Our Stolen Future (OSF)による解説
カナダ先住民居住区における 男児出生比率の減少(OSF による解説) Environ Health Perspect, Volume 113, Number 9 September 2005 紹介論文を Our Stolen Future (OSF) が解説したものです 情報源:Our Stolen Future New Science Declining Sex Ratio in a First Nation Community オリジナル論文:Environmental Health Perspectives Online 17 August 2005 Declining Sex Ratio in a First Nation Community Constanze A. Mackenzie, Ada Lockridge, Margaret Keith 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2005年9月5日 マッケンジーらはこの報告書で、カナダ最大の工業地帯のひとつであるサーニア・ラントン・ケミカル・バレーの直ぐ近くにあるカナダ先住民の居住区アアムジナンで男児の出生性比率が多年に渡り低下していることを報告している。彼らが発表したデータによれば、この居住区の出生比率は1993年までは安定しており正常であったが、その後、男児出生比率が低下し始めた。1999年以降の5年間で、男児の出生性比率は50%強の期待値に比べ、35%以下となっている。統計的分析は、これらの変化は非常に有意であることを示している。 彼らの研究の今の段階においては、可能性ある低下の原因を確かめることは意図されておらず、単純に傾向を示し、将来の研究のための基礎を築くことを意図している。 何をしたか? マッケンジーらは居住区の住民の協力を得て、1984年から2003年の間、同居住区で生まれる男児と女児の数を調査した。約850人がアアムジナン保護居住区に住んでいる。この居住区の人口動態は毎月、カナダ・インディアン及び北方業務局に報告されている。 彼らは毎年出生性比率を計算し、カナダの平均出生性比率と比較した。彼らはまた、工業地帯サーニア・ラントン・ケミカル・バレーから離れた場所に住むチッペワ地区の出生性比率と比較した。その結果、チッペワ地区の出生性比率はカナダの平均値と異ならないということが判明した。
何がわかったか? 1993年以前はアアムジナン地区の出生性比率は安定しておりカナダの平均値(グラフの赤線)と同等である。しかしその後の十年間及び最新のデータ(2003年)では、この先住民居住地区の男児出生比率は急降下している。 マッケンジーらはこれらのデータに対し、いくつかの統計的分析を行った。 1992年以前は、出生性比率に特別な傾向はなかった(p=0.990)。1993年以来、収集されたデータを検証し、急激に出生比率が下降していることを見出した。最も著しい下降は最近の5年間である(1999年〜2003年:p=0.006)。 最近5年間(1999年〜2003年)の男児出生比率は0.348であり、期待値の0.512よりはるかに低い値であった。 何を意味するか? マッケンジーらは、カナダ最大の化学産業地帯のひとつに隣接するこの先住民居住区の男児出生比率がが大きく下降していることを示した。彼らのデータはこの下降の原因を究明していない。この居住区が受けているであろう高いレベルの曝露が関係しているかも知れず、このことは以前の調査研究の一部と整合性があるが、しかし全てに整合性があるわけではない。 マッケンジーらは報告書の中で関連する他の研究調査を検証し、今までの諸調査で報告されている一連の関連性についてリストした。
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