Our Stolen Future (OSF)による解説
ヨーロッパ・ウナギの減少は
ダイオキシン様汚染が原因か?


senschaften, in press, 1 March 2006 掲載論文を
Our Stolen Future (OSF) が解説したものです

情報源:Our Stolen Future New Science, March 2006
Are dioxin-like contaminants responsible for eel (Anguilla anguilla) drama?
http://www.ourstolenfuture.org/NewScience/wildlife/2006/2006-0312palstraetal.html

オリジナル論文:Palstra, AP, VJT van Ginneken, AJ Murk, GEEJM van den Thillart. 2006.
Are dioxin-like contaminants responsible for eel (Anguilla anguilla) drama?
Naturwissenschaften, in press

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年3月14日


 なぜ、ウナギは1980年代から急激に減少したのか?

 ウナギに関する実験で、ウナギの幼胚(embryos)の生存期間は低レベルのPCB類とダイオキシンに非常に感受性が高いことが明らかにされた。稚魚は、他の魚類の卵がPCBに暴露した時に示す典型的な欠陥を発現する。ヨーロッパのほとんどのウナギは、この研究で重大な損傷を引き起こしたレベルよりも十分高いレベルで汚染されている。したがって、1980年代以来生じているウナギの数の急激な減少にダイオキシン様汚染が寄与しているように見える。

何をしたか?

 パラストラらは、科学者が試験場でウナギの幼胚(embryos)の発達を研究することができる新しく開発された技術を使用した。これは、最近、ウナギの人工授精のためのツールが開発されたことで可能となった。新たな技術は、卵子と精子が採取された後、オスとメスの両方のホルモン操作を必要とする。受精卵は人工海水中で育てられた。

 パラストラらは、卵を取り出したメスのウナギのPCBとダイオキシン汚染に関する情報を得るとともに、人工授精された卵子の幼胚(embryos)を観察した。汚染レベルは、ダイオキシン様汚染分析に特化した遺伝子分析でダイオキシン毒性等量(TEQ)を測定して推定した。ウナギのPCB類は毒性等量(TEQ)として測定された全汚染のほとんどを構成しているということが研究前に示されていた。

何が分かったか?

 より高い毒性等量(TEQ)は幼胚(embryos)の生存期間の劇的な短縮と関連があった。

 より高い汚染レベルで、卵黄嚢の浮腫、頭部の奇形、心臓の鼓動がないことを含む幼胚(embryos)の損傷が観察された。これらの奇形はダイオキシンに曝露した魚に共通である。


何を意味するか?

 パラストラらは、ウナギの幼胚(embryos)の生存はダイオキシン様汚染に非常に敏感であるということを示した。その汚染レベルは、ほとんどのヨーロッパのウナギが曝露している範囲に十分入っていた。パラストラらは、”ダイオキシン様PCB類は現在のヨーロッパウナギの個体群の崩壊に寄与しているらしい”−と結論付けている。彼らの研究結果は、ウナギ崩壊の物語はアメリカの五大湖でのマスの崩壊とよく似ていることを示唆している。従来、漁業における魚種の崩壊は過大な漁獲と特定魚種への依存が原因であった。実験室でのダイオキシン影響の研究、現場での観察、及びコンピュータ・シミュレーションを統合した最近の(五大湖のタラ)研究は、ダイオキシン汚染が原因であることを強く示唆している。


化学物質問題市民研究会
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