The Intercept 2021年4月15日
屋内ダストは PFAS と
その他の有害化学物質を含む

シャロン・ラーナー

情報源:The Intercept, April 15 2019
Indoor Dust Contains PFAS and Other Toxic Chemicals
By Sharon Lerner
https://theintercept.com/2021/04/14/pfas-toxic-chemicals-
indoor-dust/?ct=t(RSS_EMAIL_CAMPAIGN)


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年4月19日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/210415_
The_Intercept_Indoor_Dust_Contains_PFAS_and_Other_Toxic_Chemicals.html


 室内のダスト(ほこり)に関する新しい研究が、不妊症、糖尿病、肥満、異常な胎児の成長、及びがんにつながる可能性のある PFAS 及びその他の有害物質を見つけた。

 Environmental Health Perspectives (米国立環境健康科学研究所のジャーナル)に本日発表された研究によると、屋内のダスト(ほこり)には危険な内分泌かく乱化学物質が含まれている。米国の大学の 21の建物から検出された 46のダストのサンプルの調査では、そのサンプル全てに、不妊症、糖尿病、肥満、異常な胎児の成長、がんなどの健康への影響をもたらす可能性のあるホルモン活性化合物が含まれていることがわかった。

 この研究は、アメリカ人の 90%以上の血液または尿に含まれ、広範囲の健康生殖への影響を引き起こすことがすでに知られている PFAS 及び難燃剤として知られる工業用化学物質がどのように体内に入るのかを説明するのに役立つ。テフロンの原料として最初に明るみに出た PFASは、カーペット、家具、衣類のコーティングにも使用されている。それらが火災を防ぐという証拠がないにもかかわらず、難燃剤が家具、カーペット、電子機器、及び建物の断熱材に添加されている。我々はこれらの製品を食べるわけではないが、我々がダスト(ほこり)として空気中に侵入したそれらのごく一部を吸い込んでいることをこの研究は明らかにしている。

 ハーバード大学環境衛生学部(The Harvard T.H. Chan School of Public Health)の博士研究員(ポスドク)であり、この研究の筆頭著者であるアンナ・ヤングは、”私たちはこのほこりを毎日私たちの体に取り入れていることに気づいていない”と述べた。ヤングによれば、人々は毎日平均 20ミリグラムのほこりを摂取している。

 PFAS と難燃剤の健康への影響は何年も前から知られているが、環境保護庁はこれらの化学物質への人々の暴露を抑えることはできなかった。ほこりに含まれる難燃剤のひとつのクラスであるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)は、不妊症、甲状腺機能障害、及びその他の健康上の問題を引き起こすことが判明した後、アメリカでは2013年に段階的に廃止された。しかし、これらの化合物は多くの既存製品に残っており、他の多くの製品にリサイクルされている。一方、PBDE の代わりに現在使用されている、もうひとつの化学物質のクラスである有機リン酸エステル類も、生殖の問題を引き起こし、行動及び認知発達を損ない、流産につながることがわかっている。

 PFASの健康への影響もよく知られており、胎児の発育障害、肥満、ワクチン反応の低下妊娠高血圧腎症、精巣がん、免疫機能障害、腎臓がん、コレステロール値の上昇などがある。しかし、このクラスのふたつの化合物、PFOA と PFOS は、2015年に自主的に廃止されたが、これらふたつの化合物は多くの既存製品に残っており、明らかな健康上の危険を示すものを含め、他の何千もの PFAS がまだ使用されている。

 ”彼らは、ほこりに多くの生物活性があることを示した”と、国立環境健康科学研究所と国家毒性計画の元所長であり、名誉科学者であるリンダ・バーンバウムは、研究の著者らについて述べた。 ”人々は、我々が内分泌系に影響を与える多数の化学物質に常にさらされていることを理解していない。我々の製品に含まれているものはそのままではない。それらは家庭又は事務所のほこりに入りこむ。そして、それらは我々の体に侵入する”。 バーンバウムは、この研究は、PCB、重金属、農薬、フタル酸エステルなど、ほこりの中にすでに見いだされている他の多くの化学物質を調査しなかったと指摘した。

 規制当局はこれまでのところ、この研究で特定された PFAS 及び難燃剤への暴露を防ぐことができなかったが、一部の企業はこれらの化学物質を独自に排除し始めている。 2016年、イケア(Ikea)は PFAS を含む繊維製品を段階的に廃止した。 3年後、ホームデポ(Home Depot)は、それらの化学物質を含むカーペットの購入と配布を停止した。 2020年、ロウズ(Lowe's)も同様の取り組みを行なった。家具メーカーも難燃剤を使わないソファや椅子を作り始めている。

 昨年発表されたヤングの研究によると、これらの化学物質を含まない家具や敷物が使用されている部屋のほこりに含まれる汚染物質のレベルは、より低いことが示された。家の毒性を心配している消費者は、急速に進化している PFAS を含まない製品のリストをチェックすることができる。また、ソファに難燃剤が含まれているかどうかを心配している人は、デューク大学の科学者にサンプルを送ることもできる。デューク大学では、化学物質が存在するかどうか、それらをテストしてくれる。

 しかし、室内の空気を安全に呼吸できるようにするには、最終的に規制措置が必要になる。 ”これらの化学物質は何千もあり、製造業者がそれらを開示する必要がない場合、どの製品が安全であるかを消費者が理解することはできない”とヤングは述べた。”我々は、健康的な製品を例外ではなく、それが当たり前にしたいという合図を市場に送る必要がある。”



化学物質問題市民研究会
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