米国立環境健康科学研究所ジャーナル
EHP 2009年5月号 サイエンス・セレクション
ビスフェノールA 第2章
新たなデータが暴露に光を投じる 潜在的な生物蓄積性


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 117, Number 5, May 2009
Science Selections
Bisphenol A, Chapter 2
New Data Shed Light on Exposure, Potential Bioaccumulation
http://www.ehponline.org/docs/2009/117-5/ss.html#bisp

関連論文:Environmental Health Perspectives Volume 117, Number 5, May 2009
Bisphenol A Data in NHANES Suggest Longer than Expected Half-Life,
Substantial Nonfood Exposure, or Both
Richard W. Stahlhut,1 Wade V. Welshons,2 and Shanna H. Swan3
http://www.ehponline.org/docs/2009/0800376/abstract.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月4日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/09_05_BPA_hapter2.html


 様々な消費者製品に使用されている産業化学物質、ビスフェノールA(BPA)は、現代の環境中のいたるところに存在し、2003〜2004年米全国健康栄養調査(NHANES)によれば、6歳以上のアメリカ人の推定93%の尿中に見出される。最近の調査は、BPAは内分泌かく乱物質として作用し、成人の心臓疾患、糖尿病、肝臓疾患のリスクを増大するかもしれない。現在まで、ほとんどの暴露は摂食を通じて起き、またこの化学物質は体内から迅速に完全に排出されると考えられていた。しかし、新たな研究は、数時間絶食した人の尿中のBPAのレベルは予期されたほど低くはなく、暴露経路は、摂食以外か、脂肪組織中の蓄積か、あるいはその両方であることを示唆している[EHP 117:784?789; Stahlhut et al.]。

 BPAは脂溶性なので脂肪組織中に蓄積することができるが、動物とヒトのデータは、BPAは迅速に代謝される傾向があり、24時間以内に事実上完全に排出されると考えられることを示唆していた。BPAがどのように体内から除去されるかをよりよく理解するために、今回の研究の研究者らは2003〜2004年米全国健康栄養調査(NHANES)に参加した1,469人の成人のデータを使用した。調査参加者(子どもとインスリン依存者は除外)は、少なくとも6〜9時間、絶食することを求められていた。各調査参加者から採取した尿を使用して、研究者らは、0〜24時間の絶食期間のBPAの、彼らが”集団ベースの半減期(population-based half-life)”と呼ぶものを見積もるために、尿中のクレアチニンとその他の交絡因子(confounder)(訳注1)を調整して、絶食時間に対するBPA濃度記録モデルを作成した。

 以前の研究はBPAの尿排出の半減期はわずか4〜5時間であることを示していたが、この集団のBPAレベルはもっとゆっくり減少し、調整された集団ピークからわずか46%の谷への降下に17時間かかることを示した。4.5〜8.5時間の絶食間隔帯においてはBPAは比較的急速に減少したが、8.5〜24 時間の絶食間隔帯においてはBPA降下曲線は本質的に平坦であり、この時間帯では排出は非常に遅いか最小であることを示唆していた。

 この発見は二つの仮説で説明することができる。第一は、BPA暴露は食物以外の経路を通じて起きる。第二は、BPAは体内脂肪中に蓄積し、そこから時間経過とともに徐々に放出される。著者らは、彼らの発見は慢性のBPA暴露、重要な非食物暴露源(それらには、歯科用混合材と詰め物、家庭内ダスト、空気、再生紙及び感圧紙、及び多くの都市で住宅用給水管に使用されている塩ビ製パイプなどがる)、及びヒトの脂肪組織中の環境エストロゲン(Xenoestrogen)の生物蓄積に関する報告されているデータの確認、に関する追加的研究の必要性をハイライトしていると結論付けている。今回の発見が確認されれば、リスク評価研究におけるBPA暴露の見直しをもたらすであろう。

ターニャ・ティレット(Tanya Tillett)



訳注1
Confounder とは? (交絡因子について具体的でわかりやすい解説をしています)

訳注2


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る