グラナダ大学 2019年1月15日
感熱紙レシートは、
がんや不妊を誘発する物質を
含むことを研究が発見


情報源:University of Granada (UGR) January 15, 2019
Receipts with easily erasable ink contain cancer- and infertility inducing substances, study finds
https://canal.ugr.es/noticia/purchase-receipts-with-easily-erasable-ink-
contain-cancer-and-infertility-inducing-substances-according-to-research/#


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年1月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/190115_UGR_Receipts_with_
easily_erasable_ink_contain_cancer_and_infertility_inducing_substances_study_finds.html

 ”感熱紙”からできているので、ある時間が経過するとインクが消えてしまう値札シールやレシートの 90%は、ビスフェノールA(BPA)を含んでいる。BPA はよく知られている内分泌かく乱物質であり、それに暴露した人びとのホルモンバランスを変更して泌尿生殖器の奇形、不妊、肥満、そして(乳がんのような)ホルモン関連器官のがんなどのホルモン系疾患をもたらす。

 これが、グラナダ大学(UGR)がグラナダ・バイオヘルス研究所(ibs.GRANADA)、サンセシリオ大学病院、国立公衆衛生校(リオデジャネイロ、ブラジル)、パリ第5大学(フランス)、そしてネッケル小児病院(フランス)と協力して実施した研究の結論である。

 現在、一般集団のビスフェノールAへの気付かない暴露について大きな懸念がある。産業側は、値札シールやレシートで使用されている感熱紙のようにその大部分の応用で BPA を徐々に取って代えるために代替物質を探し求めている。

 ”もし感熱紙を熱源、例えばマッチ、に近づければ、それは即座に黒くなるので、我々はこの種の紙を特定することができる”と、その研究の主著者であり、グラナダ大学(UGR)医学部教授のニコラス・オレアとグラナダ・バイオヘルス研究所(ibs.GRANADA)のホセ・マヌエル・モリーナは説明する。ひとつの代替はビスフェノールS(BPS)の使用であり、それはビスフェノールA(BPA)と同様の分子構造をもっているが、その化学式に炭素分子(C)の代わりに硫黄原子(S)を含んでいる。

 ジャーナル 『Environmental Research』に発表された彼らの論文の中で研究者らは、我々が日常的に使用する感熱紙レシート中における BPA と BPS の存在と、レシート中に見いだされるこれらの物質のホルモン様作用を分析している。

ブラジル、スペイン、及びフランスからの 112のレシートに関して調査を実施

 調査を実施するために研究者らはブラジル、スペイン、及びフランスからの 112 の感熱紙レシートと値札シールを分析した。”店の客は容易にこれらのレシートを特定できる。印字は時間とともに消えてしまうからであり、例えばあなたが買ったズボンを返品しようとしても、店員はレシートには何も見えないとあなたに言う”と、オレアは説明する。”ほとんどの場合、あなたが見つけるものは、あなたがそれをハンドバッグや財布から取り出すときに落ちる微細な白い粉だけである。あなたの指に付くその白い粉こそが正しく BPA である。

 その研究の結果によれば、ブラジルとスペインで収集されたレシートの 90%以上は BPA を含んでおり、ホルモン様、抗アンドロゲン活性を示した。

 しかし、フランスで収集されたレシートでは半分だけしか BPA を含んでおらず、そのことは、一般集団を保護する狙いをもって感熱紙中でのこの化学物質(BPA)の使用を減らすために 2014年以来フランス政府により取られてきた措置を確認するものである。

 ”フランスの代替物質について問題があるのは BPS を使用しているように見えることであり、我々はそれを同国からのサンプル中に最も多く発見し、ブラジル及びスペインからのサンプル中にはほとんど見出さなかった。不幸なことに BPS もまた内分泌かく乱物質であり、環境中での残留性は BPA のそれより高いので、それは妥当な選択肢ではない”と、UGR 教授は強調する。

 このような状況の下に、研究者らは、BPS の使用は BPA のそれのように厳格に規制されていないので、数年後には BPS の使用が増大するであろうことを恐れている。

もっと警戒を

 ”これは、我々の環境中の化学物質の毒性管理で何か失敗していることのさらなる証拠である。人間の暴露が明白である場合、規制政策は帰納的に確立されるように見える。実際に、スーパーマーケットやその他の店のレジで働く数万人の若者たちは適切に保護されていない”とニコラス・オレアは警告する。

 研究者らは、スペイン政府が行動を起こすか、店、レストラン、又はその他の事業所が問題を認識するまで、対象集団は用心するよう勧告している。

 ”例えば、値札シールは、調理場で開梱する時に、魚や肉のような食品に直接触れないようにすべきである。さらに値札シールを捨てる時にもみくちゃにしたり、それで遊んだり、何かを書き込んだり、又は車の中や財布、札入れ、ハンドバッグにため込んだりしない方がよい”とオレアはいう。”要するに、我々はこれらのレシートのようなものに、なるべく触れないようにすべきである”。

 重要な公衆の健康問題に取り組むために措置が取られるまで、”我々は感熱紙レシートを拒絶し、2020年までにとスぺイン政府が約束している感熱紙中の BPA の代替は、 BPS を用いて行わないよう要求すべきである”。

書誌参照

Determination of bisphenol A and bisphenol S concentrations and assessment of estrogen- and anti-androgen-like activities in thermal paper receipts from Brazil, France, and Spain
Molina-Molina JM, Jimenez-Diaz I, Fernandez MF, Rodriguez-Carrillo A, Peinado FM, Mustieles V, Barouki R, Piccoli C, Olea N, Freire C.
Environmental Research
Volume 170, March 2019, Pages 406-415
DOI:https://doi.org/10.1016/j.envres.2018.12.046


訳注:BPA の代替としての BPS 関連情報



化学物質問題市民研究会
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