CSN 2010年8月12日
国際的視野から見たデンマークMCS研究センター (その1)
MCS 多種化学物質過敏症:デンマークからの報告

情報源:Chemical Sensitivity Network, August 12, 2010
Series: The Danish MCS Research Centre in the International Field of Vision
Part I: MCS - Multiple Chemical Sensitivity: A Report from Denmark by Mette Toft
http://www.csn-deutschland.de/blog/en/
mcs-multiple-chemical-sensitivity-a-report-from-denmark/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma, Citizens Against Chemicals Pollution (CACP)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年9月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/CSN/100812_MCS_Report_from_Denmark.html


 皆さん、私の名前は、メッテ・トフト、53歳、既婚で二人の成人した子どもがいます。私は日本語とデンマーク語の学位を持ち、大学と語学校でこれらの言語を長年、教えています。私は、私の勤勉な学生に励まされて、デンマーク語の発音の新しい簡単な教授法を開発し、学生と教師のための教材を出版しました。私は音声学を嫌っていましたが、このプロジェクトはとても楽しいものでした。

 しかし私には、医者が説明できない健康問題が生じるようになりました。頭痛、発疹、疲労、気分がすぐれない等です。

香水アレルギー、MCS、ループス(狼瘡 ろうそう)

 1999年、パッチテストで私は香水にひどいアレルギー反応があることが分かりました。私の皮膚科の先生は、このことを深刻に受け止めるよう私に伝えました。さもなければ、私は香水をつけた人たちとは同じ部屋にはいられなくなると説明を受けました。その日から、私は家から香料を完全になくしました。しかし職場では、わたくしが行く場所はどこでも、香水とあらゆる種類の香りを付けた製品が周囲にありました。そして、悲しいことには、皮膚科の先生の言ったことが真実となり、まったくひどいことになりました。

 2005年、私はMCSとループス(狼瘡/本当に厄介で極めて深刻な自己免疫疾病)(訳注1)を同時に患うことになりました。そして、私は仕事をやめなくてはならないことがすぐに明らかになりました。それにも関わらず、4年間、私はいかなる種類の社会補償をも拒絶されました。残念ながら、このことはデンマークではごく当たり前のことなのです。

訳注1:全身性エリテマトーデス(ウイキペディア)
 全身の臓器に原因不明の炎症が起こる、自己免疫疾患の一種である。膠原病の1つとして分類されている。全身性は文字通り体中どこにでも症状が起こることを意味し、エリテマトーデスは紅斑(エリテマ)症を意味し、本疾患に特徴的に生じる皮疹に由来する。英語の病名中にあるlupusはラテン語で狼の意であり、日本語と中国語で狼瘡と呼ばれることがある。


悲しい状況での楽しいイベント

 ここで、私はこのようなつらい状況の中で、コペンハーゲンの中心部で行なわれた5月12日の国際MCS意識向上デーでの、私たちの楽しいMCSイベントの状況をお伝えしたいと思います。

 

 デンマークでは、他の多くの国と同様に、MCSはまだ、化学物質によって引き起こされる真の身体的疾病とは認められていません。デンマーク国家保健庁(Danish National Board of Health)は、MCSは疾病ではなく、空気中に浮遊する様々な化学物質により、人々が病気になったと"信じる"又は”感じる”、”状況”であるという立場をとっています。したがって、MCS患者は時には精神科医により精神的な疾病、典型的には”身体表現性障害(somatoform disorder)”、すなわち全て精神的なものであると誤診されます。

訳注2:身体表現性障害(慶応義塾大学病院)
 患者の訴えに見合う身体的異常や検査結果がないにもかかわらず、痛みや吐き気、しびれなど多くの身体的な症状が長い期間にわたって存在する病気。


デンマーク化学物質過敏症研究センターは MCS 患者の”精神的な要因”に注目

 2006年にデンマーク化学物質過敏症研究センター(Danish Research Center for Chemical Sensitivities)は、デンマーク環境省の取り組みとして設立されました。その後すぐに、この研究センターの設立目的は、あたかも環境をMCSを引き起こす責任から放免することであるということがわかりました。患者らは、当時の研究所長ジェスパー・エルベリング博士が、繰り返し、環境はおそらくこの問題については無罪であるという発表を何度も聞きました。

 この研究センターのスタッフの中には、毒性学者や環境医学の専門家がいませんでした。その代わり、新たな研究所長、元看護士シン・スコブジェルグ博士と彼女のスタッフらは、患者の中の様々な”心理的要因”を調査し、報告書を作成することに注力しています。彼女の見解は、MCSは、”身体表現性障害”として研究され、MCSはいわゆる瞑想認識療法(mindfulness-based cognitive therapy)によって治療することができるというものです。



どのような心理学的要因をお持ちですか? 持っていません。私はMCSです。

MCS治療に電撃療法(ECT)というショッキングなニュース

 私は、国際的なMCS社会は、前述のジェスパー・エルベリングが発表した記事の中で次のような結論を述べたときに、ショックを受けたというのが正直ところです。”電撃療法(ECT)は、深刻で社会的に障害のあるMCSに対するひとつの選択肢として検討されるべきです。・・・”。エルベリングはどこででも次のように言っています。”もし、電撃療法(ECT)に関する観察が正しいなら、そのことは私たちが将来のMCS療法について非常に希望が持てるということを意味します”。
 明らかに、多くのデンマークのMCS患者はこの見解に賛同していません。

 この記事の概要とそれに対する国際的な反応はカナリヤ・レポートの中で報告されています。
”精神科医師らは多種化学物質過敏症の治療に電撃療法の導入を提案”
Psychiatrists propose induced convulsions as treatment for Multiple Chemical Sensitivity

反撃行動

 この気の滅入るような狂気の沙汰に対して私たち自身を奮い立たせるために、私たちは、国際MCS意識向上デーの5月12日に、コペンハーゲンの中心部でカラフルで陽気な催しで祝いました。残念ながら一日中雨が降り、私たちのアトラクションのいくつか−それらのうちの華やかなカナリヤの衣装−はプログラムから外し、願わくば来年の天気の良いMCS意識向上デーまでとっておかなくてはなりませんでした。
 私たちのMCSくじ引きと、香料を含まないスキンクリームの無料サンプルは多くの人々に大好評でした。そして皆が私たちの情報シートとMCSパンフレットを家で読むために持ち帰りました。

 MCSに関する論文を書くことに決めた一人の学生は早くから来て、質問をしてきました。そして、政治家のうちの一人がひょっこり立ち寄り、真剣なおしゃべりをしていきました。

著者:メッテ・トフト(Mette Toft), デンマーク
写真: Torben Bojstrup
他の国のMCS患者に関するさらなる情報:

参考:
Series: “The Danish MCS Research Centre in the International Field of Vision”
国際的視野から見たデンマークMCS研究センター
訳注:参考情報


化学物質問題市民研究会
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