EHN 2015年8月25日
多くの証拠がラウンドアップと
腎臓及び肝臓のダメージとの関連を示す

ブライアン・ビエンコースキー(EHN)

情報源:Environmental Health News, August 25, 2015
More evidence of Roundup's link to kidney, liver damage
By Brian Bienkowski(EHN)
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2015/aug/
monsanto-roundup-glyphosate-pesticide-kidney-liver-toxic-gmo

オリジナル研究:
Transcriptome profile analysis reflects rat liver and kidney damage
following chronic ultra-low dose Roundup exposure


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年9月1日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/
ehn_150825_More_evidence_of_Roundup's_link_to_kidney_liver_damage.html


 新たな研究によれば、アメリカの飲料水で許容されているより数千倍も低いレベルの微量ラウンドアップへの長期的な暴露が肝臓と腎臓に重大な問題を引き起こすかもしれない。

 その研究は、これらの臓器中の遺伝子の機能を観察し、飲料水中の微量の除草剤ラウンドアップに暴露したラットが肝臓と腎臓にダメージを受けたことを見つけた2012年の研究を補強するものである。

 それは肝臓と腎臓に及ぼすラウンドアップの慢性・低用量暴露を検証した初めての研究であり、広く使用されているこの除草剤による人間と動物の他の潜在的な健康影響を示唆するものである。

 ”たとええ非常に低レベルの暴露であっても、ラウンドアップは肝臓と腎臓に達すれば潜在的にダメージを及ぼすことができる”とキングス・カレッジ・ロンドンの遺伝子発現・療法部門(Gene Expression and Therapy Group)の長であり、この研究の上席著者マイケル・アントニューは述べた。

 ”その程度はわからないが、我々のデータは時間がたてば有害であることを示している”と彼は述べた。

 それは、アメリカで最も広く使用されている除草剤にとって最新の健康懸念である。ラウンドアップの主成分グリホサートは有毒であるという証拠が増大している。近年、科学者らは、スリランカ及びインドと中央アメリカの一部で腎臓疾患の広範な発生の背後に少なくとも部分的にそれがあるとますます疑っている。

 一方、除草剤の使用はうなぎ上りであり、推定によれば、アメリカにおいて過去40年間に250倍以上増大している。

 グリホサートは、遺伝子組み換え食品に関する議論が増大している中で、メディア報道で大きく取り上げられているが、それはラウンドアップの製造者であるモンサントの多くの種子はこの除草剤に耐えるよう遺伝子が組み替えられているからである。

 健康研究者と環境団体の両方は、特に世界保健機関の国際がん研究機関が3月にグリホサートは”ヒトに対する発がん性がおそらくある”と決定した後に、グリホサートの禁止又はもっと厳格な規制のどちらかを実施するよう政府に要求してきた。

 2012年研究でラットの異なるグループが遺伝子組み換えのトウモロコシとラウンドアップの混合物を給餌により投与された。フランスのカーン大学分子生物学教授ジル-エリック・セラリーニに率いられた研究者らは、トウモロコシ自身及び除草剤のそれぞれから、がんとその他の健康影響がもたらされたことを報告した。

 しかし、その実験計画と結果は非常に議論のあるものであった。その論文は撤回され、最終的に昨年発表された

 発見の中でとりわけ、当初の実験は、ラットの飲料水に2年間加えられた非常に微量のラウンドアップ−米国飲料水基準で許容されるものより数千倍低い用量−で、腎臓と肝臓のダメージが助長されたように見えた。

 今回の研究で、アントニューと同僚らは2012年のメスのマウスグループと比較し、ラウンドアップを給餌で投与されなかったラットに比べて遺伝子中に大きな相違があることを発見した。

 ラウンドアップを投与されなかったラットに比べて投与されたラットでは、”肝臓と腎臓の中で発現のレベルが変化した遺伝子は4,000以上あった”とアントニューは述べた。遺伝子は体のスイッチとして機能し、異なる機能を制御する。不適切な時期にひとつの遺伝子がオフになる、又はそれが適切な時期にオンにならないと、重大な結果が生じる可能性がある。遺伝子機能の異なるパターンは、臓器の健康と疾病の状況に関連していることが知られている。

   研究者らが”飲料水中で非常に低いレベルの用量でグリフォサートを使用していることを考えれば、アメリカは大量のグリフォサートを使用し、全国いたる所の水路で広く検出されているのだから、この研究は何らかの公衆健康への影響があるに違いないことを示唆している”と、ワシントンを拠点とし有害な農薬に反対する非営利団体 Beyond Pesticides の科学と規制担当ディレクターのニシェール・ハリオットは述べた。

 遺伝子の数が多い中で、投与及び非投与グループ間の発現レベルの違いは非常に小さかった。”我々は、何がそのような違いをもたらすのか、それらに意味があるのか、そしてないのか、わからない”と、この研究には参加していないカリフォルニア大学の教授で研究者のブルース・ブランバーグは述べた。

 アントニューと同僚らは特定の臓器問題をグリホサートに結び付けることはできなかった。彼らが遺伝子の中に見た変化は、傷痕や死んだ組織のような、最初にラット中に見られた臓器ダメージのタイプに関連している。

 ”彼らはどれがどのような結果を引き起こしたかを言うことはできないが、そこで見られたことは、微量のラウンドアップを投与されたグループは多くの臓器ダメージを受け、遺伝子発現の発見がそのことを支えていた”と、ブランバーグは述べた。

 モンサントは、アントニューの研究に関するコメント要求に答なかった。同社は繰り返しラウンドアプの安全性を主張し、グリホサートはヒトに対する発がん性がおそらくあると分類する WHO の決定の背後にある科学を攻撃した(訳注1)。

 ラットにおけるこの発見は人間にとっても懸念がある。これらのテストは、どのような化学物質が人に影響を及ぼすか、グリホサートの広範な使用があるならどの様な懸念があるのかをテストするために用いられる種類のものであるとアントニューは述べた。

 ”通常、化学物質投与を受けたラットに否定的な影響を見ると、非常に懸念するものである”と彼は述べた。”そして、通常、この化学物質の使用を承認するのかしないのを検討するものである”。


訳注1
Triple Pundit 2015年3月26日 モンサント ラウンドアップががんに関連するとする WHO の報告書を攻撃

訳注:ラウンドアップ関連情報


化学物質問題市民研究会
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