EHN 2011年10月14日
妊娠中に喫煙した母親の子どもは
精神的問題で治療を受けることが多い


情報源:Environmental Health News, October 14, 2011
Smoking moms' offspring more likely to be treated for mental problems
Synopsis by Steven Neese
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2011/09/
2011-1012-smoking-moms-kids-mental-health/

オリジナル論文:
Ekblad, K, M Gissler, L Lehtonen and J Korkelia. 2011. Relation of prenatal smoking exposure and use of psychotropic medication up to young adulthood.
American Journal of Epidemiology http://dx.doi.org/10.1093/aje/kwr150

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年10月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_111014_Smoking_moms'_offspring.html


 妊娠中に喫煙した母親から生まれた子どもは、喫煙しない母親から生まれた子どもに比べて精神的障害を治療する薬を飲むことが多いようであると『Epidemiology誌』に発表された研究が示唆している。最も一般的な処方薬は、坑うつ剤と抗不安剤である。

 全体として、これは胎児期の母親の喫煙への曝露と、児童期後半及び青年期の精神的健康問題との関連を報告する最初の研究である。処方薬の使用の測定は、精神的健康影響のよい指標であり、この研究では、研究者等は入院加療を必要としない軽い精神的健康問題をこの方法で調べることができた。

 さらに、母親の喫煙が多ければ多いほど、彼女等の子どもはより多く処方薬を使用することが分かった。1日10本以上の喫煙は、特に飲酒を伴う場合、より長期間の連続した処方薬の使用と関連した。タバコの数が多ければ同一人による複数の処方薬の使用が増大した。

 胎児期の母親の喫煙への曝露は、成長及び発達の低下又は遅れを含む胎児の様々な有害健康影響に関連している。長期的な健康問題には、行動障害、注意力障害及び精神的健康問題などがある。胎内で喫煙曝露した若い成人が精神障害で病院の治療を受けることが増えているので、これらの影響が知られている。

 この研究では、研究者らは、フィンランドで1987年から1989年の間に生まれた子どもたちの精神健康診断及び治療と、彼等の母親の妊娠中の喫煙習慣とを比較した。母親の喫煙パターンはインタビューで収集され、喫煙本数が10本以下か10本以上かのカテゴリーに分類された。

 1994年〜2007年の13年間に、187,000人近くの子どもたちの投薬処方箋に関する情報がフィンランドの社会保険機関から入手された。この研究が対象とした治療薬は、坑精神剤、催眠/不安緩解剤、坑うつ剤、子ども用興奮剤などである。

 研究者等は胎児期喫煙曝露と児童期及び青年期の精神健康薬の使用とにある関係があることを見つけた。喫煙曝露した子どもたちのうち、11.3 〜13.6%が精神健康薬を使用していた。胎児期曝露をしていない子どもたちでは、8.3%だけが薬を処方されていた。薬の使用は喫煙曝露した全ての子どもたちで増加していた。

 この結論にひとつの役割を果たすかもしれない他の背景要素を調整する、すなわち、10代の母親、早産の子ども、低出生体重の子どもらは研究対象から除外しても、精神健康障害を治療するための薬の使用増大はやはり、低リスクグループの中にも存在する。

 この研究は、妊娠中の母親はしばしば喫煙習慣を過少申告するということ、母親の社会経済的状況が報告されていないこと、出産後の喫煙の程度が不明であることなどに限界がある。しかし、著者等は、”この研究は妊娠中の喫煙を減らす努力の重要性を強調している”と指摘している。



化学物質問題市民研究会
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