世界銀行報告書2005年5月
中国の廃棄物管理−問題点と勧告
エグゼクティブ・サマリー

情報源:Waste Management in China:Issues and Recommendations May 2005
Urban Development Working Papers
East Asia Infrastructure Department
World Bank
Working Paper No. 9

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年9月21日

内 容
(訳注:第1章のみ翻訳、第2章のグラフを一部掲載)
第1章 エグゼクティブ・サマリー
第2章 第2章 現状及び将来の廃棄物発生量
第3章 法的枠組みと役割及び責任
第4章 廃棄物最小化
第5章 統合廃棄物管理
第6章 排出権取引
第7章 資金調達
第8章 勧告
第9章 用語解説

第1章 エグゼクティブ・サマリー

 この報告書は中国における都市固体廃棄物に関する検討に寄与することを意図している。この報告書は一般的な地域の状況を提供し、世界銀行の現状の理解を示すものである。また詳細な勧告がなされている(原注1)。

(原注1:この報告書は、有害廃棄物、医療廃棄物、下水汚泥、又はゴミ拾い(訳注:ゴミの最終処分場でリサイクル可能なゴミを拾い集めて生計を立てている人たちのこと)については取り扱っていない。)

 この報告書は2004年に世界銀行が契約した4者(原注2)のコンサルタントの評価、及び2001年に作成されたアジア開発銀行の包括的報告書:”都市の固体廃棄物管理の強化−国家SWM戦略(TA3447-PRC )”並びに概要報告書:”廃棄物管理における官民パートナーシップ”の検証に基づいて作成された。現地調査及びプロジェクトの検証もまた世界銀行スタッフによって実施された。

(原注2:InterChina Consulting - Review of Waste Management Activities in Chinese Cities; AMEC Earth and Environmental - Review of Waste Quantities and Composition in China; Gabriella Prunier - Review of Private Sector Participation in China Waste Management Sector, and; Environmental Resources Management - CDM Umbrella Guidelines for MSW in China. All prepared in 2004 and all available from the World Bank.)

 中国は最近、アメリカを超えて世界最大の都市固体廃棄物(MSW)発生国となった。2004年には中国の都市部では1億9,000万トンのMSWを出し、2030年にはその発生量は少なくとも4億8,000万トンに達すると予想されている。かつてこのような大量の廃棄物の発生と急速な増加を経験した国はない。この廃棄物の管理は国内においても、また国際的にも非常に大きな影響がある。この報告書は廃棄物発生量の見積りを示しているが、それは国家計画及び人材配置の目的に十分有用なはずである。

 現在の固体廃棄物計画に基づけば、中国は現在から2020年までに全国の廃棄物管理予算が8倍増大することになる(現状の300億人民元から2,300億人民元へ増大)。予算の増大は小都市(人口100万人以下)において特に厳しい。

 過去10年間廃棄物管理の分野で顕著な改善がなされた。例えば、ほとんどの大都市では主な処分の選択肢として積極的に埋め立てを行う方針を採用した。中国の廃棄物管理において最も緊急に求められていることは埋め立て処理の運用改善と埋立地の確保である。

 中国の固体廃棄物管理の改善には著しいものがあるにもかかわらず、中国は、廃棄物業務の増大、安全処理のための環境要求の増大、及び操業におけるコスト効率の合理化要求に対応することがもはやできなくなっている。

 中国の廃棄物管理の実施は世界的に影響を及ぼす。例えば、アメリカにおける二次資源の価格は現在中国におけるそれらの資源の要求に影響を受ける。廃棄物焼却の比率を現在の1%から30%に増大させるという中国建設省の目標は世界の環境中のダイオキシン濃度を少なくとも2倍にすると思われる。

 この報告書では中国における固体廃棄物管理の重大な問題点を明らかにする。
  1. 廃棄物量増大:廃棄物発生量の尋常ではない増加、消費の劇的な変化、廃棄物削減努力がほとんどなされていない。
  2. 情報不足:廃棄物量とコストの信頼性あるデータが欠如しているので廃棄物管理戦力の立案を非常に困難なものにしている。
  3. 意思決定プロセス:技術選択に向けての一貫した政策と戦力立案の欠如、民間企業参加の欠如、コスト回収の欠如、政策策定に関する情報開示と公衆参加の欠如
  4. 運用:施設は必ずしも設計基準を満たしておらず、特に汚染管理において顕著である。また施設の運転は非効率的であり廃棄物収集の運用はしばしば合理性に欠ける。
  5. 資金:利用者料金を通じてのコスト回収が不十分
  6. 実施制度:収集と搬送サービスの分散が不適切、技術的立案と民間企業参画への自治体対応力が不適切、政府機関の権限が不明確(例えば建設省と環境省)、中央政府と地方政府の責任範囲が不明確
  7. 民間企業の参画:固体廃棄物業務への民間企業の参画を増やそうとする政府の目標は不明確で一貫性のない契約ルール、不透明な購買実施、持続可能でない補助金、自治体の不適切なキャッシュフロー、不明確で一貫性のない会計処理、そして不明確な規制の枠組みによって妨げられている。
  8. 温室効果ガス削減による利益:中国の都市固体廃棄物分野における重要性が増大。中国の都市は、埋め立て地のガス回収、堆肥、リサイクリング、嫌気性下水汚物分解などからの温室効果ガス排出削減による排出権取引で年間約10億ドルほどの利益を得られるはずである。しかしその機会は時間的な制約があるので早急な(政府による)介入が必要である。
この報告書は多くの勧告を行っている。第8章で詳細に議論されている主要な勧告は次の通りである。
  • 再生及び持続可能なモデルを導入するために”パイロット”又は”モデル”都市として活動する3都市を奨励すること。このパイロットは廃棄物最小化戦略に積極的に取り組み、信頼性があり包括的な廃棄物管理データ(特にコストと量)を生成し、さらに中国における廃棄物管理技術、政策、及び訓練の中心として機能するべきこと。このパイロットは、長期的管理計画、例えば20年、を開発するための場を提供するべきこと。
  • 中国は、廃棄物の削減、再利用、リサイクリング、そして回収(堆肥と分解)をもっと推進し、最終処分しなくてはならない廃棄物の量を最小化しつつ、廃棄物管理の階層構造化を図る必要がある。
  • 中国の都市固体廃棄物計画立案において廃棄物の最小化を最重要項目とすべきこと。特に、将来の全体廃棄物の流れの中で50%以上になると予測される”有機系廃棄物”、及び廃棄物の中で急速に増大している”紙廃棄物”について留意する必要がある。同じく、廃棄物中で占める割合が増大している容器廃棄物も削減目標とすべきである。
  • 都市固体廃棄物の規制に関する一貫した国家政策が必要である。国家政策は、行政管轄体相互間及び機関相互間の調整が計られなくてはならならず、廃棄物管理のための経済的動機の実施を推進するものでなくてはならない。
  • 廃棄物分別の長期的目標をもった総合的な持続可能廃棄物管理のアプローチが必要である。このアプローチは、計画立案時及び政策決定時に利害関係者を参画させ、廃棄物最小化、収集、搬送、処理、リサイクリング、資源回収、そして最終処分を含む総合的廃棄物管理の全体論的な展望に立つものである。重要な政策立案と政策決定における基準には、社会的、文化的、環境的、制度的、財政的、及び技術的な要素がある。
  • リサイクリング産業は改善される必要がある(専門性、製品基準の改善、市場開発、操業基準)。
  • 堆肥化の重要性が増大するかもしれない(温室効果ガス削減による排出権取引による推進)が、製品市場化においては堆肥の品質が見直されなくてはならず、市場戦略が確立される必要がある。
  • 中国では焼却炉が流行してきているが、その増加は、しばしば人為的で非持続可能な補助金と不透明な資金構造によって推進されており、また焼却施設についての理解と経験不足を伴っている。全ての新たな焼却炉は、日本及びアメリカのダイオキシン及び水銀排出基準に合致したものでなくてはならず、運転員の十分な訓練がなされなくてはならない。全ての場合において、完全で正確なコスト便益分析がなされなくてはならない。
  • 埋め立て処分は全体的な操業条件を改善するために早急な見直しが必要である。滲出液を最小化するための措置が必要であり、”衛生的埋立”のための国際基準にしたがった操業が求められる。埋立地閉鎖後の土地利用についても留意する必要がある。例えば、都市計画の一環としてのゴルフコースとか緑地空間としての利用。中国の都市は今後25年の間にさらに1400か所の埋立地を必要とするであろう。
  • 有害廃棄物、建築廃材、医療廃棄物、その他バッテリー、おむつ、飲料容器、新聞紙などの”特別な廃棄物”に対する計画と実施の必要性が増大している。
  • ”褐色の埋立地”−不適切な廃棄又は化学物質により汚染された土地−は公衆の健康、環境、そして土地の価値に影響を与えているので中国において重大な問題になってきている。中国の都市にはこのような汚染埋立地が現在5,000以上ある。通常、これらの土地の浄化のためにかかるコストは、最初に適切な廃棄処分をするために必要とするコストよりもはるかに高くつく。この点が中国ではほとんど理解されておらず、さらに深い検討が必要である。

第2章 現状及び将来の廃棄物発生量
本文省略
グラフの一部を掲載







化学物質問題市民研究会
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