EHN 2010年4月5日
マウスでは母乳がアレルゲンを回避するよう免疫系に”教える”
by Thea Edwards and Wendy Hesslert

情報源:Environmental Health News, April 5, 2010
Breastmilk “teaches” immune system to ward off allergens in mice
Synopsis by Thea Edwards and Wendy Hessler
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
breastmilk-teaches-mice-immune-system-to-ward-off-allergens/


オリジナル論文:
Verhasselt, V(*). 2010. Neonatal tolerance under breastfeeding influence:
The presence of allergen and transforming growth factor-s in breast milk
protects the progeny from allergic asthma.
(*)Universite de Nice-Sophia Antipolis, Inserm, U924, Valbonne, France
The Journal of Pediatrics 156(2) Suppl. 1: S16-S20.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20105659

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年4月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100405_allergens_breastmilk.html


 マウスでの新たな研究が、母乳を経由したあるアレルゲンへの暴露は仔マウスが後にぜんそくになるのを防ぐよう仔マウスの免疫系を積極的にプログラムすることができることを示している。母乳を通じて母マウスから受け継がれるアレルゲンと特定の免疫因子がぜんそくからの保護に必要である。この研究は授乳期間中の母親のアレルゲンへの暴露が仔マウスが後にこれらのアレルゲンに反応するのを防ぐのに役立つことを示唆している。

何をしたのか?

 マウスは、最初に仔マウスの時に母乳を経由してあるアレルゲンに暴露させられ、次に成マウスになってから仔マウス時の暴露がぜんそくの発症を防ぐかどうかを調べるために再度暴露させられた。

 卵白アルブミン(ovalbumin)というアレルゲンを授乳期間中一日おきに20分間、空気を通じて母マウスに暴露させた。これを6〜8週間で仔マウスが離乳するまで続けた。卵白アルブミンは実験動物にぜんそくを引き起こすために用いられている。研究者らは、母マウスが授乳を通じて仔マウスに卵白アルブミンを渡しているかどうかを確認するために母乳をと母マウスの免疫因子について分析した。

 仔マウスが成マウスになってから、アレルゲンにさらすために1週間をはさんで2回、卵白アルブミンを注射された。2回目の注射の10日後、マウスはぜんそく症状を起こさせるために5日にわたって1日1回、空気中浮遊の卵白アルブミンに暴露させられた。

 研究者らはぜんそくの兆候を調べるために肺と気道を分析した。彼らは卵白アルブミン及びトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-beta)(訳注1)を含んで他のぜんそく特定免疫因子に対する抗体について血液サンプルを調査した。

何がわかったか?

 授乳期間に卵白アルブミンに暴露した母マウスから育てられた成マウスは、ぜんそくの全ての兆候が50%以上低減していた。母マウスが卵白アルブミンに暴露しなかったマウスは成マウスになってからそのアレルゲンに大きなアレルギー性反応を示した。

 暴露を受けた母マウスは授乳を通じて仔マウスに卵白アルブミンと免疫因子TGF-betaを伝えていた。

 この研究でぜんそく防止の要点はアレルゲンと母親の成熟した免疫システムからの免疫因子の組み合わせであり、それらは両方とも母乳中に見出された。

何を意味するのか?

 この研究は、母マウスが授乳期間中にあるアレルゲンに暴露すると、その仔マウスが成マウスになってから同じアレルゲンに暴露されたときにぜんそくの発症が少ないことを示している。

 暴露した母マウスからの母乳はアレルゲンである卵白アルブミンと免疫因子 TGF-beta の両方を含んでいた。この組み合わせは、子孫が卵白アルブミンに反応するのを防ぐために必要であった。

 この研究の結果は、どのように母乳が仔マウスの未成熟な免疫システムを後に成マウスになってからのぜんそくなどのアレルギーを防ぐよう発達することに役立つかを説明しているので、重要である。これは授乳がどのようにしてアレルギーを防げるのかについて研究者によく理解させるものである。

 この研究は特定のアレルゲンに目を向けたが、もっと長期間にわたる授乳はもっと効果的かもしれない。期間が長ければ、仔マウスが成ラットになってから暴露するかもしれない多くのアレルゲンに母ラットが暴露する可能があるからである。

 この研究では、研究者は、母乳中のTGF-betaと卵白アルブミンの組み合わせが卵白アルブミン由来のぜんそくから子孫を守るために必要であることを見つけた。母乳は複雑なので、アレルギー耐性をもたらすのに重要な他の免疫因子の存在が可能である。

 この動物での研究の結果は、授乳中に特定のアレルゲンに暴露したヒトの母親が、子どもたちが後にそれらのアレルゲンに反応するのを防止することができるかどうかを調べるためのヒト研究の舞台を整えるためのものである。赤ちゃんは、ぜんそくや他のアレルギーからの保護機能を発達させるために、アレルゲンを母親の免疫因子との組み合わせで受け取らなくてはならないように見える。さらに、赤ちゃんは授乳期間中に受けとったアレルゲンの耐性を発達させるだけであり、離乳してから遭遇する新たなアレルゲンからの保護はない。


訳注1:
トランスフォーミング増殖因子(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)



化学物質問題市民研究会
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