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平成14年7月15日 問い合わせ先
環境局 環境改善部有害化学物質対策課企画係
電話 03−5388−3502
化学物質の子供ガイドライン(鉛ガイドライン塗料編)
東京都では、今年度の重要施策として、有害性が疑われる化学物質による子どもへの
健康影響を未然に防止するためのガイドラインの策定に取り組んでいます。
ガイドラインは、都民や化学物質を取り扱う関係者の方々に活用していただくもので、
代替品への転換や使用量の削減に向けた対策などを内容としています。
その具体化のため、専門家による将来リスク低減検討会を設置し、子どもへの神経毒
性が指摘されている鉛について検討を行い、このたび「鉛ガイドライン(塗料編)」を
策定しましたので、下記のとおりお知らせします。
今後、他の化学物質についても逐次検討し、ガイドラインを策定していく予定です。
記
鉛は、神経に影響を及ぼす有害な化学物質といわれており、特に成長期の子どもにと
って注意すべき化学物質です。子どもの鉛の曝露量を削減するには、子どもが多く利用
する施設等において、鉛を含む製品をできるだけ使用しないことが大切です。
家電製品や自動車などについては、鉛フリー化(製品中の鉛の量をできるだけ少なく
すること)が国際的にも進んでいるところですが、建物の錆止め塗料や公園や小学校等
で使用されている遊具の黄色やオレンジ系の上塗り塗料には鉛が含まれているものがあ
り、これらの塗料を鉛フリーに切り替えるなど、新たな対策が必要となってきています。
〔鉛ガイドライン(塗料編)の概要〕
子どもが多く利用する施設や遊具の塗装には、鉛フリーの塗料を使ってください
都は鉛フリー塗料の積極的な利用をみなさんにお願いしていきます。
・製造事業者は鉛フリー製品であることを表示し、鉛フリー塗料の使用拡大を図って
ください。
・子どもが多く利用する施設の管理者は、遊具や建築物の塗料には鉛フリー塗料を使
用してください。
・子どもが多く利用する施設の設計者は、塗料には鉛フリー塗料を指定してください。
塗装面を良好に保全してください
既に使用されている塗料については、塗膜の剥離がないよう、保全の徹底をお願いし
ていきます。
・既に塗られている塗料の成分や鉛の含有量を確認し、必要な場合は塗り替えてくだ
さい。
塗替えをする時は、飛散防止対策を行ってください
塗替えをする時は、鉛フリーの塗料を使うとともに、工事の実施にあたっては飛散防
止などの対策をお願いしていきます。
・既に塗られている塗料の成分や鉛の含有量を確認してください。
・シート防護や板張り防護などの飛散防止対策を行ってください。
〔資料〕
化学物質の子どもガイドライン
−鉛ガイドライン塗料編−
こどもたちの“みらい”を守るために
東京都環境局
子どもたちの“みらい”のために、適正な化学物質の使用に心がけてください。
はじめに
1 子どもと化学物質
今日の社会では、極めて多くの化学物質が使用されており、国内では、約5万種の化
学物質が製品として流通しているといわれています。これらの化学物質は、私たちの豊
かな生活や経済活動を支えていますが、一方では環境汚染をもたらし、様々な健康影響
が懸念されているところです。
子どもは大人よりも、体重あたりの呼吸量や飲食量が多いことや、子どもはものを口
に運ぶ行動があることなどから、化学物質がこどもへ与える影響は、大人の場合より大
きいと言われています。近年、子どもたちに多く見られている、アトピーなどのアレル
ギーや喘息の発症等にも化学物質の関与が疑われています。したがって、子どもを化学
物質から守ることは、健康で安心できる生活を送るため、ひいては人類の存続のために
も極めて重要な課題と考えています。
これまで、化学物質対策として、排出基準などを設定する際に、有害な化学物質に関
するリスク評価や健康影響調査が行われてきましたが、その調査の多くは、大人を対象
にしたもので、独自の曝露経路や健康影響があると考えられている子どもについて、必
ずしも十分に配慮されたものではありませんでした。
さらに、欧米諸国では、子どもに着目した化学物質対策が進められてきており、アメ
リカ合衆国やEU(欧州連合)では、実際の対策が為されているところです。しかし、わ
が国では、子供のみを対象にした化学物質の曝露調査や対策などは、実施されていない
のが現状であり、東京都は、化学物質の曝露による子どもへの影響を低減するための独
自のガイドラインを作りました。
2 ガイドライン策定の考え方
化学物質の曝露による子どもへの影響を低減するためには、子どもに対する化学物質
の曝露を抑制していく必要があります。「化学物質の子どもガイドライン」は、都民、
事業者及び子どもが多く利用する施設の管理者が、子どもに対する化学物質の暴露の抑
制に向け自主的に取り組むべき具体的方策を示したものです。
(1)ガイドラインで対象とした物質
ガイドラインの策定に当たっては、予防原則の考え方を基本に、子どもの特徴を考
え、子どもへの有害性が疑われる化学物質を選定しました。
選定にはWHO(世界保健機構)などの国際機関により子どもへの影響が指摘されてい
るものや、諸外国で既に子どもへの影響を考慮した対策が講じられているものなどか
ら、優先的に選んでいます。
また、都内の子どもが多く利用する施設等での化学物質の使用状況や子どもの生活
様式を考慮した実態調査や曝露調査の結果を評価し、子どもの化学物質からの曝露を
低減するための方策を検討し、ガイドラインに盛り込みました。
(2)ガイドラインの活用
東京都は、ガイドラインを事業者や都民及び関係者に周知し、以下のような活用を
図るよう働きかけていきます。
ア 製造事業者のみなさんは、代替品の開発や消費者への使用上の注意を促すため
の適切な表示を行いましょう。
イ 都民のみなさんは、子どもが健康で安心した生活が送れるよう、化学物質を含
む製品を適切に使用しましょう。
ウ 子どもが多く利用する施設の設置者、管理者等のみなさんは、施設の設置や維
持管理に伴い使用する化学物質の選択に注意してください。また、より安全な代
替物質への転換を図り、代替物質がない場合は、使用量を抑制しましょう。
エ 工場、作業場における化学物質の使用者のみなさんは、より安全な代替物質へ
の転換、環境への排出の低減、使用の抑制を行いましょう。
鉛ガイドライン(塗料編)
1 生活の中の鉛
鉛は、神経に影響を及ぼす有害な化学物質といわれており、特に成長期の子どもにと
って注意すべき化学物質で、子どもの環境保健に関する8カ国の環境指導者の宣言書(1
997年マイアミ宣言)では、対策が必要な化学物質の一つに挙げられています。さらに、
わが国における子どもの鉛への暴露量を食品、大気、水質、土壌などの含有量等から計
算すると、FAO(世界食糧機構)/WHO(世界保健機構)が設定した暫定週間耐容摂取量
をこえる恐れもあります。
子どもの生活空間で使用されるもので、鉛が含まれている可能性があるものを表に示
しました。鉛蓄電池はリサイクルが確立され、家電製品や自動車などでの鉛フリー化(
製品中の鉛の量をできるだけ少なくすること)は、国際的にも対策が進んでいるところ
です。
また、鉛筆や絵の具については、JIS(日本工業規格)で健康影響を考慮した有害
成分の重金属の基準として、含有量の上限が決まっています。
+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+
| 鉛が使用されている製品 | 環境対策 |
+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+
| 塗料(黄色等)、防錆塗料 | なし |
+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+
| 電化製品のはんだ | EU等の規制 |
+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+
| 鉛蓄電池 | リサイクルの確立 |
+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+
| 鉛筆、絵の具 | JISの基準 |
+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+
しかし、錆止め塗料のJIS規格には、性能を保証するための下限値は定められてい
ますが、健康影響を考慮した基準ではなく、上塗り塗料については鉛に関する規定はあ
りません。
建物などの下地塗りで使われている赤色の錆止め塗料や、学校、公園のブランコ、鉄
棒その他の遊具に使用されている黄色やオレンジ系の上塗り塗料では、比較的多くの鉛
化合物が含まれているものがあります。
子どもの鉛への暴露の経路として最も重要なものは、土壌やほこりです。塗膜は何年
かたつと劣化し、塗膜中に含まれる鉛化合物が剥離により地面や床に落ち、それが土壌
やほこりの中に入り込み、子どもが手などに付着したものを舐めたりして、子どもの体
内に取り込まれる恐れがあります。
従って、これらの塗料を鉛フリーに切り替えるなど、用途に適した適切な塗料の選択
が必要です。このため、含鉛塗料について、ガイドラインを策定し、その対策を行って
いきます。
2 塗料中の鉛対策
<製造事業者のみなさんは鉛フリー塗料のPRと製品表示をしてください>
塗料には、建築、構造物、船舶、自動車、機械など、事業用として使われるものと、
家庭用として販売されるものがありますが、国内の塗料の出荷量は、家庭用としては3
%弱(平成11年度)程度で、ほとんどが事業用です。また、鉛化合物は、家庭用塗料に
は含まれていませんが、建物等の構造部材に使用される下塗りの錆止め塗料(赤色)や
黄色やオレンジ色の上塗り塗料に含まれていることがあります。
日本塗料工業会では、米国の規制に合わせて、建物等の構造部材に使用される下塗り
の錆止め塗料として、含鉛塗料と同等以上の性能を有するリン酸塩系錆止め塗料の自主
規格JPMS 26を定め、塗膜中の鉛の含有量を0.06%以下に設定し、鉛フリー塗料のJIS
化も検討されています。さらに、上塗り塗料も鉛フリー塗料が開発されています。
従って、製造者はこのような製品を供給していることを積極的にPRするとともに、鉛フ
リー製品であることを表示し、鉛フリー塗料の使用拡大を図る必要があります。
<子どもが多く利用する施設の管理者のみなさんは、鉛フリー塗料を使ってください>
子どもが多く利用する施設においては、遊具や建築物の上塗り塗料及び下塗り錆止め
塗料等には鉛フリー塗料を選定してください。
特に、小学校、保育園、幼稚園、公園、児童遊園等の子どもが長時間滞在する施設で
は鉛フリー塗料を選定してください。
<子どもが多く利用する施設の設計者は、鉛フリー塗料を指定してください>
子どもの多く利用する施設を設計する事業者のみなさんは、上塗り塗料や下塗りの錆
止め塗料には、鉛フリー塗料を指定するようにしてください。
<日常の対策では、塗膜の剥離に注意してください>
子どもが多く利用する施設では、塗装塗膜の剥離による周辺環境の鉛汚染を防ぐため、
塗装面の良好な保全が必要です。塗装面については、塗膜の剥離がないことを確認して
ください。子どもが使用する遊具については、子どもが手で触れる可能性があります。
塗膜の剥離が認められる場合には、塗られた塗料の商品名や成分を施行業者に問い合
わせして、鉛の含有量を確認してください。塗膜の鉛含有量が高いとき(0.06%以上)に
は、塗り替える等の対策を行ってください。なお、含有量がわからない場合は、使用さ
れている塗料の鉛の含有量を分析することも必要です。分析の実施などについては、下
記の機関にお問い合わせください。
含鉛塗料の種類や鉛の分析などの情報は、下記までお問い合わせください。
【塗料中の鉛の分析に関しては】
日本塗料検査協会 電話 0466−27−1121
【塗料一般に関しては】
日本塗料工業会 電話 03−3443−2011
【鉛の毒性に関しては】
環境局環境改善部有害化学物質対策課 電話 03−5388−3503
3 塗替えをする時は、飛散防止対策を行ってください
施設や遊具の塗替え時には、以下の事項を守って、作業時の周辺汚染の防止に心がけ
てください。なお、ここで言う塗替えとは、ケレン作業を含む全面塗装から、ケレン作
業を伴わない部分的な補修塗装まで、既存の施設に対する補修塗装の全てを指します。
<塗られている塗料の確認をしてください>
日常の対策と同じように、塗られた塗料の商品名や成分を施行業者に問い合わせして、
鉛の含有量を確認してください。なお、含有量がわからない場合は、使用されている塗
料の鉛の含有量を分析することも必要です。
<飛散防止対策を盛り込んだ作業計画を立ててください>
関連法規(労働安全衛生法:鉛中毒予防規則)や「鋼道路橋塗装便覧(日本道路協会
)」等の関係マニュアルを参考に、塗膜片の飛散や落下による周辺への汚染防止対策を
盛り込んだ作業計画を策定してください。ケレン作業は、シートを張るなどなるべく塗
膜片が飛散しない方法を選び、ブレスト工法等を採用する場合は、板張り防護等の対策
を行ってください。防護設備には以下のようなものがあります。
1)簡易なケレン作業
図に示したように足場や床面にシートを張り、周辺への塗膜の飛散を防ぎます。
2)ブラスト工法等によるケレン作業
より気密性の高い板張り防護を行ってください。その際は、換気設備を設置する等、
周辺環境の汚染防止と良好な作業環境の維持に努めてください。
<子どもに注意した作業を行ってください>
また、作業場所には子どもを近づけないか、子どもがいない時期を選んで作業を
行ってください。
補足説明
鉛中毒予防
鉛業務における鉛中毒を予防するために制定された規則で、鉛業務を行う設備、換気装
置の構造等、日常の管理、作業環境測定、健康診断等の規定が定められている。鉛業務の
1つとして「鉛ライニングを施し、または含鉛塗料を塗布した物の破砕、溶接、溶断、切
断、加熱して行う鋲打ち、加熱、圧延または含鉛塗料のかき落としの業務」が定められて
おり、作業主任者の選任、作業環境測定、健康診断、保護具等の使用等が義務づけられて
いる。
ケレン作業
ケレン作業は素地調整作業とも言われ、鋼材面を研磨し、錆や塗膜を除去する作業であ
る。動力や圧縮空気による工具を使うブラスト工法や手工具によって実施される。
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