第164回国会 参議院予算委員会 第11号
平成十八年三月十四日(火曜日)
加藤修一議員(公明党)の有害化学物質問題質疑


化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載2006年4月5日

○委員長(小野清子君) 次に、加藤修一君の質疑を行います。加藤修一君。

○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。私は、環境問題、特に有害化学物質問題を取り上げたいと思います。
 ストックホルム条約、この条約は、世界的に有害な化学物質、その拡散毒性あるいは難分解性、生物蓄積性等を持っている、特に早急な対応が必要であると考えられるダーティダズン、すなわち十二の残留性有機汚染物質、これによります地球環境汚染の防止のために締結された条約であるわけでございます。
 言うまでもなく、この条約が有害化学物質を十分フォローするものではありませんが、今や化学物質の地球的規模の拡散は刻一刻と厳しさを増していると。治安の悪化からいわゆる子供たちをどう守るかが大きな課題でありますが、同様に、このごく微量の有害な化学物質の脅威からいかにお子さんたち等を守るかと。子供環境のいわゆる増大するリスクをいかに削減するか、これは優先すべき重要な課題であると、このように考えてございます。
 私、今手元に「胎児の危機」という本を持っておりますが、この化学物質に被曝し、その生殖障害に不安を抱く人々についてこれは述べているわけでありますが、この初め書きにはこのようにあります。生殖の問題を抱えていることは分かっていると。米国では十二組のカップルのうち少なくとも一組が不妊に悩んでいると。妊娠の三五%から五〇%が自然流産となり、重い構造的先天異常は出生時の二%から三%も占めると。
 即断はできませんが、日本における少子社会には別の面が現れているかもしれません。子供環境のリスクの増大が進んでいる今、胎児、子供を守るために有害化学物質に対しても機敏に対処をすることが強く求められているというふうに私はとらえているわけでございます。
 そこで、まず最初に小池環境大臣に伺いますが、今年の二月にドバイにおいて、化学物質のリスク削減のために国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチが必要であるということで決議されたわけでありますが、これがSAICM、すなわち三つの文書の概要と、法的拘束力がないことを日本政府はいかなる位置付けをするか、これが第一点であります。
 また、このSAICMの行動計画の二〇二〇年の達成に向けまして、政府は、関係省庁が一体となって取り組むために、機敏にかつ実効性を担保するためにも国内関係法で位置付けることも必要でありましょうし、とりわけ省庁横断的なSAICM実行計画等の推進チームを設置すべき、これが二点目でございますが、御答弁をお願いをいたします。

○国務大臣(小池百合子君) お答えをいたします。
 まず加藤委員におかれましては、環境副大臣の前後からこの有害化学物質に対しては大変な真剣な取組を続けてこられましたことに敬意を表したいと存じます。
 御質問でございますが、今年の二月、ドバイで開催されました国際化学物質管理会議でございますけれども、元々このSAICMは、国際的な協調の下で化学物質のリスク削減、それから情報提供、体制を整備する、それから途上国の支援といった形の取組を進めてきた組織でございますけれども、ここで、御指摘のように三つの文書が採択をされました。一つが国際的な化学物質管理に関してのドバイ宣言、二つ目が包括的方針の戦略、そして世界行動計画でございます。
 我が国としての立場はどうかということですが、このドバイの会議でSAICMの採択を積極的に支持をいたしました。そして、この政府の政策にこれを位置付けまして、その実施に努めるべきと考えておるのが私どもの姿勢でございます。
 具体的にですけれども、この現在中央環境審議会で環境基本計画の見直しを御審議いただいているところでございます。そこでSAICMに沿って、国際的な観点に立ちまして化学物質対策に取り組むということを、この基本計画の中に取り組むべきこととされております。こうした審議会の議論を踏まえながら、環境基本計画の改定に合わせましてSAICMを適切に位置付けをしていきたいと考えております。
 それから、それぞれ省庁で横断的にやるべきではないかという御質問でございますけれども、関係省庁におけます推進体制として、これまで国際会議におけます議論にも対応しなくてはならないということからも、関係省庁から成る会議を開催をしてまいりました。今後ともこの省庁横断的な体制を整備いたしまして、SAICMに沿った化学物質対策を進めてまいりたいと、このように考えております。

○加藤修一君 ところで、胎児や乳幼児、これは子供等を含めまして環境弱者と言われているわけでありますが、つい最近、東京都の調査でありますが、子供向けに販売されている指輪やネックレス、そういった金属アクセサリーの六割以上に高濃度の鉛が含まれているということが分かったわけでありますが、この辺の調査について経済産業省、よろしくお願いいたします。

○政府参考人(塚本修君) ただいまの先生の御指摘の東京都の調査でございますけれども、金属製アクセサリー類の中に鉛を高濃度含有するものや、それから胃酸を想定しました溶液に溶出するおそれがあるということが判明したということでございます。
 具体的には、東京都の調査結果ということで、都内の百円ショップや玩具店で購入されました価格が百円から千円程度の金属製のアクセサリー類、これ五十検体、それから金属製の玩具類の二十六検体につきまして、合計七十六検体について調査を行ったと。そのうちその鉛につきましては七十六検体中約六割といいますか、四十六検体中において米国の消費者製品安全委員会の指針であります含有量〇・〇六%以上の濃度のものを検出し、そのうち中国及び韓国製のもの、台湾のものがほとんどを占めたということになっております。
 また、溶出試験でございますけれども、四十六検体のうち二十一検体について実施をして、そのうち十七検体から鉛が溶出したという、このように承知をしております。

○加藤修一君 今お話がありましたように、そもそも昨年の二月に米国の消費者製品安全委員会が警告を発していたわけでありますが、東京都がいち早くこれ機敏に対応したわけでありますけれども、そういった意味では政府の対応は非常に遅れておりまして、今後いかなる実態調査を含めて対応策、規制措置をとるのか伺いたいわけでありますが、経済産業大臣、そして厚生労働大臣によろしくお願いをいたします。

○国務大臣(二階俊博君) 経済産業省においては、三月六日でありますが、担当部局が東京都から、今議員がお示しのとおり、金属製アクセサリー類等の安全確保に関する提案を受け取りました。
 これを受けて、経済産業省としては、十四の関係団体に対し、乳幼児が金属製アクセサリー類等を口に入れることにより鉛を摂取することのないよう注意喚起を行ったところであります。厚生労働省においても、十五の関係団体に対し、金属製アクセサリー類中の鉛の含有量を低減するよう要請されたと承知をいたしております。また、両省が連携して、鉛を含有する金属製アクセサリー類等の製造、販売等に関する実態調査を実施することとし、二十三の関係団体を通じて調査に現在着手をいたしたところであります。
 今後とも、厚生労働省と連携しながら適切に対応してまいりたいと思います。

○国務大臣(川崎二郎君) 金属製アクセサリー等に含有する鉛について、十七年四月二十六日付けで、鉛を含有する輸入玩具に関する調査ということで、カナダの状況、アメリカの状況の自主回収の状況をお知らせしながら、輸入の有無について調査を依頼したと。その後、動きが少し御指摘のように弱かったように思います。
 その後、東京都から厚生省にも提案がございまして、私ども、三月八日、製品中の鉛の含有量の把握に努めること、外箱への表示や使用上の注意等により適切な情報提供を行うこと、製品中の鉛含有を低減させるよう努めることを要請する通知を三月八日付けで出しました。さらに、経産省と連携して、両省でこれらアクセサリー類等の製造や販売等に関する実態調査も実施いたしております。この実態調査は四月中に中間的な取りまとめを行いたいと思っております。
 厚生労働省としては、これらの調査結果等を踏まえ、経産省と連携し、必要に応じ適切な対策を講じてまいりたい。基本的には方向性としてはできておるようでございますので、いろんな実態をつかまえながらきちっとした対応をしてまいりたいと、このように思っております。

○加藤修一君 よろしくお願いいたします。
 次に、配付資料の@の図にありますけれども、サリンなどの神経ガス、当然これは鉛以上に恐ろしいものでありますが、配付資料のAに示すように、神経ガスに近い構造をしているわけでありまして、殺虫剤やプラスチックに含まれます燐酸エステル、これはサリンに似た有機系化学物質でありますが、これによると、人間の生体内の酵素に対する阻害作用というのがあると。国際会議でも非常に大きな話題になっているわけでありますけれども、この有機燐中毒におけます急性毒性と慢性毒性の症状について、酵素の役割、そして阻害などの作用機序の視点から説明と御見解を厚生省に賜りたいと思います。

○政府参考人(中島正治君) ただいまの御指摘の点でございますが、これは研究報告として出されておりまして、平成十五年度から十七年度まで三か年の計画の研究でございます厚生労働科学研究費補助金、微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断・治療対策に関する研究の分担研究として有機燐化合物について報告されたものの中でございます。
 一般に、有機燐化合物の急性毒性につきましては、神経伝達物質のアセチルコリンを代謝をいたします酵素であるアセチルコリンエステラーゼの阻害によりまして、呼吸困難でありますとかけいれん、情動不安、精神的に不安定になることでございますが、等の症状を引き起こすとされております。
 また、この有機燐化合物の慢性毒性の作用機序につきましては、この報告によりますと、例えば情動や精神活動などといった高度な脳機能に深く関与する物質群の調整をつかさどる酵素であります脂肪酸アミド加水分解酵素や、肝臓等に主に存在いたしまして体内に入ってくる様々な化学物質や体内で作られる多様なエステル、アミドなどの生理活性物質を代謝をいたします重要な酵素であるところのカルボキシルエステラーゼなどの酵素の慢性的な活性の低下が起こりまして、それによって種々の生理活性物質の過剰でありますとか欠乏が生じまして様々な慢性の障害を引き起こすおそれがあるとされております。
 こういった報告があることにつきましては、引き続き注視をしていく必要があるというふうに認識をしているところでございます。

○加藤修一君 以上のように、極めて重大な新しい知見でありまして、この知見成果は厚生労働省の努力の結果でありまして、大変重要な成果を上げたと私は評価してございます。私が当委員会でこの問題を取り上げた理由というのは、従来からいわゆる有機燐のコリンエステラーゼ阻害作用による急性中毒の研究、これは非常に進んでいたというふうに理解しておりまして、ただ慢性毒性に対する関心が示されなかったと。
 このような成果が示されたことは非常に大きいということでありますが、そこで環境省にお聞きしたいわけでありますが、配付資料のBにありますように、あらゆる分野でこの有機燐の揮発が続いている、都市部においても有機燐による外気の大気汚染等が既に常態化していると、そういう指摘があるわけなんですが、どのように認識しているか、伺いたいということでございます。
 それから、そもそも総合的な実態調査をしたことがあるかどうか、また実施していなければ実態調査を行うべきでありまして、こういった面については積極的な答弁をよろしくお願いをしたいと思います。

○政府参考人(滝澤秀次郎君) 有機燐の関係の調査でございますが、環境省におきましては、有機燐を含めまして化学物質のリスク削減対策に資するために化学物質環境実態調査を実施してきております。
 昭和五十年以降、四十種類程度の有機燐化合物について、大気、水、底質等の測定を行ってきております。このモニタリングの結果、複数の検体があるわけでございますが、いずれかの検体で大気、水、底質又は生物から検出された物質は十五物質程度ございまして、これらの濃度はごく微量でございまして、健康や生態系への影響が問題になるレベルとは考えておりません。また、複数年にわたって測定されている物質につきましては、いずれも濃度の減少傾向が確認されております。
 今後とも、こうした化学物質環境実態調査の中で有機燐化合物を含む化学物質の環境モニタリングに更に努めてまいりたいと考えております。

○加藤修一君 しっかりやっていただきたいと思います。
 経済産業大臣それから厚生労働大臣にお尋ねしたいわけでありますが、有機燐系化合物は小児や妊娠初期への影響等未来に重大な問題を引き起こす可能性があるわけでありまして、室内では長期に存続するという可能性が高い、あるいは家電製品の樹脂などに使用されている有機燐系を含む難燃剤、可塑剤についても注意を払うべき時期に来ていると、そういう警告があるわけでありまして、どのように対応しているか、また、今後どのように規制するか伺いたい、これが一点でございます。
 また、特に子供をめぐる生活環境、ゲーム機などの普及や塾通いによって室内での長期間滞在が常態化していると、パソコンや家電製品からの有機燐剤の暴露が指摘されているわけでありまして、化学物質に対する低容量連続暴露あるいは反復暴露のリスクは非常に私は増大しているというふうに考えているわけでございます。
 有機燐剤における室内環境汚染調査やあるいは子供に対する暴露影響調査、これを行うとともに、子供環境における何らかの規制を検討する必要があると思いますが、御答弁のほどよろしくお願いを申し上げる次第です。

○国務大臣(二階俊博君) 有機燐剤がシックハウス症候群といった室内環境汚染に関係するのではないかという御指摘でありますが、国民の安全確保は重要な課題であると認識しており、こうした御指摘については真摯に受け止めていくことが重要だと考えております。したがって、現在、厚生労働省におきましても、有機燐剤が室内環境にどの程度残存し、子供を含めた人の健康にいかなる影響を与えているか等も含め、シックハウス症候群の実態解明の重要性を認識しておられると伺っております。
 経済産業省としては、こうした厚生労働省の御認識に踏まえ、有機燐剤の家電製品からの揮発に関する調査等について、厚生労働省と今後連携して取り組んでまいりたいと考えております。

○国務大臣(川崎二郎君) 今局長からも御答弁さしていただきましたけれども、室内環境汚染の問題については、居住者の健康を維持するためのシックハウス対策の観点から、これまでも全国規模の疫学研究等を実施してまいりました。平成十八年度以降も、疫学研究も含めたシックハウス症候群の実態解明のための研究を実施する予定であります。その際、有機燐化合物による室内環境汚染の実態についても、一般的には子供は化学物質に対する感受性が高いことから、子供の安全、健康にも配慮したいという点も含めて、これらの一環として研究を進めてまいりたいと考えております。

○加藤修一君 積極的な答弁ありがとうございます。
 そこで、環境省と農水省にお願いなんですけれども、二〇〇〇年の六月に米国のEPAは、四百六十九種類の農薬について毒性の再評価作業を行うとともに、有機燐系のいわゆる殺虫剤でクロルピリホスがありますけれども、その子供への影響を重視する考え方から、家屋内や庭での使用を禁止、あるいは農業使用も制限。で、カナダのトロントでは、二〇〇四年の四月から市立公園での殺虫剤散布を廃止だと。あるいは、英国でも、フェニトロチオンとダイアジノンが使用禁止になっているわけでありまして、ジクロルボスの安全性の見直しを行っているわけでありまして、こういった意味では、欧米の対応に比べて有機燐剤への対応が非常に私は我が国は遅れているんではないかなと、そんなふうに考えておりますが、環境省そして農水省の積極的な答弁をよろしくお願いをいたします。

○政府参考人(滝澤秀次郎君) 御指摘の農薬その他の化学物質につきましては、各国におきまして有害性あるいはリスクの評価を行いまして所要の規制を行っていると、あるいはリスク管理をしているというふうに認識しております。
 御指摘の有機燐化合物につきましては、国内におきましては、農薬取締法でありますとか建築基準法等に基づきまして、所管省庁において所要の対策が講じられていると承知いたしております。
 環境省におきましては、先ほど申し上げた化学物質の環境実態調査によりまして、有機燐化合物を含めた様々な化学物質のモニタリングを行っておりまして、また一方、水質汚濁という意味では、要監視項目として指針値を設定している六種類の有機燐化合物等につきましては、都道府県等による水質モニタリングの実施も行っているところでございます。
 今後とも、環境保全の観点から、多様な化学物質による環境リスクの評価を進めまして、化学物質の適正な管理に努めてまいりたいと考えております。

○政府参考人(中川坦君) お答え申し上げます。
 有機燐系農薬につきましては、先生もおっしゃいましたが、アメリカそれからEUにおきまして、それぞれ、やや手法は違っておりますけれども、リスク評価が行われております。我が国におきましては、EUと同じように、個別の農薬ごとにリスク評価を実施をいたしまして、ADIを設定しているところでございます。
 日本におきましては、平成十二年に、有機燐系農薬の特徴的な毒性でございます神経毒性につきまして、急性遅発性神経毒性試験成績の拡充などリスク評価項目を拡充をいたしまして、新規の登録、あるいは三年ごとに行っております更新登録の際にその安全性の確認を行っているところでございます。
 この有機燐系の農薬につきましては今世界じゅうでも注目が集めておりますし、私ども農林水産省におきましても、引き続き有機燐系農薬の毒性等について新たな知見の集積や情報の収集に努めまして、リスク管理の観点から適切に対応していきたいというふうに思っております。

○加藤修一君 今の答弁に余り満足しているわけじゃございませんが、しっかりとリスク管理含めて推進をしていただきたいと思います。
 ただ、農薬の関係については、これ今、先ほども言いましたように、禁止とか制限しているとか廃止の関係ありますけれども、この中で私が言った農薬についてはまだまだ日本においては十分な対応ができていないという私の認識ですので、しっかりと今後は対応するように強く要求しておきたいと思います。
 それで、次に環境大臣にお尋ねでありますが、以上のようなことからも、いわゆるアメリカにおいての話でありますけれども、小児の食品経由の農薬暴露や小児の感受性に着目して、ADI、これ一日許容摂取量でありますけれども、成人の十分の一とする見直しを行っているという段階でございますし、あるいは、環境保護庁ですけれどもEPA、小児が直面する蓄積性あるいは複合暴露に対応する政策を整備するとしているわけでありまして、さらに、欧州では、小児の脆弱性への配慮が必要であることなどから小児への対応が始まっているわけでありまして、特に小児の化学物質に対する脆弱性に対する我が国の対応というのはもっともっと積極的に私はあるべきだと考えております。
 この辺については、大臣としてはどのような取組を今後とも含めてお考えでしょうか。

○国務大臣(小池百合子君) 御指摘のように、子供の脆弱性という観点からも、子供に関しての環境保健対策というのはとても重要な課題であるというふうに考えております。
 そこで、平成十四年度からでございますけれども、子供の環境保健に関する暴露評価手法の検討などを含めた調査研究を行い、それに加えまして、最新の知見を共有すること、それから、国内の専門家の人材育成を目的としまして、小児等の環境保健に関する国際シンポジウムを毎年開催してきたところでございます。ちなみに、加藤委員におかれましては毎回御出席ということで、ありがとうございます。
 こうしたこれまでの取組の成果を踏まえながら、今年、本年度でございますけれども、有識者から成ります小児の環境保健に関する懇談会を設置をいたしました。子供の特性に着目いたしましたリスク評価について議論を進めているところでございます。
 今も、冒頭ございましたように、子供の脆弱性という観点から細かな点を検討していくということは必要でございます。国内外の状況を踏まえながら、環境保健対策、特に子供に関しての充実を努めてまいりたいと考えております。

○加藤修一君 今の懇談会の話は、あれですか、関係省庁というのは具体的に言っていただけますか。

○政府参考人(滝澤秀次郎君) 加藤先生は副大臣のときにこの懇談会を設置を強く御指示いただきまして、環境省内の小児環境保健問題に関する懇談会ということでございます。環境保健部会長の佐藤洋先生が座長でございますが、そういった構成で進めておるところでございます。

○加藤修一君 化学物質に関係する省庁はほかにもあるわけでありまして、それが小児に対する健康被害への影響ということも考えざるを得ない。そういった意味では、それを拡大してやっていくことも一つの考え方だと思いますので、是非その辺について検討していただきたいと思いますが。

○政府参考人(滝澤秀次郎君) 懇談会の御審議の経過の中で、当然いろいろ省庁にまたがる課題もございますので、私ども、庶務、事務方がきちっと関係省庁と連携しながら、この懇談会が有機的なものになるように、有機的な成果が上げられるように頑張りたいと思います。

○加藤修一君 国土交通省と農林水産省にお聞きしたいわけでありますけれども、平成十五年の九月でありますか、農林水産省は、「住宅地等における農薬使用について」と題しまして、消費・安全局長名で各方面に通達を出しております。
 あるいは、その九月に、同じ九月に、国土交通省も地方整備局を通しまして、地方公共団体を含む都市公園管理者に対して通達を出して、都市公園管理に当たっての参考例としていただきたいということで、有機燐系のものについての注意喚起を行っているわけでありますが、ただ、一例を取り上げますと、その八か月後でありますけれども、これは平成十六年の五月から六月の段階でありますけれども、群馬県の前橋市の関係でございます。公園などで農薬散布後に頭痛や吐き気、不整脈などを訴える子供や大人が出たということで、これは要するに公園に対する処置がうまくいっていなかったという話になるわけでありますけれども。
 こういった意味で、ここだけの話じゃなくて、比較的私が調べた範囲でも、地方自治体に対する浸透が進んでいないと、通知の関係でございますけれども、やはり私は現実的な対応をしていかなければいけないと。やはり、経済産業省が今回PSEの関係で周知徹底を欠いたという話がありますけれども、やはりもっと周知徹底をしていくべきではなかろうかということで、是非この面について、二省について御答弁をお願いしたいわけであります。

○政府参考人(中川坦君) 平成十五年九月の先生が今御指摘をされました住宅地等における農薬使用についてというこの消費・安全局長の通知でございます。
 それまでこういった農薬使用についての通知がありませんでした。住宅地の周辺等での農薬の使用によって周辺住民の方々の健康被害が出てきている、そういったことにも着目をしまして、できるだけ農薬使用の回数やその量を削減すること、あるいは使う場合であっても風速や風向、風向きなどに注意すること、あるいは事前に住民の方々に十分周知をして、通知をして、それから防除するようにと、こういった留意点について、都道府県を通じまして市町村あるいは関係の農薬使用者等にその周知を図った、そういう通知でございます。
 これは通知を出すということだけではなくて、毎年六月には農薬危害防止運動という、そういう月間を設けておりますけれども、こういった折にも、ポスターなどを通じましてこういった局長通知の趣旨については私ども広く周知をしてきたところでございます。
 ただ、先生今御指摘のように、十分本当に現場にまで行っているかどうかという御指摘もございました。この点は私どもきちっと受け止めまして、さらに関係の方々、また広く住民の方々を含めてより一層周知されますように、また今年の六月にはこういった農薬の危害防止運動も行いますから、そういった際にも是非生かしていきたいというふうに思っております。

○政府参考人(高梨雅明君) 都市公園における農薬使用に当たっての留意事項の取扱いにつきましては、今ほど委員の方から御指摘がございましたように、平成十五年の九月に農水省から発出されました住宅地等における農薬使用についての通知につきまして、国土交通省といたしまして、地方整備局等を通じて各地方公共団体の都市公園管理者に周知を図ったところでございます。

   〔委員長退席、理事市川一朗君着席〕

 公園内の農薬散布に当たりましては、公園利用者のみならず、周辺の住民に健康被害が及ぼさないように適切な措置を講ずるよう、その旨を周知することが大変重要であるというふうに認識しているところでございます。
 このため、国土交通省といたしましては、毎年開催しております全国都市公園主管課長会議等の場を活用いたしまして、再度地方公共団体の都市公園管理者に通達の周知を図ってまいる所存でございます。

○加藤修一君 よろしくお願いをいたします。
 それから、同じような問題でありますけれども、平成十六年の十一月に厚生労働省は、東京都が行ったつり下げタイプの有機燐系の殺虫剤のいわゆる室内環境測定内容、これを受けまして、ジクロルボス、DDVPでありますけれども、蒸散剤の安全対策及びその取扱いについてという、そういう通達を出して警告を発しているわけなんですけれども、そういった意味では機敏な対応をしているわけなんですけれども、これまた最終的な段階ではなかなか周知が徹底されていない、私が調べた範囲でもそういう話は聞いていないということが非常に多くありますので、私は通知の強化とともにこういったいわゆる有機燐系のものについては法規制を含めて強化すべきではないかと、このように考えておりますけれども、厚生労働省、どうでしょうか。

○政府参考人(福井和夫君) お答え申し上げます。
 まず、法的規制の方からでございますけれども、御指摘のジクロルボスでございますが、これを成分といたしまするこの殺虫剤、薬事法上の医薬品に該当いたします。その安全対策につきましては、委員御指摘のように、一昨年、平成十六年の十月でございますけれども、東京都からの要望を受けまして、厚生労働省といたしまして専門家による検討会を開催をし、その検討結果に基づきまして、一般の住宅におきまする居室あるいは客室、事務室、教室、病室、さらに食堂、調理場、食品倉庫、食品加工場などでは使用しないように製造販売業者に対しまして用法、用量を変更するなどの措置を講ずるよう通知をいたしたところでございます。製造販売業者は、この通知に基づきまして、承認事項でございます用法、用量の一部変更申請をしまして、厚生労働省が審査を行った上でその変更が行われたものでございます。こうした当省の指導による用法、用量の変更でございますが、薬事法第十四条第九項に基づきまして厚生労働大臣の承認により行われたものでございまして、薬事法に基づく規制措置でございます。
 それから、通知の周知という点でございます。今申し上げました措置に併せまして、製造販売業者に対しまして消費者向けの説明文書を作成し薬局等へ配布するよう指示をいたしますとともに、日本薬剤師会等に対しまして、薬局、薬店における販売時の当該文書を用いての個々の消費者への情報提供を依頼するなど、その周知を図っているところでございます。委員の御指摘も含めまして、なお意を尽くしてまいりたいと思います。

○加藤修一君 次に、また同じように厚生労働省に質問でありますけれども、世界的に著名な日本の有機燐学者の指摘でありますけれども、日本では有機燐慢性毒性にほとんど注意が払われなかったと、今でも規制は緩いと言わざるを得ないと、こういう指摘があるわけなんですけれども、先ほど紹介申し上げましたように、欧米の先進的な取組に対して我が国の取組はやや機敏性に欠けるなという印象を私自身は持っております。
 そういった観点から、やはり、特にでありますけれども、発育途上の小児の健康と安全を考えたとき、やはり全廃を含めて、それはいろいろなものがありますから簡単ではないわけでありますけれども、有機燐の化合物の室内使用とか、あるいは住宅地での散布、こういった面については早急に法改正を含めて規制すべきではないかと、このように考えておりますけれども、どうでしょうか。

○政府参考人(福井和夫君) 薬事法上の医薬品ということでお答え申し上げたいと思います。
 ハエ、ゴキブリ等に用いまするこの有機燐系殺虫剤でございますけれども、私ども、こういった製品、市販後もこの副作用のモニタリングをやっているわけでございますけれども、少なくとも最近三年間、これ書類の保存期間という意味での三年間でございますが、少なくとも最近三年間は副作用報告が、こういった有機燐系殺虫剤については私ども受けておりません。
 それから、委員御案内のとおりでございますけれども、この蒸散性を有しまするジクロルボスでございますが、専門家の意見を伺いましたところ、全面的にこの使用を禁止するということまで行う必要はなく、人体への暴露量を低減させるため、先ほど申し上げましたが、居室等で使用しないといった措置を講じることが適当とされたこと、そういったことから、現段階で有機燐系殺虫剤の住宅等の使用をすべて禁止する必要はないものと考えておるところでございます。
 厚生労働省といたしましては、国民の安全確保に万全を期すため、有機燐系殺虫剤に関しまする副作用報告の収集等に努めまして、必要があればその都度、薬事法に基づく措置も含めまして適切に対応してまいりたいと考えております。

○加藤修一君 同じく厚生労働省に質問でありますけれども、急性毒性とは異なるいわゆる慢性毒性の仕組みについては、先ほど述べたように新しい知見が明らかになってきているわけでありますけれども、すなわち従来の急性中毒から更にリスク分析、それを進めていく必要が当然あるんではないかなと、こんなふうに考えております。
 ですから、@としては、第一番目には現行の試験法においてより注意深いチェックを行うためのガイドラインの作成、あるいは同時に長期の障害を今まで以上に鋭敏に評価する手法の開発の取組、三点目としては子供環境の安心、安全のために更に明確かつ効果的な規制措置の実施、以上をまとめて考えてまいりますと、今後の政府の政策決定システムの中にどのように積極的に具体的に生かしていくのか、この点についてお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(中島正治君) 先ほど御指摘いただきました研究報告等における評価を踏まえまして、この中でシックハウス症候群に関連して病態解明等の一環として報告されておるわけでございますが、こういった指摘、報告等を受けまして、今後、十八年度から実施予定をしておりますシックハウス症候群の診断・治療法及び具体的対応方策に関する研究におきまして、有機燐化合物による健康影響の知見も含めたシックハウス症候群の診断・治療法の手引を作成するなど、総合的に対応を検討してまいりたいと思っております。

○加藤修一君 ガーデニングで使う殺虫剤、いわゆる消毒剤や、あるいはハエ、ゴキブリ等の衛生害虫の駆除用の殺虫剤は薬事法でございますが、そこで規制されているわけですけれども、ユスリカとかハチ、ガ、そういった不快害虫、その駆除用殺虫剤には何らの制約、規制がない、あるいは使用上の注意事項の表示義務もないと伺っているわけであります。また、農薬成分を蒸発させて害虫を退治するいわゆる携帯用の虫よけ器は農薬成分を使っていながら単なる雑貨扱いと、こんなふうになっているわけでありまして、そういった意味ではなかなか私の頭の中が整理されないわけでありますけれども。
 環境省にお尋ねしますが、同じ農薬成分を使っていながら使う場合によっては規制が異なる、あるいは規制が甘いのではないかと判断し得る状況があると。そういった意味では、有機燐剤がある意味での無造作に使われているのではないかなと、そんなふうに考えているわけでございまして、こういった今申し上げました規制が掛かっていない等を含めまして、今後どう取り組むか具体的な対策を伺いたいと思いますが、どうでしょうか。

○政府参考人(滝澤秀次郎君) 御指摘のように様々な用途の殺虫剤がございます。で、現在対応している、あるいは規制しているという意味では、農薬取締法でありますとか、あるいは薬事法による規制がそれぞれ行われていると承知しております。
 なお、これらの法律の対象とならない化学物質でございますが、様々な、るる申し上げたモニタリングでありますとか環境汚染実態調査でありますとか、そういうデータを基礎に、我々として規制法として持っております化学物質審査法、これは製造、輸入の関係でございますが、そういったものに、必要に応じて、そのすき間に落ちた化学物質あるいは農薬関係等について適用ができるものであれば適用していくということになろうかと考えております。

○加藤修一君 時間がありませんので飛ばしますけれども、農林水産省にお聞きしたいわけでありますけれども、有機燐系に代わる新しい素材の開発ということについては、日本はまだまだこれからという段階の部分もありますが、欧米においては代替品の開発含めて進めている最中であります。
 欧米の農薬メーカーは有機燐系の殺虫剤の販路縮小、販路をだんだん縮小していくという、そういうこととか、あるいは低毒性で効果の高いピレストロイド系などの代替製品への生産転換の試みは既に始まっていると、これは数年前に報告されているわけでありますけれども、これは農水省はこの報告について承知しているでしょうか。
 それから、欧米の農薬メーカーは機敏に対応していると私は印象を持っておりまして、少し違った視点からいいますと、日本の農薬メーカーの対応の動きは鈍いということで、これは将来的には国際競争力を失うおそれがあるのではないかと、そういう懸念を持っておりますが、農林水産省はどのようにこういう代替品の開発について指導をしているか、その辺についてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(中川坦君) 先生が今引用されました報告書については、私どもも承知をいたしております。
 まず、具体的な数字で申し上げますけれども、日本の国内の有機燐系の農薬の生産量も、ここ十年間を取りましてもかなりこの有機燐系のものにつきましては減少してきておりますし、また新たに登録をされます農薬の成分、これは過去十年間で百六十五種類ぐらいございますが、その中で有機燐系というのは二種類ということで、現実、実態問題としまして新たな有機燐系の農薬が出てくるというふうな状況ではございません。
 私ども、具体的にどういう農薬を開発するかというのは、農薬メーカーの販売戦略なりそういった企業のまあ考え方によるところが大きいわけでありますけれども、農林水産省といたしましては、新規登録あるいは三年ごとに行います更新登録の際に最新の知見に基づいて新たなその基準を設定するかどうかという、そういったところでむしろコントロールをしていきたいというふうに思っております。

○加藤修一君 それでは、経済産業省にお尋ねいたしますけれども、有機燐系、有機燐の化合物が含まれておりますのは可塑剤とかいわゆる難燃剤についてでありますけれども、最近は植物原料プラスチックや、あるいは非有機燐、非ハロゲン系の安全性の高い製品が既に国内の数社によって開発され商品化されていると、そういった意味では代替化が進んでいるというふうに理解できるわけでありますけれども、また最近、そのデルコンピューターは化学物質使用方針で、予防的措置と代替による製品中の有害物質使用の回避、それを表明すると、そういったことも行われております。

   〔理事市川一朗君退席、委員長着席〕

 あるいは、欧米の電子機器産業などは先進的に有害化学物質の排除に努めておりまして、欧州のいわゆるREACH動向を踏まえ、安全な物質開発に力を入れているわけであります。
 こういった状況というのは我々真剣にとらえなければいけないわけでありますけれども、我が国の産業にとって国際的競争力の維持のためにも国際的な動きにいち早く対応すべきでありまして、そういった意味では有機燐系の化学化合物の代替品の研究開発、あるいは代替品への切替えが必須であると。
 今後、この点について経済産業省はどのように取り組んでいくか、お聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(塚本修君) ただいまの先生御指摘のように、一部の企業におきまして有機燐系の化合物を使わない難燃剤を開発している動きがあるということにつきましては、当省としても承知をしております。ただ、まだ用途が限定されるなど完全な代替には至ってないというような状況ではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、当省といたしましては、可塑剤、難燃剤から揮発します有機燐系の化合物に関する調査の結果等を踏まえまして、先生御指摘の代替品の開発も含め、必要な対策を検討してまいりたいというふうに考えております。

○加藤修一君 新しい知見に基づいて私は規制をすべきではないかなと思いますが、まあそれ以前に実態調査をしっかりとやっていただきたいと思います。それに基づいてリスク評価をすべきであると考えておりますので、この点についてはよろしくお願いをいたします。
○政府参考人(塚本修君) 当省としても、先生の御指摘を踏まえながら、できる限りの対応を取ってまいりたいと思っております。

○加藤修一君 終わります。

○委員長(小野清子君) 以上で加藤修一君の質疑は終了いたしました。(拍手)

環境大臣 小池百合子
厚生労働大臣 川崎二郎
経済産業大臣 二階俊博
国土交通大臣官房審議官 高梨雅明
厚生労働省医薬食品局長 福井和夫
厚生労働省健康局長 中島正治 環境省総合環境政策局環境保健部長 滝澤秀次郎
農林水産省消費・安全局長 中川坦
経済産業省製造産業局次長 塚本修