EHP2006年3月号 NIEHS News
有機リン系農薬曝露による農村の子ども達の神経行動障害

情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number 3, March 2006
NIEHS News
Neurobehavioral Deficits in Children from Agricultural Communities
http://www.ehponline.org/docs/2006/114-3/niehsnews.html#pest

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年3月3日

Rohlman DS, Arcury TA, Quandt SA, Lasarev M, Rothlein J, Travers R, et al. 2005. Neurobehavioral performance in preschool children from agricultural and non-agricultural communities in Oregon and North Carolina. Neurotoxicology 26:589-598.

 有機リン系(OP)農薬の神経行動への影響についての研究のほとんどは成人の職業曝露に関するものであった。しかし、子どもの発達中の組織はこれらの化学物質に対して特に感受性が高い。現在、国立環境健康科学研究所(NIEHS)の支援を受けたペンシルベニア大学のリンダ・マッコウレイ、ウェイクフォレスト大学のトーマス A. アークリー、及びオレゴン健康科学大学のジョアン・ロスラインらは、農村及び非農村のそれぞれの小さな子ども達の間の神経行動学的な動作のそれほどは大きくない相違を報告している。

 この研究は、子ども達は通常の検査では症状がはっきり出ないような低用量の農薬に慢性的に曝露しているかもしれないことを示している。これらの曝露は、子ども達の手を口にもっていく行動、及び家の床の上や外の土に接触しながら過ごす時間が多いことが原因かも知れない。子ども達はまた、食品、飲料水、及び室内や屋外での農薬使用を通じて曝露する。一般的に農業従事者の子ども達は、家が農薬散布が行われる農場に近いところにあり、また家で両親の作業衣に曝露する機会が多いので、特に農薬曝露のリスクが高い。

 研究者らはラテン系移民の子ども達を募集して研究対象とした。募集した子ども達の全ては、月齢が48ヶ月から71ヶ月であった。農村のそれぞれの子どもの両親の少なくともどちらかは調査当時、農業に従事していた。一方、非農村の子ども達の両親は誰も、当時も過去にも農業に従事したことがなかった。

 研究者らは子ども達の認識及び神経行動機能を測定するために行動テスト用の装置を使った。11の測定項目は2つのグループの間で著しい相違はなかった。しかし2つの測定項目について農村の子ども達は著しく悪い結果が出た。指たたきテスト(反応速度を測定する)と視覚記憶テストである。これらのテスト結果は、成人の有機リン系農薬への低レベル曝露に関する以前の研究結果で見られた影響と一致する。

 この研究は、低レベル有機リン系農薬への曝露が農業従事者の子ども達の標準的なテスト項目において欠陥を引き起こすかどうかを見極めることを目的としたもっと大規模な調査が必要であることを指摘している。それはまた、適切な農薬散布と散布者の衛生が彼らの子ども達を曝露から守るために重要であることを示している。

ジェリー・フェルプス (Jerry Phelps)



化学物質問題市民研究会
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