HRP 2006年7/8月号
子どもの性ホルモンへの感受性
外因性エストロゲンへの可能性ある影響

性ホルモンや内分泌かく乱物質への暴露レベルの閾値は存在しない
(アブストラクト紹介)
リサ・アクスグラエデ(コペンハーゲン大学発達生殖学部門)ほか

情報源:Human Reproduction Update Volume 12, No 4 July/August 2006
The sensitivity of the child to sex steroids: possible impact of exogenous estrogens
Lise Aksglaede, Anders Juul, Henrik Leffers, Niels E. Skakkebak and Anna-Maria Andersson
University Department of Growth and Reproduction, Rigshospitalet, Copenhagen, Denmark
http://humupd.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/12/4/341

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年7月28日


 今日の精巣がん、乳がん、及び前立腺がんの増加傾向に関しては、性ホルモンがある役割を果たしていると仮定されているが、その理解は十分ではない。性ホルモンのかく乱作用もまた、男児の生殖器異常や女児の早熟発生の増加に関与していると信じられている。
 この論文では、子ども時代の性ホルモン(sex steroid)とその生理学的役割に関する最近の論文が検証された。その結果、次のような結論を得た。
(1)思春期前の子どものエストラジオール(訳注:代表的な女性ホルモン剤)の循環レベルは、当初主張されていたよりも低い。
(2)子ども達はエストラジオールに非常に感受性が高く、たとえ血漿レベルが現在の検出限界以下であっても成長を促進させる又は乳房の発達をもたらすかもしれない。
(3)ある値以下なら外因性ホルモン又は内分泌かく乱物質に暴露した子どもにホルモンの影響が見られないというような閾値は存在しない。
(4)胎児又は思春期前の発達中におけるホルモンのレベルの変化は成人期に深刻な影響をもたらす。
(5)米食品医薬品局が1999年に見積り、いまだにリスク評価に用いられている子どもの性ホルモンの一日あたりの生成レベルは過大に見積もられており、修正が必要である。
 女性ホルモン作用のためのもっと低い閾値は確立されていないので、たとえ非常に低いレベルであっても胎児や子どもが性ホルモンや内分泌かく乱物質に不必要に暴露しないよう、注意が払われるべきである。

キーワード:筋肉増強剤、内分泌かく乱物質、エストラジオール、思春期前の子ども、閾値



化学物質問題市民研究会
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