文部科学省
スポーツ・青少年局
学校健康教育課
   
学校における室内空気中化学物質に関する実態調査(概要)
   
1.   調査の目的
   現在、文部科学省では、学校環境を衛生的に維持するためのガイドラインである「学校環境衛生の基準」(平成4年6月23日   文部省体育局長裁定)の見直しを検討しているところであるが、いわゆる「シックハウス症候群」に関し、厚生労働省から原因となる化学物質の室内濃度指針値が示されていることを踏まえ、学校における化学物質の室内空気濃度の実態を把握することにより、「学校環境衛生の基準」の見直しのための参考とする。


2.   調査方法
(1)調査対象
   全国各地の新築・改築(1年程度)、全面改修(1年程度)、築5年程度、築10年程度、築20年程度の学校から各10校、合計50校を選定。
   各校において、普通教室、音楽室、体育館(講堂を含む)、保健室、図工室(技術室を含む)、コンピュータ教室等で調査。
(2)調査期間
   夏期:平成12年 9月〜10月
   冬期:平成12年12月〜平成13年2月
(3)調査項目
   平成12年6月に厚生労働省から室内濃度指針値が示された化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン)について室内濃度を測定
*   今後、厚生労働省が指針値を設定した化学物質について、順次調査予定。


3.   結果の概要
(1)ホルムアルデヒド
   夏期において、厚生労働省の指針値(0.08ppm)を超えたのは、午前で281か所中12か所(4.3%)(コンピュータ教室9、音楽室2、図工室1)、午後で278か所中12か所(4.3%)(コンピュータ教室9、音楽室2、図工室1)であった。
   冬期においては、午後で278か所中1か所(0.4%)(音楽室)で指針値を超えた。
   指針値を超えた割合を教室別でみた場合、夏期ではコンピュータ教室20%(18/90)、音楽室4.3%(4/94)、図工室2.3%(2/89)、冬期では音楽室1.1%(1/94)であった。
(単位:ppm)
ホルムアルデヒド 夏      期 冬      期 通      年
午前 午後 午前 午後 午前 午後
最大値 0.220 0.206 0.073 0.087 0.220 0.206
平均値 0.024 0.023 0.011 0.012 0.018 0.017
中央値 0.014 0.012 0.009 0.009 0.011 0.011
最小値 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001
通年におけるホルムアルデヒド濃度の度数分布図
(2)トルエン
   夏期において、厚生労働省の指針値(0.07ppm)を超えたのは、午前では269か所中3か所(1.1%)(図工室2、コンピュータ教室1)、午後では271か所中1か所(0.4%)(図工室)であった。
   冬期において、午前では264か所中4か所(1.5%)(普通教室、音楽室、体育館、図工室それぞれ1)、午後では260か所中4か所(1.5%)(普通教室、音楽室、体育館、図工室それぞれ1)で指針値を超えた。
   指針値を超えた割合を教室別にみた場合、夏期では図工室3.4%(3/89)、コンピュータ教室1.1%(1/88)、冬期では普通教室、音楽室2.2%(2/90.2/89)、体育館2.4%(2/84)、図工室2.5%(2/80)であった。
(単位:ppm)
トルエン 夏      期 冬      期 通      年
午前 午後 午前 午後 午前 午後
最大値 0.121 0.073 0.409 0.285 0.409 0.285
平均値 0.008 0.005 0.010 0.008 0.009 0.007
中央値 0.004 0.003 0.004 0.003 0.004 0.003
最小値 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001
通年におけるトルエン濃度の度数分布図
(3)キシレン
   夏期、冬期ともに厚生労働省の指針値(0.2ppm)を超えた部屋はなかった。
(単位:ppm)
キシレン 夏      期 冬      期 通      年
午前 午後 午前 午後 午前 午後
最大値 0.096 0.036 0.187 0.191 0.187 0.191
平均値 0.003 0.002 0.004 0.005 0.004 0.004
中央値 0.002 0.001 0.001 0.002 0.002 0.002
最小値 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001


(4)パラジクロロベンゼン
   夏期、冬期ともに、厚生労働省の指針値(0.04ppm)を超えた部屋はなかった。
(単位:ppm)
パラジクロロベンゼン 夏      期 冬      期 通      年
午前 午後 午前 午後 午前 午後
最大値 0.009 0.007 0.024 0.023 0.024 0.023
平均値 0.002 0.001 0.002 0.002 0.002 0.002
中央値 0.001 0.001 0.001 0.001 0.001 0.001
最小値 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001 ≦0.001
*   なお、冬期において便所13か所(消臭剤あり5,なし8)で測定したところ、消臭剤ありの4か所において指針値を超えた(0.048、0.048、0.164、0.215ppm)。

〈参考〉厚生労働省による室内空気中化学物質の指針値
揮発性有機化合物 毒性指標 室内濃度指針値*
ホルムアルデヒド ヒト暴露における鼻咽頭粘膜への刺激 100μg/m3
(0.08ppm)
トルエン ヒト暴露における神経行動機能及び生殖発生への影響 260μg/m3
(0.07ppm)
キシレン 妊娠ラット暴露における出生児の中枢神経系発達への影響 870μg/m3
(0.20ppm)
パラジクロロベンゼン ビーグル犬暴露における肝臓及び腎臓等への影響 240μg/m3
(0.04ppm)
*両単位の換算は25℃の場合による。

(スポーツ・青少年局学校健康教育課)