EHP 2006年4月 特別号 論文集
野生生物に化学的に引き起こされる内分泌かく乱の生態学的関連
アラスカ コディアック島のシトカオグロジカの睾丸と角枝の形成不全
内分泌かく乱の影響か?

ラオ・ビーラマチャレニ(コロラド州立大学動物生殖・バイオテクノロジー研究所/アメリカ)ら
(アブストラクトの紹介)
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number S-1, April 2006
The Ecological Relevance of Chemically Induced Endocrine Disruption in Wildlife
Testis and Antler Dysgenesis in Sitka Black-Tailed Deer on Kodiak Island, Alaska: Sequela of Environmental Endocrine Disruption?
http://www.ehponline.org/docs/2005/8052/abstract.html
D.N. Rao Veeramachaneni,1 Rupert P. Amann,1 and James P. Jacobson2
1Animal Reproduction and Biotechnology Laboratory, Colorado State University, Fort Collins, Colorado, USA; 2Arctic Rivers Guide Service, Kodiak, Alaska, USA

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年6月23日

  アブストラクト
 アラスカ、コディアック島の多くのオスのシトカオグロジカは異常な角枝を持ち、停留睾丸症であり、尿道下裂の証拠はないことが観察された。我々はこの問題をもっとよく理解するために 171頭のオスのシカの表現型異常(phenotypic aberrations)と 12頭の詳細な睾丸皮膚組織を調べた。
 低地のアリューリック半島では、94頭のうち 61頭が左右双方停留睾丸(BCOs)であり、それらのシカの70%が異常な角枝を持っていた。コディアック諸島の他の場所では 65頭のうちわずか 5頭がBCOsであった。
 検証された 11の腹部睾丸の全てには精子形成がなく、situ-like 細胞中に精巣腫瘍の前兆の可能性ある腫瘍、セルトリ細胞、ライディヒ細胞、及び stromal 細胞の腫瘍、精巣網の腫瘍と腺腫、及び精巣微小石灰化を含む異常があった。excurrent ducts内に嚢腫が明確に存在した。10の陰嚢睾丸(scrotal testes)うち2つに同様な異常があったが、精子形成は行われていた。
 我々は、これらの異常は、動物の先祖の突然変異の影響が長年引き継がれ、アリューリック半島でのみ高頻度で発症する可能性を除外することはできない。しかし、観察された病変に基づいて、我々は、この睾丸−角枝形成不全は妊娠したメスがエストロゲン様環境因子に継続的に暴露したことによる結果であり、それにより睾丸細胞の形成、角枝の発達への影響、及び胎児の睾丸下降の阻害を引き起こすという仮説を設ける。
 この地でシカが好きな植物(例えばケルプ:訳注(海藻))がエストロゲン様因子をもたらしたのかもしれない。

キーワード:
角枝形成不全、CIS、停留睾丸、ライディヒ細胞腫瘍、精巣微小石灰化、精巣網の腫瘍、腺腫、セルトリ細胞腫瘍 antler dysgenesis, CIS, cryptorchidism, Leydig cell tumor, microlithiasis, rete carcinoma, seminoma, Sertoli cell tumor.

Environ Health Perspect 114(suppl 1) :51-59 (2006) . doi:10.1289/ehp.8052 available via http://dx.doi.org/ [Online 21 October 2005]



化学物質問題市民研究会
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