存否及び賠償すべき損害額を判断することにより、紛争を解決する手続です。責任裁定の対象となる紛争は、公害に係る被害についての損害賠償に関する紛争に限られており、また、申請を行うことができるのは、被害者(損害賠償の請求者)だけです。 責任裁定の申請がなされると、3人又は5人の裁定委員で構成される裁定委員会が設けられ、手続を進めます。 (2) 原因裁定 原因裁定は、裁定委員会が加害行為と被害の発生との間の因果関係の存否について判断する手続です。原因裁定は当事者の権利義務関係について判断するものではありませんが、公害紛争においては、当事者間で因果関係が最も大きな争点となる場合が多くみられ、当事者は、原因裁定によって明らかにされた因果関係についての判断を基礎として、紛争の実情に応じて適当な方法(直接交渉、あっせん、調停、仲裁、責任裁定、訴訟等)を選択し、紛争の解決を図ることができます。 相談窓口:公害等調整委員会 〒100-0013東京都千代田区霞ヶ関3-1-1中央合同庁舎第4号館10階 TEL:03-3581-9959 FAX:03-3581-9488 e-mail: kouchoi@soumu.go.jp 現在係属している公害事件のうち、化学物質等関連の事件
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